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未来の移動体験を象徴する『光学迷彩技術』~稲見教授が実現する近未来のSF世界

 京セラが総力を挙げて作り出したコンセプトカー「Moeye」、そしてその中核を担う「光学迷彩技術」。車室内にいながら外の景色をリアルに体験できるという新たな移動体験を生み出すこの技術は、どのような経緯で誕生したのでしょうか?そして、有名SF作品・『攻殻機動隊』との関係とは?
 光学迷彩技術の生みの親である東京大学先端科学技術研究センターの稲見昌彦教授、そしてMoeyeの開発に当たった京セラ研究開発本部の新谷さんの両名にお話を伺いしました。

<プロフィール>
東京大学
先端科学技術研究センター
稲見 昌彦

<プロフィール>
研究開発本部
システム研究開発統括部
モビリティ研究開発部 ビジネスソリューション推進部
新谷 勇志



第二章:移動の概念を変える技術

もうひとつの注目技術・空中ディスプレイとは?

 前回、Moeye開発者・新谷さんの注目技術としてご紹介したCERAPHICと空中ディスプレイ。CERAPHICについては前回ご紹介しましたが、空中ディスプレイとはどのような技術なのでしょうか。

 
 Moeyeではダッシュボードのあたりに、“モビすけ”というナビゲーターが映し出され、車の操作や楽しみ方を教えてくれます。この“モビすけ”を映し出している技術が「空中ディスプレイ投影技術」。京セラの高精細液晶ディスプレイに映し出した像を、再帰性反射材とビームスプリッターという光学部品を利用して反射させ、空中像を表示させる仕組みとなっています。

 
 この空中像に赤外線センサーなどを組み合わせると、非接触でも機械の操作が可能となり、エレベーターやトイレなどに用いられている例もあります。まるでSF映画のような世界がすでに実現されはじめているというのですから、驚きです。
 実は先ほどご紹介した空中像を表示させるために利用している「再帰性反射材」という素材 は、Moeyeの目玉技術である光学迷彩技術にも大きく関係しているのです。

『攻殻機動隊』がつないだMoeyeと光学迷彩技術

 前回から何度か登場している「光学迷彩技術」というキーワード。このMoeyeにおいて、コンセプト的にも技術的にも中心になっている技術です。今回はもう少し詳しくご紹介しましょう。
 光学迷彩技術とは、正しくは「再帰性投影技術」を基にしており、東京大学先端科学技術研究センターの稲見昌彦教授の専門分野です。コクピットの一部分が外の世界につながる、まったく新しい移動体験を作り出す光学迷彩技術とはいったいどのようなものなのか、実際にMoeyeの開発にも深く関わられた稲見教授にお話を伺いました。

 「再帰性投影技術とは、光を散らすことなく光が入射した方向にまっすぐに反射する性質を持つ再帰性反射材という素材に、対象物の背景にある景色を投影することで、対象物を透明に見せる技術です。
 Moeyeではこの技術を利用して、車体前面に備えられたカメラで捉えた映像を、プロジェクターでダッシュボードに投影して、コクピットの透明化を実現しています。」

 「そこにあるモノをないように見せるこの技術ですが、元々はバーチャル映像などを現実空間に登場させるAR(拡張現実)のディスプレイ技術として、誕生したものでした。
 元々は立体映像を表示させるための技術として研究していて、とある国際会議で研究発表をすることになったんですが、参加者に立体映像を見せるためにはプロジェクターを頭部に装着してもらったりと大掛かりな準備が必要で、長蛇の列ができてしまい……そこで待機している人に向けた出し物として、“モノを消す”ということを行ってみたところ、これが立体映像よりも大きな話題となってしまったんです。」

 再帰性投影技術のきっかけについて、このように語ってくれた稲見教授ですが、この技術のきっかけにはもうひとつ大きな要素がありました。すでに「光学迷彩」と聞いて頭に浮かんでいる人もいるかもしれませんが、それがあの超人気SF作品の『攻殻機動隊』です。

 「今の研究分野を志すようになって、研究室に配属されたとき課題図書として渡されたのが『攻殻機動隊』でした。当時助手だった前田太郎先生(現大阪大学教授)に、『私と議論をしたければ必ず読んでおくように』と言われましたね。実際読んでみると、非常にワーディングに優れた作品だと思いました。」

 なにもない場所にモノを映し出すARの技術と、あるモノを消してしまうディスプレイ技術が結びついたのは、稲見教授いわく『攻殻機動隊』のワーディングに秘密があるそうです。
 「透明化という研究はすでに行われていますが、まだ実用段階にはありません。もし『攻殻機動隊』に登場する技術が「透明マント」のようなネーミングだったら、今回の技術とは結びついていなかったかもしれない。しかし、迷彩ならば、タコやカメレオンのように表面の色を変えれば実現できる、これはまさにディスプレイ技術です。ワーディングが優れているとはこういうことですね。」
 『攻殻機動隊』の“熱光学迷彩”というワーディングが、稲見教授の研究と透明化技術とを結びつけ、ひいてはMoeyeと稲見教授を結びつけたと言えるのかもしれません。ちなみに、『攻殻機動隊』の光学迷彩の開発会社は京セラと非常によく似た名前の会社。そのため、稲見教授は依頼を受けたときに、まさに『攻殻機動隊』の世界だと感じたそうです。

開発陣が一丸となって実現した未来への第一歩

 様々な可能性を秘めた光学迷彩技術ですが、現時点ではまだまだ課題も多い中での開発。そのため、稲見教授が今回最も苦労した点はレイアウトだったそうです。 投影技術の肝となるプロジェクターの位置が非常にシビアで、映像が暗くなったり、頭の位置がある程度ズレたりしても問題なく景色を投影できるよう試行錯誤を繰り返したのだとか。
 それでもMoeyeが、稲見教授が関わった透明コクピットの実装例の中で過去一番と言える仕上がりとなった理由は、京セラのエンジニアはもちろん、車体のデザインを担当した株式会社Fortmareiの石丸竜平様らと初期段階から話し合いができたことが大きいとおっしゃっていました。
 技術の発案者が実際に開発に携わるエンジニアと制約についてしっかり話し合い、技術的な制約を理解した上でデザインに落とし込む。開発に関わる人全員が密に連携を取れたからこそ、Moeyeは誕生できたのかもしれません。
 開発の最終段階で、実際のMoeyeを見たときには、頭の中で想像していた以上のものがそこにあり、稲見教授は非常に嬉しかったそうです。

 “未来はここにある。ただあまねく存在していないだけだ”というのはSF作家であるウィリアム・ギブソンの言葉。未来の技術というのはどこかに存在はしていて、それが生活に結びついたときに初めて世の中が変わったと実感できるものです。今回、車という身近な形として発信できたことは、未来への第一歩として非常に意義があったのだと思います。
 小学生のときに、京セラのファインセラミックに触れたことで、世界が変わったことを実感した経験があるとおっしゃっていた稲見教授。今回のMoeyeの開発で、当時の自分のような子どもたちが生まれることを願っていると期待をされていました。
 最終回である次回は、これまで紹介してきた技術を、独特な未来の形にまとめ上げた株式会社Fortmareiの石丸竜平様のお話と、Moeyeの開発に携わった皆さんが描く未来についてご紹介します。

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 (少しむずかしいのでおこさまはおとなの人といっしょに作ってね。)