若き才能の戦いが未来を切り開く! 第5回全国高等学校AIアスリート選手権・決勝大会開催
全国から集結した高校生たちが、AI と ICT の知識・技術を競い合い、白熱したバトルを繰り広げた第 5 回全国高等学校 AI アスリート選手権大会「シンギュラリティバトルクエスト 2024」 Presented by 日立ソリューションズ・クリエイト決勝大会。2025 年は 1 月 18 日~1 月 19 日の 2 日間に渡り、京セラみなとみらいリサーチセンターを配信会場として開催されました。
この大会は、日本の国際競争力を左右する「情報処理+活用力」を備えた次世代人材の育成を目標に、この 5~10 年後の日本を担う高校生の中でも、コンピュータ系部活に所属する生徒を対象とした AIX 人材のインターハイで、2019 年の第 0 回から数えて 6 回目の開催です。学校教育では十分にカバーしきれない、AI やサイバーセキュリティ、データサイエンスといった未来に必須の技術領域を高校生が実践的に学ぶ場として、産学連携のもと発展を続けてきました。
シンギュラリティバトルクエスト2024 - 第5回全国高等学校AIアスリート選手権大会
AI、サイバーセキュリティ、データサイエンス、ロボティクス、ヒューマン・コンピュータ・インタラクション( HCI )※1の5分野で、今後の日本のデジタル競争力を牽引するだろう高校生たちの ICT スキルやチーム力が競われました。本記事では、熱狂と興奮に包まれた大会の模様をレポート! 2 日間にかけて、北は北海道から、南は沖縄まで 178 チーム 504 名が参加した全 7 競技のうち、一部の模様をお送りします。
※1…人とコンピュータの間で生まれる相互作用(インタラクション)のこと。また、それを研究するための学問。
目次
開催概要
開催日時:2025 年 1 月 18 日(土)、2025 年 1 月 19 日(日)
主催:シンギュラリティバトルクエスト実行委員会
運営:一般社団法人未来キッズコンテンツ総合研究所
特別協賛:株式会社日立ソリューションズ・クリエイト、アドビ株式会社
実施競技
【 AQ 】AI クエスト:
アーティフィシャル インテリジェンス~ AI 全般に関する競技~ AI じゃんけん
【 CQ 】サイバークエスト:
サイバーセキュリティ~情報セキュリティに関する競技~ CTF 形式のクイズ大会
【 DQ 】データクエスト:
データサイエンス~情報科学・統計学に関する競技~ピッチコンテスト(テーマ:『「夜間光」データを活用したデータ分析』)
【 RQ 】ロボクエスト:
ロボティクス エンジニアリング~ロボットテクノロジーに関する競技~ 仮想空間上でのロボット相撲
【 XQ 】X クエスト:
ヒューマン・コンピュータ・インタラクション~ UI / UX 、HCI などデザイン思考関連の競技~ AI 七並べ/ AI ミュージッククリップバトル
【 SCA 】STREAM チャレンジ AI 部門:
AIを利用した社会課題の解決に関する競技~ピッチコンテスト(テーマ:「テクノロジーで SDGs に貢献する」)
【 SCP 】STREAM チャレンジ Pepper 部門:
Pepper を利用した社会課題の解決に関する競技~ ピッチコンテスト(テーマ:「テクノロジーで SDGs に貢献する」)
AI による開会宣言でスタート! 「ロボクエスト」ではまさかのジャイアントキリングが!
「それでは、私に代わって AI が開会宣言を行いたいと思います!」
シンギュラリティバトルクエスト実行委員会委員長・武藤裕介氏がスマートフォンを取り出し話しかけると、AI の合成音声が本大会の開会を高らかに宣言。その瞬間、会場では大きな拍手が巻き起こりました。

大会では、1 日目からさまざまなドラマが展開されました。「 X クエスト」では人とコンピュータの相互作用に関する UI / UX、HCI、デザイン思考に関連するスキルを競い、なんと全員 1年生のチームが勝利します。「データクエスト」では、『人工衛星による夜間光データの観測』をテーマにプレゼン形式で答えのない問題に挑む難しさが問われました。『 STREAM チャレンジAI部門』では、小学 1 年生~大学生まで幅広い年齢層が AI を使った課題解決に挑みました。
そして 1 日目の最後に開催された競技は、ロボティクス エンジニアリングのスキルを競う「ロボクエスト」です。今年の競技は、昨年から一気に技術レベルがグレードアップした『 Bull Bullet 』でした。

この競技は、仮想空間の物理シミュレーション環境で「 Bull 」と呼ばれる四脚ロボットを相撲形式で戦わせ、土俵内に最後まで残ったチームが勝ち上がるトーナメント戦方式です。円形の「土俵」と呼ばれるエリアから相手ロボットを押し出すことで決着が決まります。一見して単純なルールですが、勝つためにはロボット制御や深層強化学習を用いた動き方・力のかけ方の工夫が不可欠であり、バーチャル空間でのロボット技術や学習モデルの精度を向上させる技術が高校生たちには厳しく問われました。
競技は予選と決勝の 2 ブロックに分けられており、予選ブロックは「バトルロワイヤル」、決勝トーナメントは「デュエル」と名付けられています。
まず、注目を集めたのが事前の動作確認で最下位だったギーク村 『 K 』の Bull モデル『 sasano 』の躍進でした。土俵のスペースがほとんど残らない段階までもつれ込んだAブロック最初の試合で上位の 3 組を撃破するジャイアントキリングを起こし、なんとそのままの勢いで予選順位 2 位の強豪、宮崎県立宮崎工業高等学校『古の花冠』の『 Natalya 』に勝利します。
A・B の 2 ブロックに分かれたトーナメント戦で 8 組が争う「バトルロワイヤル」では、4 体同時に Bull が競技をスタート。土俵の外に押し出されるか土俵に足の裏以外をついたチームは画面から消え、最後まで残った一体が勝者となります。30 秒経過しても決着がつかない場合は土俵が縮んでいくというゲーム性の高さも、この競技の魅力です。

決勝は一対一の「デュエル」。予選 5 位から接戦を制して躍進した向上高等学校_万事屋の『 sadaharu 』とライバルが、2 勝をあげるまで一対一の押し合いを行い、優勝の座を争います。『 sadaharu 』はモデルチェンジをした『 gaocco 』(札幌市立旭丘高等学校_OverHill)を破るなど盤石の強さを見せました。しかし、決勝をストレートで制したのは、猪突猛進の攻めを見せた『 sasano 』。その破竹の勢いに、司会の合田泰吾アナも思わず絶叫!
事前スコア最下位のチームが優勝をつかむという劇的な展開に、競技開発・解説の川島貴司さん(株式会社フジミック)も「僕の想像を超えてしまっている……」とも思わずコメント。事前の評価を覆す高校生離れした胆力と技術力を示した優勝者の『 K 』からは、「戦略を考えた甲斐がありました!」と優勝の喜びがひしひしと伝わってきました。
18 試合連続で確信度 100 なるか!? 「 AI クエスト」でまさかの結末
シンギュラリティバトルクエスト 2 日目は、1 日目の結果を踏まえた「サイバークエスト」の順位とリベンジャー枠 5 組の発表ではじまりました。
この日、特に盛り上がりを見せたのが、高校生たちが事前に構築した AI モデルの予測精度や速度を競う「 AI クエスト」です。

敗者復活戦を制した1チームを加えた 8 チームが、トーナメント形式で争う競技のテーマはずばり「じゃんけん」。各チームは一対一形式で、画面上に映し出された画像がグー・チョキ・パーのどれなのか、事前にモデリングした AI に予測させ、同時にその予測に対する確信度を算出します。予測が合っていた場合、確信度がそのままポイントとなり、6 回の勝負の合計ポイントと、事前に計測した AI の処理速度を加味した合計ポイントで勝敗が決します。
大量のデータの学習が精度・確信度を分ける AI モデルのティーチングを、限られた期間内でどれだけの質・量で行えるかが勝敗を分けるこの競技。事前に用意された 100 枚のグー・チョキ・パーから各チームが選んだ 10 枚を使って競技が行われるため、相手にとって判別の難しい画像を選びながら自チームの精度や確信度、処理速度を高めるという駆け引きも、勝負の見どころのひとつです。
最終決戦を争ったのは、敗者復活戦から勝ち上がった群馬県立太田女子高等学校 『 Kusa_Type 』対、昨年 3 位からのリベンジを狙うギーク村 『 K 』でした。
序盤は 17 試合連続で確信度 100 というパーフェクト記録を打ち立て続けるギーク村 『 K 』が優勢に試合を進めます。しかし、第 6 試合で『 Kusa_Type 』の選んだ「パー」に対して『 K 』の AI はなんと「グー」と予測し、最後の試合でまさかのミス! ドラマのような試合展開に、会場の盛り上がりは最高潮に。

最終的な決着は処理速度に応じて与えられるポイントに委ねられ、183 点を獲得した『 K 』が、「ロボクエスト」につづき 2 部門目の栄冠を手にしました。優勝コメントを求められたチーム『 K 』は「最後にいけると思っていたパーが 0 点になって……」と一矢報いたライバルを称えたうえで、「めちゃくちゃうれしいです」と高校生らしい笑顔を見せ、大きな喜びを語りました。
小学生のチームが高校生を倒して最優秀賞の栄冠に輝いた「 STREAMチャレンジ Pepper 部門」、Netflix ドラマ『サンクチュアリ』などの江口カン監督も優勝作品に驚愕した「 Xクエスト02 」、大会史上初の全問クリア者が現れた「サイバークエスト」……。
2 日目もさまざまな競技で、学生たちの努力の結晶と未来に生み出す社会的価値の可能性が示されました。
そして「シンギュラリティバトルクエスト 2024 決勝大会」もついに閉幕へ。

なんと 2025 年夏の大阪・関西万博にて世界大会が開かれるというのです。再び熱狂に包まれるであろう世界大会の開幕が、ここに力強く告知されました。万博ではどのような熾烈な戦いが繰り広げられるのでしょうか? 今から興奮が止まりません!

