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小さな端末も仲間にできる! 階層構造型ブロックチェーンの魅力

Web3.0という言葉をご存じでしょうか?その説明の前に、まずは、Web1.0、Web2.0の特徴や違いを見てみましょう。

Web1.0はインターネットができたばかりのwebのあり方で、基本的に片方が情報をwebに公開し、片方は閲覧することを指しています。つまり一方通行のコミュニケーションです。一方、近年のインターネットはSNSの普及により、双方向でのコミュニケーションが可能となりました。誰でも気軽にアカウントを作れ、それからInstagramやX(旧twitter)などでいいねを押したり、気軽にコメントできたりすることが、Web2.0の特徴と言えます。

現在の主流であるこのWeb2.0は、データ管理が中央集権型であるため、セキュリティがデータを所有する各企業に依存しており、情報流出などのニュースを頻繁に耳にするほど大きな課題となっています。この課題を解決するためWeb3.0と呼ばれる分散型のインターネットを作る構想が推進されており、このWeb3.0でのデータの分散管理手法としてブロックチェーン技術が利用されています。

目次

    ブロックチェーンとは?

    ブロックチェーンは従来のデータを集中管理型のサーバに配置する構造ではなく、データの取引記録をまとめた“ブロック”と呼ばれるデータをつなげた“分散台帳”を各機器で共有するようになっています。そのため、例え1つの機器の台帳を改ざんできたとしても、チェーン全体としては改ざんされたことにはならずに*¹、中央集権型のデータ管理よりも、安全にデータを管理することができる仕組みとなっています。

    一方で、従来の方法ではデータ更新のために一箇所だけ書き換えれば良かったのですが、ブロックチェーンの場合はデータを維持するために、各機器は常時通信しながらデータを機器相互でやりとり・確認する必要があるため、各機器のメモリやCPUに大きな負担がかかります。このような計算資源などのリソースが制約されるモバイル端末やタブレットでは、データの利用しか行えず、データの分散管理までは行うことはできませんでした。

    そこで、京セラはモバイル端末やタブレットでも、データの分散管理まで行える新しい手法として、階層構造型ブロックチェーン技術を開発しました。

    *1...ブロックチェーンに共有されている機器の過半数以上の分散台帳が改ざんされるとブロックチェーン全体の改ざんにつながる恐れがありますが、機器の台数を増やせば改ざんが難しくなることが推測できます。

    階層構造型ブロックチェーンとはどういったものか?

    一般的に異なるブロックチェーン間でデータ移動を行う方法としては、第三者を経由してブロックデータの交換を行います。例えばビットコインなどに代表される暗号資産では、暗号資産取引所などを経由して他の暗号資産との取引を行っています。

    ブロックチェーンは耐改ざん性に優れた技術であり、情報が改ざんされる可能性はほとんどありませんが、ブロックチェーンの外部に位置する取引所のセキュリティは取引所に依存しています。また、取引所は資産を仲介するために必要ですが、単一障害点となってしまい、サイバー攻撃のターゲットとして狙われやすくなってしまいます。実際、過去の暗号資産の流出事件は、取引所がサイバー攻撃を受けたことにより発生しています。

    そこで、今回の階層構造型ブロックチェーンでは、異なるブロックチェーン間の資産移動を、相互にチェーンの紐づけができるようにすることで単一障害点の問題を解決しました。

    階層構造型ブロックチェーンの構造は、ブロックチェーンのグループを上下に連結させていく構造です。最上位のグループは1つだけで、2階層目以降のグループの数の制限はありません。各分散台帳は独立していて、上下に直接繋がっているグループは認識することができるものの、それ以外のグループはその存在さえ分かりません。それぞれの機器は自身が保有している分散台帳だけを参照可能となっています。つまり違うグループの分散台帳を直接確認することはできないのです。

    階層構造型ブロックチェーンの階層構造

    次に異なるブロックチェーン間の情報伝達方法についてご説明します。

    ブロックチェーンに参加している機器は“ノード”と呼ばれています。さらに、階層構造型ブロックチェーンでは2つのグループに参加しているノードを“リーダーノード”と呼びます。つまり、リーダーノードは2種類の分散台帳をもっていることになります。
    各チェーンに参加しているノードは、このリーダーノードを介して異なる2つの分散台帳間の情報のやり取りを行うため、ブロックチェーンの外部にデータを移すことなく、チェーンの内部だけで情報伝達を行える仕組みとなっています。

    階層構造型ブロックチェーンのメリット

    階層構造型ブロックチェーンは参加している機器の負担軽減以外にもいくつかのメリットがあります。

    1つ目は情報の参照先が制限できることです。

    例えば個人情報を管理する場合、従来型ブロックチェーンの場合は分散台帳の情報を全てのノードで共有することとなるため、全ノードで内容を参照可能となってしまいます。しかし、階層構造型にデータ種別を分けてあれば、異なる種類の分散台帳を共有しているグループは互いに独立しているため、参加しているそのノード以外は参照することができません。そのため、参照できるノードを制限することが可能となります。これは企業間連携など、情報の公開先の制限が必要なユースケースで非常に有効な特徴だと考えられます。

    例えば、下の図のように、個人情報を含む分散台帳で個人情報を制限したい場合、従来型だと全ノードから個人情報が参照できてしまいますが、階層ごとに管理する情報を分ければ、個人情報を参照できるノード(この図では青の分散台帳のグループ)を制限することができます。 
         
      

    従来型ブロックチェーンと階層構造型ブロックチェーン

    2つ目のメリットとして各機器の特性ごとにグループ分割が可能な点です。

    従来型のブロックチェーンでは全て同一のグループに参加しているため、情報の更新頻度が低い機器であっても、その同一グループ内に情報の更新頻度が高い機器が存在していると、ブロックの更新頻度が短い(分散台帳の更新頻度が高い)ため、やりとりした台帳を検算する負荷が大きくなります。しかし、階層構造型ブロックチェーンの場合、情報の更新頻度の高い機器のグループと更新頻度の低いグループに分けることで、更新頻度の低いグループは分散台帳の更新頻度を下げることができ、結果として検算の負荷を下げることができます。

    一方、分散台帳の更新頻度が低くなると参加している機器の負担も下がりますが、耐改ざん性が低下するデメリットも存在します。
    そこで階層構造型ブロックチェーンでは上位の分散台帳と下位の分散台帳を紐づけることで、下位の分散台帳のブロックの生成間隔が長い(分散台帳の更新頻度が低い)場合でも、上位の分散台帳の更新頻度が高ければ、耐改ざん性を低下させない仕組みを提供することができます。
          

    分散台帳内のブロック構成

    具体的には、上の図のように下位層の分散台帳作成時に上位層の分散台帳のハッシュ値*²を含める処理を行います。これにより、下位の分散台帳のブロック数が少ない状態でも、上位の分散台帳とチェーンが繋がり、検算処理を行うことが可能となるため耐改ざん性が低下することはありません。

    *2...ハッシュ値:元データへの復元や内容を推測することは難しいが、元データが変わると大きく値が異なる特徴を持つ。ブロックチェーンではその特徴を生かし、改ざん検知に利用している。例えば、SHA-256ハッシュ関数を使用して「Hello, Blockchain!」という文字列のハッシュ値を生成すると次のようになります。
    ハッシュ値:a094aa79a469da4e4d5140cc6b8b9a74e4e34bcf26a5d070dcefe8f6c9b3c1a7

    上の左図では、それぞれの分散台帳内のブロックどうしの繋がりがないため、各分散台帳内のブロックのみの検証となってしまい耐改ざん性が低下してしまうのに対して、右図のようなブロックが繋がっている場合は、ブロックa1もb1も上位層のハッシュ値で繋がっているためブロックb1でも ①~⑤ の5ブロック分の検証が可能となり、 強固なセキュリティが担保できます。

       

    階層構造型ブロックチェーンは他のブロックチェーン技術と併用可能な仕組み

    今回紹介した階層構造型ブロックチェーンを活用することで、タブレットやモバイル端末でも分散管理を行うことができるようになります。そのため、従来型のブロックチェーンで活用できなかったユースケースでも利用することができます。

    例えば、医療現場などではタブレット端末の活用が広がっており、タブレット端末を含めたデータ管理手法として本技術が適応できると考えています。

    階層構造として分散台帳はそれぞれ独立しているため、秘匿情報と公開情報を分散台帳レベルで分けて管理することが可能になります。例えば、個人の投薬履歴など、医療機関外の薬局などでこれらの個人情報を共有する場合でも、公開先や公開する個人情報を制限することが可能になるため、情報を守りながらDXに有用なデータ共有を行うことができるようになります。

    ここでは医療機関を例にとりましたが、BtoB、BtoC、BtoBtoCなどの取引や自治体でのデータ活用も、モバイル端末やタブレット端末などの機器で誤りなく安全にデータを流通することができるようになり、自治体・企業や顧客に対して安心安全を提供するだけでなく、来たるべきSociety5.0を形作る基盤技術になるものと思っています。

    これ以外にも、2026年から義務付けられるEUの「battery passport」ではサプライチェーンを管理する手法としてブロックチェーンが利用されており、世界中でブロックチェーンの活用が進んでいます。そのため、日本でも様々な分野でブロックチェーンのプラットフォーム開発やアプリケーション開発は進んでいくと考えています。活用が広がればブロックチェーン間の連携が必要であったり、様々な機器種別でブロックチェーンを構築するニーズが出てくるため、階層構造型ブロックチェーン技術が欠かせない時代になるとも考えています。

    今回紹介した階層構造型ブロックチェーンはプラットフォームやアプリケーションに依存しない技術であり、これらの既存技術と共存することで、さらに活用シーンが広がっていくと考えています。現時点でもブロックチェーンは素晴らしい技術ですが、繋がることによりさらに一歩進歩した技術になると確信しています。
       

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    この記事をお読みいただいた企業・団体の方々と一緒にブロックチェーンを進歩させ、業界を盛り上げていくような共創活動をしていきたいと思っています。

     例えば、こんな課題をお持ちではないでしょうか?
     ・ ブロックチェーンの導入を検討したが、通常のブロックチェーンでは課題があり断念した
     ・ すでにブロックチェーンを導入しているが、適応範囲を広げたい
     ・ PCやサーバーだけでなく、スマートフォンやタブレットなどの色々な機器を組み合わせたブロックチェーンを構築したい
     ・ 複数のブロックチェーンを組み合わせて新たな価値を創出したい

    このようにいろいろな課題やその対応策を考えておられる方がいらっしゃると思います。下の「お問い合せボタン」からお気軽にお問い合わせください。