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KYOCERA CONNECTING DAY開催!各業界のリーディングカンパニーが未来の展望を語る

2023年11月22日、京セラ株式会社・研究開発本部は、京セラみなとみらいリサーチセンターにおいて、『KYOCERA CONNECTING DAY』を開催しました。本イベントは京セラ初となるリバースピッチです。他社協業のきっかけを創るために、オープンイノベーションの一環として、京セラの研究開発を含めた合計6社7チームのピッチ及びネットワーキングを実施しました。登壇企業のほかに、製造業、金融、食品業界、ソフトウェア、大学、官公庁、スタートアップなどを含めた約130名にものぼる方々が参加。各業界のリーディングカンパニーとの共創に期待を持てる会となった本イベントの様子をお届けします。

本イベントで登壇したのは、以下の6社です。

京セラオープンイノベーション推進部責任者 大崎哲広の挨拶の後、京セラより順にピッチを行いました。

京セラ株式会社(1):歩行者の軌道を予測するステレオカメラ

まず登壇したのは、研究開発本部 先進技術研究所 モビリティセンシングシステムラボ 河野健治です。現在、開発を進めているのは、「歩行者軌道予測ステレオカメラ」。名前の通り、歩行者の予測軌道を出力するステレオカメラです。

「今回紹介するのは、昨年のCEATECで展示した自動搬送ロボに搭載しているセンサーのノウハウを活用したカメラです。開発の背景にあるのは、全国における交通事故の件数です。年々減ってはいるのですが、幅が狭い道路での減少率は鈍化しており、全国の交通事故の発生件数に占める割合は横ばいとなっています。その一方で、社会的には物流業界における『2024年問題』なども抱えており、自動配送ロボットの実現化に期待が集まっている一面もあります。そこで、歩行者の軌道を予測して、衝突を未然に防ぐ先進システムを叶えるため、歩行者軌道予測ステレオカメラの開発に乗り出しました。」

京セラ自動配送ロボット(動画) 外部リンク

「研究開発中のため、仕様案となりますが、歩行者の1秒、2秒、3秒後の各予測位置を出力し、予測誤差の目標値を50cm以下としています。現在は、SFM(ソーシャルフォースモデル)をベースに京セラのオリジナル要素を追加したベースモデルを作成し、評価中です。今後は、狭い道で歩行者を追い抜く際の歩行者の軌道変更といった様々なケーススタディに対応できるよう、また最終目標の予測誤差50cm以下の実現を目指して、研究開発を続けていきます。」

京セラ株式会社(2):ブロックチェーン技術による情報セキュリティ対策

同じく京セラ株式会社から、コミュニケーションシステム研究開発部の高橋の発表です。ブロックチェーン技術を活用したシステムセキュリティ技術について説明しました。

「2015年に第四次産業革命が叫ばれてから8年が経ちます。情報通信技術をはじめとする様々なジャンルが進歩を遂げ、労働環境の改善や生産性の向上が叶いつつあります。しかし、情報セキュリティに対する対策が一歩出遅れているのも事実です。情報セキュリティ対策と聞くと、大企業が抱える問題で、別世界での出来事のように感じるかもしれませんが、実態は異なります。私たちの身近なところでは、生成AIで制作された作品が本物か偽物かの判断ができない、SNSで飛び交うフェイクニュースの判断を見誤るといった例が考えられます。」

「弊社では、2021年より、所持するブロックチェーン技術のIoTへの適用可能性の調査ならびに、なりすまし等の対策となる行動変容と調査を実施しております。そして、これまで『変わらない』ことを前提で築いていたトラスト基盤*¹を、『変わる』ことを前提に構築することで、デジタル世界での模倣や改造などに対する真正保証を実現したいと考えるようになりました。現在は、複数のブロックチェーン分散台帳を仲介者無しに使えるだけでなく、連結させて使えるところを強みと捉え、工場内やスマートシティへの適用を想定した研究開発に励んでいます。」

*¹...情報システムをコントロールするのに重要となるシステム管理台帳の基盤


コマツ:安全で生産性の高く、スマートかつクリーンな現場のためにロードマップを描く

続いては、コマツCTO室技術統括部 主務の伴浩人氏の発表です。企業の歴史や製品について、また、コマツの製品がどのように使われているのかなどを紹介しました。会場を驚かせたのは、事業の強みを生かした社会貢献です。

「実は弊社では、2008年からカンボジア復興支援プロジェクトを行い、日本政府の支援のもと、NPO法人と連携して、対人地雷除去とコミュニティの開発支援を進めています。私たちが、内戦で埋められた対人地雷を安全かつ効率的に除去し、現地の人々と協力することで、跡地を農地や道路へと生まれ変わらせることができました。そして、インフラの整備によって、子どもたちが小学校に通うことができるようにもなりました。また、肝心な校舎の老朽化が進んでいたため、校舎の再建設にも取り組み、2022年には、プロジェクトを通じて10校目となる小学校が完成しました。」

「コマツでは、社会貢献活動においても、このように事業の強みを生かした社会還元に取り組んでいます。ものづくりと技術の革新で新たな価値を創り、人、社会、地域が共に栄える未来を切り拓く」ことをコマツの存在意義と定義付け、安全で安心で健やかな生活、そして持続可能な未来の実現を目標に、日々、製品の研究開発を続けています。」

「例えば、建設業界は他の産業と比べて非常に事故が多く、安全性の確保が第一の課題となっています。労働力不足や後継者不足といった問題は広く知られていますが、働く人の健康維持や技能伝承に環境問題といった、非常に様々な種類の負の要因も抱えているのが実情です。コマツは安全で生産性の高いスマートでクリーンな現場を目指すために、理想とする未来の現場ロードマップを描いています。ソリューションで施工全体をデジタル化して最適化していく『コト』。そして、機械の自動化や自律化、あるいは安全性や環境に配慮した機械の提供を指す『モノ』。この2つを軸に、お客様の現場の課題を解決していきます。」

株式会社資生堂:オープンイノベーションプロジェクト「fibona」

株式会社資生堂からは、オープンイノベーションプロジェクト「fibona」に参加する、資生堂グローバルイノベーションセンターのみらい研究開発所の研究員でもある牧野佑亮氏が登壇しました。

「資生堂では、『BEAUTY INNOVATIONS FOR A BETTER WORLD(ビューティーイノベーションでよりよい世界を)』をミッションに掲げて、美に関する様々な取り組みを行っています。資生堂から想起されやすい『化粧品』はあくまでも手段のひとつです。現在はインナービューティーなどの周辺領域にも着手しています。様々な企業とオープンイノベーションに取り組む中で、これまでになかった領域への挑戦やスタートアップ企業との協業を試みているのが、オープンイノベーションプロジェクトfibonaです。大きく4つの事業からなるチームで、今回は「スピーディートライアル」で開発し、クラウドファンディングを行っている入浴用ボタニカル「蘇湯」をピックアップしました。」

fibona - S/PARK | 資生堂 外部リンク

「『蘇湯』は『プリミティブ×プレミアム』をコンセプトにした薬草の入浴剤です。資生堂では、滋賀県の伊吹山に化粧品のエキスに使用するため、薬草園の生産に取り組んでいます。伊吹山は、戦国時代に織田信長が薬草園を作ったそうです。ただ、近年は温暖化の影響により、これまで鹿が来なかったエリアにおいても鹿が薬草を食べ荒らすなど、獣害がたびたび起こるようになりました。また、育てている薬草は年によって出来高が変動し、多くできすぎてしまった場合などは未利用素材が出ることもあります。そこで、現在は未利用素材を使ったプロダクトの開発と、伊吹山地域の環境保全を目的としたプロジェクト『蘇湯』を実施しています。」

人や地球への配慮を忘れずに美を追求していく。fibonaの挑戦はまだまだ続きます。

日本航空株式会社:宇宙輸送のリーディングカンパニーに向けて

続く日本航空株式会社(JAL)からは、葉柴隆斗氏、石月健治氏、久保田直悠氏が登壇。葉柴氏によるJALイノベーションラボの説明からはじまりました。

「私たちが所属するJALイノベーションラボは、2018年にCX・EX推進の場として設立され、2023年度より新規事業開発の場となりました。上位概念である『JAPAN AIRLINES VENTURES』の事業開発の役割を担っています。 ラボは東京の天王洲に拠点を置き、宇宙・ネクストモビリティ・フードテック・サウナテックの4つの領域と、JALのオープンイノベーションを活性化させるためのビジネスコンテスト、社外からの新規事業開発の種やアイデアの獲得を目的としたネットワーキングイベントに取り組んでいます。」



「1951年の設立以来、JALは空を介して日本と世界とのネットワーキングを構築してきました。そのビジネス領域を地球の空から宇宙空間へと広げ、将来的には宇宙輸送のリーディングカンパニーになることが目標です。現在は、中長期事業開発に当たる”宇宙トランスポーテーション領域(有人・物資輸送)”、短中期事業開発に当たる”宇宙ライフスタイル領域(衣食住)”および”宇宙エンターテイメント領域(教育・体験)”に注力しています。

宇宙トランスポーテーション領域として、月への輸送に関しては、2017年から本格的に取り組みをはじめ、(株)ispaceの民間月面探査プログラム『HAKUTO-R』のミッション2の来年の打ち上げ・月面着陸・月面探査に向けた支援を行っています。宇宙ステーションへの輸送に関しては、米国Sierra Space社の宇宙往還機Dream Chaserを宇宙ステーションから日本の大分空港に帰還させるミッションを推進しています。宇宙ライフスタイル領域及びエンターテイメント領域では、航空事業で培ったノウハウを生かして、宇宙食などの開発を検討しています。また、宇宙教育と宇宙体験にもフォーカスして、幼児や初等教育向けの教育事業も検討しています。」

最後は、やがて訪れる食糧問題の緩和につながる代替食事業について説明しました。

「食を取り巻く環境は徐々に厳しくなっていき、やがては食料需給バランスが崩れてしまうと言われています。世界的にも代替食市場が拡大する中で、我々は『食を通して“サスティナブル”が生活の一部となる社会を目指す』をビジョンに掲げ、現在は海外の代替食スタートアップ企業が、日本国内の市場参入時に活用できるプラットフォームの構築を目指しています。」

森永乳業株式会社:素材の応用可能性を追求し、食の新たな価値の発見に注力

登壇したのは、森永乳業株式会社 研究本部 素材応用研究所 バイオプロセス研究室の中田創氏です。森永乳業の研究紹介と機能性素材のペプチドについて紹介しました。
 

「森永乳業は1917年に創業し、食品事業や栄養・機能性食品事業、BtoB事業、海外事業の4事業を柱にしています。森永乳業の研究開発方針は『乳の優れた力を探り、最大限に活用する』こと。美味しさ、楽しさ、健康、栄養、安心、安全といった様々な面から研究開発に取り組み、それこそがサスティナブルな社会の実現と世界中の人々の笑顔があふれる生活を実現するのだと確信しています。当社の機能性素材の研究は、『赤ちゃんの健康』を起点に始まりました。当社の機能性素材の中から今回紹介するのはペプチドです。」

「ペプチドは私たちの体内にある他、チーズなどの発酵製品に多く含まれる身近な素材です。育児用ミルク、お菓子、プロテイン粉末といった幅広い製品にも使われています。この他にも、たんぱく質が原因のミルクアレルギーを持つ赤ちゃんのための治療用ミルクや、栄養吸収機能が落ちている高齢者向けの流動食などにも活用されています。とても有意義なペプチド研究ですが、機能性を持つ新しいペプチドの発見は容易ではありません。」

「研究所では、宝探しをするように、機能性を持つペプチドを日々探求しています。気の遠くなるような仕事ですが、中には素晴らしい機能性を持つペプチドが存在することも確かです。例えば、弊社の研究で発見した『トリペプチドMKP』 は、高めの血圧(収縮期血圧)を下げる働きがあることが確認されています。高めの血圧に悩む現代人にとっては大きな希望になっているはずです。今後も、乳の優れた力を探り、素材の応用可能性を追求し、食の新たな価値の発見に注力していきます。」

横河電機株式会社:測る力とつなぐ力で貢献する「System of Systems」

最後は、横河電機株式会社のマーケティング本部 企画部 オープンイノベーショングループ長の奥田有紀氏が登壇し、企業紹介とパートナーを求めている事業について発表しました。

「弊社は、1915年に『電気計器研究所』として誕生し、100年以上の歴史を持ちます。主柱は制御事業で、お客様の工場内で起こること、例えば温度や振動、圧力などの数値データをセンサーで集め、工場内の操業を安全かつ効率化させるサポートをしています。制御事業には、エネルギー&サスティナビリティ、マテリアル、ライフの3事業があり、これらをもとに発展させた新会社設立にも注力しています。また、新たな探索領域として、宇宙、防災、海洋の3つの事業分野への進出も図っているところです。」

「基本的には、どの事業でもパートナーを求めていますが、それらの根底には『System of Systems』を共有したいという想いがあります。具体的に必要になるのは、データの解析技術、IoT、3Dプリンター、AR、VR、ブロックチェーン技術、人工知能を使ったサービスなど、数えられないほどあります。現場で動くモジュールなども含めると膨大な数になりますが、パートナーの協力を得つつ、総合的なソリューションとして、お客様に提供するのが目標です。」

「お客様の事業は実に様々で、中にはオイル&ガス業界のように事業規模が大きく、高い専門性が必要なケースもあります。そのため、パートナー探しは決して容易ではありません。しかし、業界の深い知識をお持ちだったり、独自性のある技術を持っていたりするパートナーさんを随時探しております。少しでも可能性があったり、ご興味がある方は、ぜひお声がけください。」

イノベーションの種を撒くネットワーキング

最後に京セラ研究開発本部の本部長仲川彰一が「今回様々な異業種の方が集まってお話をされたのですが、各社さんの『未来をよくしたい』という思いが伝わりました。」と感想を述べ、ピッチは終了しました。

次はその未来に思いをはせるネットワーキングタイムです。

会場内のいたる所で、ピッチ内容を足掛かりに内容の濃いネットワーキングが交わされていました。参加者同士で活発なコミュニケーションが行われるシーンもあれば、スタートアップ企業がエレベーターピッチを行うシーンも見られました。中には、終了時間ギリギリまで熱く語り合う参加者の姿も。

京セラ・オープンイノベーション推進部では、社会課題の解決や新たな価値創造に向けて、スタートアップ・大企業を問わず様々な連携の強化を進めています。初の試みとなった今回のリバースピッチでは、様々な企業様にご協力いただいたことで、参加者も飽きることなくピッチを楽しみ、交流が叶いました。今後も、みなとみらいをはじめとした3つの国内研究拠点にて、社内外を問わない交流や連携を生む機会を提供するイベントを実施していきます。