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オープンイノベーションアリーナ

オープンイノベーションをつなぐデジタル空間

 2020年10月9日(金)、Kyocera Virtual Open Lab Dayがクラウドベースで開催されました。京セラのR&D活動を紹介するオープニングトーク、2019年より行われている異種格闘技戦、そして京セラが創るコンセプトカー第2弾の紹介という3部構成となった本イベントには約700人のオープンイノベーターがインターネットを経由して集いました。コロナウイルスの世界的な蔓延をきっかけに外出自粛や在宅勤務など人との接触を避けるソーシャルディスタンスが叫ばれる中、デジタル空間を介したバーチャルなつながりの可能性を試す一日になりました。

 『人とヒトとの交流を通じてイノベーションのきっかけをつくる』を合言葉につながりを中心としたオープンイノベーションを目指す中、コロナ・パンデミックは交流やつながりの在り方を改めて考えさせる衝撃的な出来事になりました。これまで『交流』と言えば対面形式が当然でした。関係者が一堂に会し、口角泡を飛ばして議論する。言葉や理屈を超えた心のつながりにはアナログ的な熱やバイブレーションの伝達が必要不可欠だ。そんな考え方はもはや古くなってしまったのかもしれません。

 アンケート結果によれば、Kyocera Virtual Open Lab Dayに参加して頂いた70%以上の方が『とても満足』または『満足』と評価頂いています。視聴者の75%近くがいわゆる大企業に所属する技術者や新事業関係者で、我々の活動にある種の共感や興味を持って頂いたのかもしれません。全てのプログラムは通信ネットワークを経由して視聴者に配信する形でした。配信プラットフォームは諸事情により2系統に分かれる複雑な環境となりましたが、ログイン上のトラブルは殆どなく、視聴中の通信トラブルに関するクレームも報告されませんでした。デジタル技術の進展は目覚ましく、そして何よりユーザーのITリテラシーの一段の向上が伺えます。もちろん配信者としての我々にも相応のチャレンジと変化をもたらしました。配信プラットフォームの運用やカメラ撮影、音声制御、テロップ挿入などYouTuber御用達の放送テクニックも然ることながら、Webサイトや電子メールを使ったログイン管理、動画編集やインタビュー形式の取材などコンテンツの企画制作といった新しいスキル習得へのきっかけとなりました。大部分を手弁当に頼ったわけですが、作業に関わった社内関係者の多くはこれらの体験を『これからのマーケテイングの在り方』としてポジティブに捉えています。

 オープンイノベーション活動を敢えて言葉で表現するとすれば、人や組織間の交流を促し、イノベーションにつながる化学反応を起こすという事になるでしょうか。もちろんその先にはアイデア創発やテクノロジー、ビジネスといった社会実装への様々なハードルが存在しています。本当の意味でイノベーションを実現する事は相当難しいと言えます。京セラの創業は『稲盛和夫の技術を世に問う』ことから始まりました。言葉だけを取れば一人の起業家から始まった様に聞こえるかもしれませんが、その背景には創業を支えた強い絆で結ばれる仲間の存在がありました。その絆の証は当時、血判状という形で残されました。

 イノベーションに必要となるつながりがどの程度のものなのかはわかりません。ただ頼れる仲間の存在は困難を乗り越える大きな原動力になることは間違いありません。人とヒトとの交流やつながりを図るため、我々はKyocera Virtual Open Lab Dayを始めとした独自企画を実施して積極的な情報発信を行っています。またコミュニティや大学、企業等との協同を通じて組織間や地域における連携の形成にもチャレンジしています。みなとみらいリサーチセンターのある横浜市では、『みなとみらい地区ビジネスエコシステム形成プログラム』や『横浜をつなぐ30人』など地域を軸としたイノベーション連携が進んでおり、京セラもその一員に加えて頂いています。また縁あって一歩踏み込んだつながりに挑戦してみようといういくつかの企業等とはトライアンドエラーを前提とした交流の模索も始めています。

 ある大手企業との交流は一本の電子メールから始まりました。一緒に新しいビジネスができないか?共創やイノベーションはどうすれば起こるのか?企業間の交流や連携の在り方を議論する内に取り敢えずやってみようという事になり、コロナ禍という事もあってクラウドシステムによるバーチャル交流会を実施しました。両社からそれぞれ100名を超える志ある社員が集まり、集団お見合い的な連携イベントを行ったわけですが、システムトラブルやログインの不具合、通信問題など、半数近くの人がイベントに参加できないという大きなトラブルに陥りました。当然、多くのクレームを事務局は受けるわけですが、これがある種のエネルギーとなります。次は何とか成功させようという雰囲気が事務局を中心に広がり、企画やリハーサルを重ねて行く中で相互の一体感が徐々に生まれ、第2回目を無事実施することに成功したわけです。

 もちろん課題もシェアすることになりました。次回、どうすれば組織間の連携を進められるのか?社員間の相互のつながりを生むにはバーチャルな交流だけでいいのか?第3回目に向けた検討を始めています。新ビジネスやイノベーションは一朝一夕に起こるものではありませんが、少なくともその土壌となる人的なつながりは最低限に残るようなプログラムにしよう。そんな期待を持って人とヒトとのつながりの創出に向けたコラボレーションを行っています。

 中国では『ライブコマース』という新たなマーケティングスタイルが流行り始めている様です。消費者の生活スタイルが多様化する中でマスメディアを通じた画一的なPRではなく、企業トップ自らが製品やサービスをライブ放送でPRし、直接ユーザーとつながろうとするものです。我々もデジタル空間を通じてつながりの形成を模索しているわけですが、イノベーターと『つながる』には何か物足り無さを感じる。やはり熱量やバイブレーションが伝わるリアルな関係こそが最後に『つながる』人の背中を押す決め手になるのではないか?現在は否応なくバーチャルでの活動に舵を切っていますが、リアルでの交流をあきらめたわけではありません。バーチャルとリアルを融合した交流の先には、きっとオープンイノベーションを前進させる多くの扉が開いているはずです。

 そこにはカスタマージャーニーマップならぬイノベータージャーニーマップの様なものがありそうです。イノベーションへと続く道はひとつではなく無数のルートが存在しています。どの道を行くかに正解はありません。もちろん道を進むにはザイルやロープ、テントや寝袋といったツールが必要です。そしてもしかすると過去の経験や他のルートで得られた情報が役に立つこともあるでしょう。ただそれだけでは目的地に到達することは難しい。悪天候や事故、想定外の出来事などコントロールできない外的要因のチャレンジがあるからです。

 それぞれのイノベーションにはそれぞれのジャーニーマップが存在し、そこには当事者だけが知るストーリーがあり、仲間とのつながりや絆が存在します。道中色々な人との出会いがあり、中には図々しくも又は隙をついて心の中に入り込み、そして共に歩き始める。殆どのチャレンジは失敗に終わり、生まれたつながりは長くは続かないかもしれません。ただ心の中には忘れがたい足跡が残ります。

 善きにつけ悪しきにつけ、足跡が多ければ多いほどその人のストーリーは豊かになり、そして新たなつながりへと連鎖が続いて行く。イノベータージャーニーは恐らくこんな感じです。そしてエンディングはきっと遥かな山頂から神々しく輝く光を全身に浴び、Pricelessな歓びを感じているはずです。

 何しろ後ろを振り返るとそこには語り切れないほどの経験や時間を積み重ねてきた大人だけが知るストーリーがあり、そしてその周りには時間を超えて心に響く多くの人との出会いがあるのですから…

 最後になりますが、Power of Designと題した2020年の異種格闘技戦の模様は昨年に続き、アーカイブ映像公開をこの「オープンイノベーションアリーナ」サイト内で年内の公開を向けて準備中です。見逃された方は是非ご覧ください。