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電力の需給管理について|小売電気事業者に求められる役割と課題を解説

電力の安定供給に不可欠な需給管理は、小売電気事業者にとって重要な基幹業務です。しかし、脱炭素化の進展や再生可能エネルギーの導入拡大により、需給管理の複雑性は年々増しています。このような状況下で、小売電気事業者はどのような対策を講じるべきなのでしょうか。

本記事では、需給管理の基本から直面する課題、外部委託の現状と限界、そして注目されるシステムによる自動化の必要性について、わかりやすく解説します。

目次


    電力の需給管理はなぜ重要なのか

    電力における「需給管理」とは、電力の供給量と需要量が一致するように調整することです。電力を安定して供給するためには、発電された電力量と消費される電力量が常に一致していなければならず、この原則を「同時同量の原則」と呼びます。

    小売電気事業者には1日を30分単位の48コマに分割し、各コマごとに需要と調達を合わせる「計画値同時同量」が義務づけられています。小売電気事業者にとって、需給管理は極めて重要な業務です。なぜなら、需給のバランスが崩れると電気の周波数が乱れ正常な供給が困難となり、最悪の場合、大規模な停電を引き起こす可能性があるからです。こうした事態を防ぐためにも、適切な需給管理は欠かせません。

    そのため小売電気事業者は、多くの場合が前々日から前日までのうちに翌日の電力需要を気象条件や過去のデータを基に予測し、この予測に基づいて需要計画を策定します。そして、自社で発電設備を所持している場合は発電計画も立て、自社で発電設備を持たない場合や自社での発電だけでは不足する場合は、日本卸電力取引所(JEPX)から調達します。


    この一連のプロセスを毎日繰り返すことで、「計画値同時同量」の義務を果たし、「同時同量の原則」を維持し、安定した電力供給が実現できるのです。したがって需給管理は、小売電気事業者の経営・存続を左右する重要な基幹業務といえるでしょう。

    小売電気事業者が直面する需給管理の課題

    このような需給管理において、小売電気事業者はさまざまなリスクに直面しています。日々の需給管理に基づき作成される需要計画は、電力広域的運営推進機関(広域機関;OCCTO)へ提出する義務があります。たとえば、この需要計画が「同時同量の原則」から大きく乖離する状態が続くと、広域機関から業務改善指導を受ける可能性があり、事業者としての信用を損ないかねません。

    さらに、実際の需給実績が事前に提出した計画と一致しない場合には、インバランス料金(系統全体の需給バランスを調整するコスト)が課されます。インバランス料金は需給ひっ迫時には高騰することもあり、これも大きなリスクのひとつといえるでしょう。

    近年では、脱炭素社会の実現に向けた取り組みが加速するなかで、再生可能エネルギーの導入拡大やFIP(フィードインプレミアム:Feed-in Premium)制度の導入により、電力供給における不安定要素が増加しています。また、2024年末時点では、再生可能エネルギーの導入量は約9,000万kW*¹に達しており、需給管理の複雑性と業務負担は年々大きくなっています。こうした環境の変化によって、従来の属人的な需給管理では対応が困難な場面も増え、小売電気事業者は多くの課題を抱えているのが現状です。



    需給管理の外注やバランシンググループにおける課題

    複雑化する需給管理の課題を解決する手段として、需給管理の外部委託やバランシンググループ(BG)への加入を選択する小売電気事業者も見られます。資源エネルギー庁のアンケート調査(※)によって、多くの事業者が電源調達や需給管理を親BGなど他社に委託している実態が明らかになりました。しかし、こうした手法にも課題が存在します。

    BGは、複数の事業者が連携してインバランスリスクやコストを最小化できる仕組みとして機能する一方で、柔軟性に欠ける側面があります。たとえば、地域の再生可能エネルギーを電源に組み込むのが難しかったり、電力調達先が限定されたりといった制約がある場合です。

    このような状況を背景に、「結局は需給管理を自社で行うしかない」という動きが業界内で広がりつつあり、そのためには、自社内での効率的な需給管理体制の構築が不可欠です。具体的には、需要予測、市場入札、計画提出といった業務を効率的かつ正確に運用し、属人化を排除した高水準の自動化を実現する、需給管理システムの導入が急務となっています。

    自社での需給管理を効率化するために

    本記事では、電力の需給管理が小売電気事業者にとって避けては通れない重要な業務であることを解説しました。

    小売電気事業者が「計画値同時同量」の義務を果たし、「同時同量の原則」を維持し、安定した電力供給を実現するためには、日々の需要予測から計画策定、実際の調達まで、一連のプロセスを正確に実行する必要があります。外部委託やBGの活用も一定の効果はありますが、柔軟性や制約の面から「自社での対応」がますます重要といえるでしょう。

    こうした状況のなか、小売電気事業者を支援するのが、京セラのエリア・エネルギー・マネジメント・システム(AEMS)です。京セラのAEMSは、日々の需給管理業務を完全に自動化するだけでなく、高精度なAI予測によりインバランスや調達コストの最小化も実現します。

    ご興味をお持ちの方は、ぜひ以下の記事をご覧ください。

    その需給管理、もっとスマートにできるかもしれません。電力事業の未来を支えるAEMS

    日本は2050年のカーボンニュートラル実現を目指し、脱炭素社会の構築に向けた取り組みを本格化させています。その中でも、地域における再生可能エネルギー(以下、再エネとします)の導入と活用が、今後ますます重要になると考えられています。

    特に東日本大震災以降、再エネの導入が加速しており、地域で生産された再エネを地域で消費する「地産地消」の考え方が広がっています。こうした流れの中で、地域新電力*¹をはじめとする小売電気事業者は、地域の再エネ電源を活用した持続可能な電力供給に取り組んでいます。
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