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NPOをダイバーシティチームで訪問、地域・社会課題の本質を探るスタディツアー開催!

 日本全国津々浦々、それぞれの地域で様々な社会課題があります。その中で横浜市は幅広い人口分布や山から海まで存在する立地などに特徴があり、大規模災害、多文化共生、子育て・保育、環境、高齢化など多くの課題を抱えています。そして、それらの課題に日ごろから真摯に取り組んでおられるNPO等の団体の方がいらっしゃいます。
 今回は一般に公募した様々な経験を持った方々でNPO等の団体を訪問し、担当者にお会いして生の声を聴く機会として、神奈川県と認定NPO法人市民セクターよこはまの両主催で「NPOをダイバーシティチームで訪問 地域・社会課題の本質を探るスタディツアー」が2月18日火曜日に開催されました。
 参加者各々が最初に事前に提示された中から関心のあるテーマを選び、当日そのテーマでチームとなった参加者が、そのテーマの課題解決に向けて取り組む団体を訪問し(ツアー)、団体へのヒアリングやチームでのレポート作成を通じてそれぞれのテーマの現状を学習(スタディ)。取り組むべき地域や社会の課題について考えました。
 京セラはメイン会場として京セラみなとみらいリサーチセンターを提供し、社員もいくつかの部署から参加しましたのでレポートします。
 今まで想像したものとは課題の本質が違っているものもあり、参加者一同、担当者から直接ヒアリングする事の大切さを実感するイベントとなりました。

多様性重視のチームビルディング

 イベント自体は(1)オリエンテーション、(2)スタディツアー、(3)レポート作成、の3つのパートに分かれており、メイン会場である京セラみなとみらいリサーチセンターに集合しチーム編成を行いました。
 今回調査するテーマは5つ(災害支援・多文化共生・子育て、保育・環境問題・若年性認知症:詳細は後述)。ここから各自関心があり、訪問したいテーマ一つを選択します。大手企業から中小企業、また様々なNPO法人などが混ざり合い構成された3名から6名のダイバーシティチームが編成されました。

いよいよ!社会課題の渦の中へ

 様々な参加者で構成されたチーム毎に訪問団体の情報収集やヒアリングする内容について事前ミーティングを終え、11時からの食事の後、チーム毎にNPO等の団体を訪問しました。
 社会課題の解決には関係者をできるだけ広く集めるのが重要で、そのセオリー通りダイバーシティチームで一緒に移動と食事をする中でコミュニケーションが図られ、セクターや活動分野が違う参加者同士がお互いのことを知り合う時間になりました。
 訪問先での滞在時間は約2時間。団体の方からお話を伺う他、活動場所の見学や活動体験をしたチームもありました。
非常に中身の濃い時間を体験し、ある訪問先団体の方は、初対面の参加者同士にもかかわらず、来訪した時にはチームとして何か一緒にやろうという雰囲気が生まれていたと驚いていました。

5つのテーマと訪問先

テーマ1:災害支援(訪問団体:認定NPO法人かながわ311ネットワーク)

各地の被災地支援に取り組む中で、全国の支援団体とのネットワークや専門的なノウハウを蓄積。大規模災害に備えて、行政とNPO等との連携による支援体制の構築を目指した活動や防災教育を行っています。
<訪問場所>かながわ県民活動サポートセンター(横浜市神奈川区)


テーマ2:多文化共生(訪問団体:NPO法人かながわ外国人すまいサポートセンター)

年間1,000件を超えるすまいに関する相談業務等を通じて神奈川県内在住の外国人の支援に取り組み、また「共に生きるまちづくり」に向けて、幅広いネットワークを活かしてすまいや生活の課題解決を図っています。
<訪問場所>かながわ外国人すまいサポートセンター 横浜YMCA2階 (横浜市中区)


テーマ3:子育て・保育(訪問団体:NPO法人のはらネットワーク)

子育て当事者にとって緊急性の高い困りごとである「一時預かり」のニーズに対して、他の施設や支援者、行政とともに「ちょこっと子育てレスキュー隊」の仕組みを立ち上げ、取り組んでいます。

<訪問場所>子育て子育ち支援センター「さんぽ」(横浜市都筑区)


テーマ4:環境(訪問団体:NPO法人海の森・山の森事務局)

映像・写真の強みを活かした環境活動を展開。小学校での出前事業「子どもたちと取り組む未来へのゼロ・マイクロプラスチック大作戦!」では、子ども自らが課題に取り組む機会を提供しています。

<訪問場所>黄金スタジオD(横浜市中区)※活動場所の大岡川周辺も見学


テーマ5:若年性認知症(訪問団体:SJNK・本人会議)

若年性認知症の人と若年性認知症支援コーディネーターが立ち上げた本人会議。自身の体験や日頃感じていること・悩みを本人同士が共有する場をつくり、居場所づくりと安心して暮らせるまちづくりを目指しています。

<訪問場所> 横浜市市民活動支援センター(横浜市中区)

見て、聞いて、感じたことをメンバー全員で共有

 メイン会場に戻り、訪問先でのヒアリング内容をもとにチームでレポートを作成しました。
 それぞれの専門や経験に基づいて、多様な観点からの意見や考え方が個別のディスプレイ・ホワイトボード等をフルに使い、交わされました。各メンバーがそれぞれに考えたことや、ともに取り組めそうなアイディアについて、議論の内容を可視化することの重要性が改めて認識されました。

各自の気づきをみんなの気づきに! 最後にまとめを発表

 最後に各チームによる発表会が開催されました。
 自分たちが参加したテーマについて深く知るだけでなく、他のテーマについても広く知ることができました。発表の中で各チームから共通して上がった声は、「みんながもっとこのテーマについて知っておく必要がある」ということでした。各チームから発表された「印象に残った言葉」や「問題の解決策」について紹介します。

<テーマ1「災害支援」>

発災後に速やかに行動できるようにマニュアルづくりが必要である一方、既に様々な情報があるにも関わらず浸透していないという平時の課題にも着目するなど、災害が起きる前後で課題を整理し、「災害リテラシー」の向上に向けてチームのメンバーのリソースを活かした情報発信や人材育成の取組みについてアイディアが提案されました。


<テーマ2「多文化共生」>

日本に住みながらにして同じ権利が与えられていない現状に対して、必要とされる「機会均等の考え方」が印象に残った内容として挙げられました。そして、権利の平等に関する問題の背景には、日本人自身の権利に対する意識の希薄さがあると考えられることから、まずは、みなに等しく権利があることを子どもの頃から触れておくことが解決策として提案されました。


<テーマ3「子育て・保育」>

「無いものは自分たちで作る」というマインドで取り組まれてきた乳幼児一時預かりの事例から、無認可保育園や子育て親支援に対する制度や社会的な理解がまだまだ乏しい現状を知り、①活動資金や支援者の不足、②子育て親支援への理解不足を課題として整理したうえで、活動者の手弁当にならないような仕組みの構築に向けた意見が出されました。


<テーマ4「環境」>

団体が取り組む大岡川周辺の清掃活動とゴミを計量し可視化することを体験した結果、たったの 10 分で煙草の吸殻が 500 本以上あったという報告に、参加者からも驚きの声があがりました。また、小学校への出前授業から発展したプロジェクトについて、自分たちの将来を考えて持続的に取り組む子どもたちの進化は想像を超える展開があり、そうした姿が大人たちも変える可能性があることが報告されました。


<テーマ5「若年性認知症」>

高齢期とは異なる課題があり一括りで認知症と捉えられない中で、若年性認知症の方たちとのやりとりを通じて、できないことに着目されることの辛さ、できることをやり続けることで社会に貢献していきたいという声を受けて、本人のできることをサポートするような、依存を生まない形での技術開発が解決策の一つとして挙げられました。

 今回のスタディツアーに参加した多くの方が「現場でのインタビューは想像と現実の違いを教えてくれました。」と新たな気づきの声が上がりました。
 他にも「具体的に連携できそうなアイディアが生まれ、改めて集まることになった。」「異業種の人と活動したことで、様々な角度でものを見たり、企業の常識?NPOの常識?個人のちがい?などその人が普段受けているバイアスや視点や感覚の違いに気付く事が出来た。」 また「NPOの大きな課題をSNS等を利用し、発信することにマネタイズの可能性がある。」や「訪問して聞くことができた生々しい話が学びになった。」など各自がそれぞれの学びを持ち帰ることができる場になりました。

 「みなとみらいリサーチセンター」は、京セラのオープンイノベーションを加速させるための戦略拠点であり、今後もこのようなイベントに協力し社会課題解決に向けて活動する方々とのネットワークを拡大させていきます。