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ポストコロナに向けた協働・パートナーシップの新たな地平「スタディツアー」に今年も協力!

 昨年に続き、今年も2月17日水曜日に、スタディツアー「ポストコロナに向けた協働・パートナーシップの新たな地平」が開催されました。
 このイベントは主催である神奈川県と認定NPO法人市民セクターよこはまが、横浜市市民局の後援、京セラ株式会社の協力のもと、優れた社会貢献活動を実施している企業・大学や先進的な取り組みを行っているNPOの現場を訪問し、学んだことを参加者が自組織に持ち帰り実践することで、優れた取り組みが県内に波及することを狙いとして実施しています。
 昨年は参加者がそれぞれの団体の施設を訪問しましたが、今年はコロナ禍の影響で直接の訪問が出来ず、京セラみなとみらいリサーチセンターのオープンイノベーション施設「COMPASS」にてオンラインとオフラインのハイブリット開催となりました。参加者はオンラインで事前に希望されたルームに分かれ、グループワークを通して様々な議論を行いました。

会全体の流れ

まず、市民セクター横浜の吉原さんに以下のように会の全体の流れを説明していただきました。

1)オリエンテーション
2)グループ別事前学習
事前に関心のある訪問先を選択。希望者同士のグループ(4~5名)に分かれ、各テーマや訪問先に関する情報収集、訪問時のヒアリング内容についてオンラインで話し合います。
3)ランチタイム
4)オンライン中継による事例団体訪問
グループごとにZoomによる中継で訪問先とつながり、団体関係者へのヒアリング等を行います。

5)グループ内ディスカッション
ヒアリング内容を整理し、レポート課題について各グループでディスカッションした内容をまとめます。
6)全体発表
作成したレポートを発表し、訪問先の活動や、そこから得られた気づきや学びの成果を、他のグループと共有します。

また、今年の各グループの企業・団体、テーマについては以下の内容になります。

<訪問先1>京セラ株式会社/京セラコミュニケーションシステム株式会社
人間の潜在的な能力や未知の能力を「AI、テレプレゼンス・バーチャルリアリティ、センシング、ロボティクス」により総合的に拡張することで、with/afterコロナ社会、少子高齢社会など様々な社会課題に対して課題解決を目指す「人間拡張」の研究開発を推進しています。

<訪問先2>NPO法人あおば学校支援ネットワーク
自己肯定感を持ち自分らしく生きることができる子どもたちが育つ社会づくりをめざして、2005年より横浜市青葉区を中心に活動。学校では、キャリア教育や各教科におけるプログラムやボランティアのコーディネート、地域では、体験活動や世代間交流を通じた青少年の育成、講座・フォーラムなどの事業を行っています。

<訪問先3>ソフトバンク株式会社/屛風ヶ浦地域ケアプラザ
約60名の担当者を全都道府県に配置し、エリアごとにCSR活動を展開しているソフトバンク。そこでは、被災地における災害対策本部と連携したリエゾンの取り組みも行われています。また、コロナ禍における孤立化の課題に対して、横浜市では、行政や地域ケアプラザ、地元企業等と協働でオンラインツールの普及に取り組んでいます。

<訪問先4>一般社団法人乳がん予防医学推進協会
30歳以降で罹患者数が急増する乳がん。早期発見で9割以上が生存できるにも関わらず、死亡者数が増加している原因の一つは、検診受診率の低さです。早期発見の重要性を広めるため、WEBセミナーやワンコイン乳がん検診の継続的実施に向けた取り組みを進め、医療機関や他業種、そして行政と連携し、検診受診率の向上を目指しています。

<訪問先5>認定NPO法人市民セクターよこはま/株式会社NTTドコモ/横浜市
認知症は、誰もがなる可能性のある症状の一つです。そこで、「認知症になっても、自分らしく暮らせるまちづくり」を目指し、「テクノロジーのチカラを活用し、人と人とが支えあう感度をさらに上げていく(ことに貢献する)」を目標に、協働共創契約書を締結し、横浜市の協力も得て、まちかどケアプロジェクトに取り組んでいます。

さあ、社会課題の現場へ!オンラインによる団体訪問

 オンライン中継による事例団体訪問では私達も興味があり、議論にも参加させていただいた訪問先4、一般社団法人乳がん予防医学推進協会のグループについてレポートします。
 (左写真は一般法人乳がん予防医学推進業界の皆さんがグループワークに参加されている様子です。)

一般社団法人 乳がん予防医学推進協会

 乳がんは女性の一番かかりやすい「がん」だとご存じですか?
 乳がんの10年生存率は全体でも約80%!ステージⅠで発見できればその数字は90%超!とも言われています。つまり、早期に発見すればそれほど恐れるものではないとのことでした。そういう背景があるにも関わらず、乳がん検診の受診率は40歳から69歳までで47.4%*¹と未だに半数以上の女性は受けていないという事実があり、そこが大きな話題の中心でした。
 一般社団法人乳がん予防医学推進協会は診療放射線技師3名で立ち上げ、現在、臨床検査技師、婦人科医師、乳がんサバイバー、ピンクリボンアドバイザー、乳がん啓発運動指導士が新たに加わり、多業種だからこそできる患者さん目線、医療従事者目線による多角的なアプローチ、積極的な乳がん啓発活動に取り組んでいるそうです。
 このことを聞いて「早く見つければ治せる確率が高いのに、なんで皆さんが受診にいかないの?」という率直な気持ちが沸き、乳がん予防医学推進協会の団体に訪問いたしました。
 私自身は乳がん検診を受けたことがなかったのでイメージがわかなかったのですが、マンモグラフィ検査は痛いというイメージを持っている女性が多いと教わりました。ところが、その痛みは撮影技師の声かけの工夫や生理前後の検査受診を避けるなどで少なからず緩和できることもあるそうです。なお、一般の乳がん検診の待ち時間が長いこともあって受診の時点で受診者が既に精神的ストレスを感じる場合も多くあるそうですが、乳がん予防医学推進協会はネット予約の段階で事前に問診をし、当日はなるべく短時間、スムーズな検診ができるように色んな工夫を施しています。
 もう一つ聞いて驚いた現実は、ママになったらついつい子どものことを優先し、自分のことを後回しにする女性が多いという話もありました。乳がん予防医学推進協会はその親子の絆を起点とし、親子がわくわく楽しく参加できる「乳がん検診へ行こう 絵画コンクール」を企画したりして、多くの企業団体や医療機関の協力、協賛によってたくさんの賞を設け、「受賞」という成功体験により子どもの自己肯定感を育む一方、乳がん検診の怖いイメージを払拭したいと考えているそうです。
 現在いろんな人に乳がん検診のきっかけを作るため、クラウドファンディングで資金を集め、乳がん検診受診者さんの負担を軽減した乳がん検診イベントも実施されています。まだまだ小さな組織で活動に限界があるとのことでしたので、これからはみんなで手を取り合って乳がん検診受診率の向上や早期発見による生存率の向上を目指して取り組んでいきたいとのことでした 。
*¹ 国立がん研究センター https://ganjoho.jp/reg_stat/statistics/stat/screening_p01.html

 オンラインでの事例団体訪問の後には、参加者が引き続きブレイクアウトルームで意見交換を行いました。今回はみなとみらいリサーチセンターで、COMPASS以外の大小各会議室も使用するなど、少し複雑なオンライン接続を行いましたが、参加者もオンラインに慣れているせいか、大きなトラブルもなく有意義な議論が出来たようです。ご年配の方もスムーズにビデオON/OFFの切り替えを駆使されており、皆様の地域課題に取り組む熱意をとても感じました。

 最後に参加者がそれぞれ各グループで議論された内容を全体のメインルームで発表し、改めて地域社会の課題に対する様々な取り組みがあることや、自分が暮らす地域にも生かせるような取り組みに共感することが出来ました。発表中に「わくわく楽しく」という言葉が何回も出ており、子どもから高齢者まで技術の進化や様々な取り組みについて体感していただくことが重要だと感じました。
 (右写真は発表者が議論の内容を紙にまとめて、参加者向けに発表されている様子です。)

全員で学びを共有する、事例発表会
それぞれの垣根を越える対話の機会

 従来の京セラでは企業間の意見交換や会話が多かったのですが、今回のスタディツアーで一般市民の方々と一緒に皆さんの身近な課題について議論する貴重な機会を得ることが出来ました。また当事者目線から課題に取り組む姿勢も学ぶことができました。
 今回の活動でパートナーシップ関係を築けた企業や団体、一般市民の方々と共に、地域社会の持つ課題に取り組んでいきたいと思います。

編集部より
 昨年に引き続き開催されたこのツアー。今年は弊社も訪問を受ける側として参加いたしました。<訪問先1>として参加した弊社研究開発本部 みなとみらいリサーチセンター フュ―チャーデザインラボの金岡さんは参加の狙いを「京セラの中で、社会課題に対してどのように取り組んでいるのかを参加者に知ってもらい、現場の課題、期待など気づきを得ると共に協働接点を作ることでした。」と語っていました。さらに、「今回参加することによって、今まで企業や行政から垣間見えていたニーズと現場のニーズにはまだまだギャップがあると認識しました。例えば、現場ではスマートフォンが使えない高齢者も多く、それに対するサポートが不足していると感じられていたり、また、学生さんからは『何故、企業が社会に対してつながりを求めるのか』という問いもあり、それぞれの立場で議論が沸きました。課題が多様化している現代において、企業もそれらに対応していくために社会とつながりを持って対話していくことの重要性を知るいい機会になりました」とのことでした。現在、会社の存在意義とは単に利益を上げるだけではなく「社会課題を解決すること」を通じて利益を上げることが求められています。こうした活動を通じ、社会課題と企業課題のギャップを埋めていくことが必要だと感じた次第です。