あるはずのない驚きの感触! 触覚伝達技術「HAPTIVITY®」
概要
京セラはディスプレイ画面をタッチした際、あたかも実際のキーを押したかのようなクリック感を指先に与える触覚伝達技術「HAPTIVITY®」を開発しました。「HAPTIVITY®」は、バーチャルリアリティ技術の一種で、スポンジを押したような微妙な触感や実際にキーを押したかのような感触を圧電素子と独自開発のコントローラで実現しました。タッチパネル上で表現できる触感は、重い・普通・軽い、2段押し・多段押し(押込み感)、ラバーのような表面感覚などのキー触感で、用途やシチュエーションに応じてダイナミックに変更、設定することができます。適応の範囲は多彩です。スマートフォンの画面、車のハンドルやインフォメーションパネル、リモコンのスイッチ、ゲーム用のコンソールなど生活で利用するさまざまな場面で利用が可能です。
原理
このバーチャルリアリティ技術は、触覚伝達技術と呼ばれています。人は物に触れた際、圧力を感じる「圧覚」と触れたと感じる「触覚」を指先にあるヒト触覚神経で感じています。触覚伝達技術は、このヒト触覚神経に対して人為的に刺激を呈示することで、「圧覚」と「触覚」を疑似的に生み出す技術です。ヒト触覚神経にはいくつかの受容器があります。そのなかでもっとも圧力に対する感度が高い神経が、パチニ小体です。パチニ小体に対して、特定の振幅、周波数、タイミングを組み合わせて刺激を与えると、ヒト触覚神経はあたかも物に触れたかの様に感じます。
しかし、リアルなキークリック触感を生み出すには、ヒト触覚神経にさらにリアルな錯覚を起こさせる必要があります。京セラは、慶應義塾大学前野研究室とともに人のキークリック動作を実際に測定することで、このリアルな錯覚を引き起こす動作原理を解明しました。
通常のキークリックの押圧動作は、下記の図のように
「A: 一定の圧力をかけられるまでは動かない」時間(圧覚期間)と、
「B: 一定の圧力をかけられた時、キー自体が押し下げられる」期間(ストローク期間)、そして
「C: クリック触感を出す」瞬間(クリック触覚期間)で構成されていることがわかりました。
この圧覚期間、ストローク期間、そしてクリック触感期間という一連のプロセスを、京セラは、積層圧電素子と独自開発したコントローラで再現し、リアルな触感を生み出すことに成功しました。特に圧電素子が持つ、①圧力を検出すれば電荷を生成する、②電圧をかければ変形する、という特性と、③それらを素早く行える俊敏性、という3つの特性を精緻にコントロールすることで、「HAPTIVITY®」では多様なキー種類(触感)の生成に成功しています。
京セラの「HAPTIVITY®」は、2012年 経済産業省、(一社)デジタルコンテンツ協会(DCAj)より 「Innovative Technologies」賞を受賞するとともに、2013年には、バーチャルリアリティ技術の応用例として、日本バーチャルリアリティ学会誌にて製品紹介されました。また、京セラでは「HAPTIVITY®」に関する基本技術を含む多くの特許を取得しており、そのライセンス提供(※)も行っています。
アプリケーション
「HAPTIVITY®」 技術は、スマートフォン、タブレット、ナビゲーションシステムなどのタッチパネルユーザに対して、リアルなキークリック触感を呈示し、その明確な決定感によりこれまでにない「驚き」と「喜び」を実現する技術です。民生製品に限らず、車載、産業、医療機器などあらゆる分野での応用が期待されています。