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カメラ1台でOK!京セラの物体認識AI技術

カメラ1台で簡単設置!京セラの物体認識AI技術

 近年、日本国内では、労働人口の減少により小売店やコンビニエンスストアなどの店舗運営のさらなる効率化、省人化が課題となっています。また、昨今の新型コロナウイルス感染拡大防止を図るために、店舗内での対人接触機会の削減も求められています。
 現在、その対策として、セルフレジや無人AI決済システムの導入が進んでいますが、バーコードスキャンが必要なセルフレジでは、利用者の手間が増え、精算に時間がかかること、無人AI決済システムでは、店舗内に多数のカメラの設置が求められ、大規模な設備投資が必要となることが問題となっています。

 京セラが開発した物体認識AI技術は、重なりあった複数の商品を即座に認識することができるため、スマート無人レジシステム等への活用で利用者負担の軽減に加え、店舗運営の効率化や対人接触機会の削減にも貢献します。また、レジ台にカメラとPC、ディスプレーを1台ずつ設置することで導入できるため、低コストで簡単にご利用いただけます。

京セラの物体認識AI技術の特徴

低コスト、簡単な導入が可能

 現在デモを行っているスマート無人レジシステムでは、既存のレジ台にカメラとPC、ディスプレーを1台ずつ設置することで導入できるため、大規模な設備投資や工事が必要ありません。小規模な店舗でも低コストで簡単にご利用いただけると考えています。また、PCの処理能力が求められる新規商品の登録時のAI学習においては、クラウドサービスを利用することが可能であり、現場に設置するPCの低コスト化を実現することが可能です。

対象商品の重なりや手に持った状態でも物体認識が可能

 独自開発した物体認識AI向け学習手法を活用することにより、以下のような様々な利用シーンでも高精度に認識することが可能です。
(1)利用者が置き方を気にせず、商品同士が重なりあうように乱雑に置かれたシーン
(2)利用者が商品を手に持った状態で、カメラ前で商品を動かしながら認識をさせているシーン
 このようなシーンに対応することにより、利用者の手間を減らし、精算にかかる時間を短縮することが出来ます。感染症対策が行われている状況下では、感染リスクの低減とともに、レジ待ち行列の緩和にも貢献します。

大量の対象商品を認識でき、新規商品登録時の学習時間を大幅に削減

 独自開発した物体認識AIアーキテクチャを活用することにより、当社独自に評価した結果、本システム1台で約6,000種類以上の商品を登録し認識することが可能です。
 さらに、新規商品を登録する際には、従来システムでは登録済商品を含む全商品を再度学習する必要があるのに対し、本システムでは新規商品だけの追加学習で済むことから、学習時間が大幅に短縮できます。

物体認識技術の解説

 本システムには、当社の研究開発本部 先進技術研究所にて独自に開発したAIアーキテクチャ、学習手法を用いた物体認識技術を用いており、以下三つの技術課題に対応しています。 
 課題1: 認識対象数と認識精度を両立させること
 課題2: 認識対象の見え方の変化に対応すること
 課題3: 新規認識対象の追加学習に対応すること
 従来技術として、深層学習(DL: Deep Learning)による分類器が挙げられますが、上記の三つの課題を同時に満たすことが困難であるという問題がありました。例えば、従来技術では新規認識対象の追加学習には対応できず、学習済みの認識対象も含めた再学習が必要となり、課題1と課題2に対応できたとしても課題3に対応することができませんでした。
 当社が開発した物体認識技術は、上記すべての課題に対応しており、以下の三つの技術的特徴を有しています。

認識商品数の拡大技術

 従来手法として深層学習による分類器を使用する方法が挙げられますが、分類可能な商品数の拡大が課題となっていました。当社が独自に開発した特殊な構造を持つ物体認識AIアーキテクチャを利用することにより、分類精度を維持したまま商品数を拡大することが可能となっています。

学習データ生成技術

 従来手法では、物体認識AIの認識精度を向上させるため、大量の学習データが必要となっていました。当社が独自に開発した学習データ生成技術*¹を活用することにより、少量の学習データを効果的に水増し(Augmentation)することができ、商品が重なり合ったり、商品を手に取ったりするような従来手法では認識が難しいシーンにおいても高精度な物体認識が可能となっています。

新規認識対象への対応技術

 従来手法の深層学習による分類器を使用する方法では、新規認識対象の登録時に登録済商品を含む全商品を再度学習する必要がありました。当社が独自に開発した深層学習と古典的機械学習との融合技術を利用することにより、新規認識対象の登録時に新規商品だけの追加学習で済むこととなり、学習時間の大幅な短縮が可能となっています。

物体認識技術の適用例

 当社が開発した物体認識技術は、小売店舗向けの商品認識のほか、食堂におけるメニュー認識や、生鮮食料品の認識にも適用可能です。

食堂におけるメニュー認識への適用例

 食堂におけるメニュー認識の適用例として、当社内の社員食堂を利用した実証実験の結果を示します。食堂での精算タイミングには食前と食後の二種類があります。食前タイミングでの精算においては、様々な料理の盛り付け状態があっても認識出来る必要があり、また食後タイミングでの精算においては、皿に残った様々な汚れや食べ残しの状態があっても認識できる必要があります。実証実験では食前と食後のどちらにおいても98%以上の認識性能を達成したことを確認できました。

 また昨今の感染症対策を実施する状況下においては、社員食堂の利用者は減少傾向となっています。食堂運営においては朝や夜の食事の提供を停止し、軽食の販売等に切り替えるケースが発生しています。このような場合であっても、本物体認識技術であれば、1台のシステムでメニューと商品といった異なるアイテムの認識を同時に行うことが可能となっています。

生鮮食料品の認識への適用例

 また、本物体認識技術は、生鮮食料品の認識にも適用することが可能です。野菜や果物のような対象物の色や形にばらつきが生じるような場合であっても、同一の物として高精度に認識可能です。更に、本技術を利用することにより、同一の野菜や果物の中での選別を行う用途でもご利用いただけます。

その他の領域に向けた展開

 当社では本物体認識技術を様々な領域向けに展開を図りたいと考えています。農業や漁業における作物や魚の仕分け、生産現場のロボットにおける部品認識等、多くの業界における業務効率化支援への貢献が可能と考えています。

参考文献
*¹…17th International Conference on Machine Vision Applications
「Cut and paste curriculum learning with hard negative mining for point-of-sale systems」