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【連載:第3弾】"しあわせ"と"ふしあわせ"は背中合わせ? "しあわせ"を巡る議論の結末は?

「異種格闘技戦’21」後半戦

 各界を代表するパネラーを招き、“しあわせ”という人間の根源に迫るテーマで白熱した議論を展開した第3回「異種格闘技戦‘21」。前半戦では、パネラーそれぞれの幸福論をぶつけ合い、 “しあわせ”には物事をどう捉えるかという「前向きな気持ち」と、他者と関わり、理解しようとする「他者と関わること」が重要だとわかってきました。
 その一方で、“しあわせ”に必要なはずの「他者と関わること」から“ふしあわせ(不幸せ)”になる人もいるのではないか、との疑問も生じた前半戦。
 後半戦では、この“ふしあわせ”について考えるところから議論がスタートします。“しあわせ”とは真逆の“ふしあわせ”を考察することで見えてくる、“しあわせ”の形とは?引き続き白熱する後半戦の模様をご紹介します。

“信じる”ことの難しさ。なにを信じれば“しあわせ”になれるのか

 前半戦終了間際、総合地球環境学研究所長 の山極壽一氏から現代の“しあわせ”の形として、SNSの存在が挙げられました。5万人と“しあわせ”を共感した元サッカー日本代表、鈴木啓太氏のように、現代では誰もがSNSを通じてその感覚を味わえるようになっています。しかし、“しあわせ”になるためのSNSを通じて、“ふしあわせ”になる、という問題提起が今回のレフェリーであるプロデューサーの川原卓巳氏から出てきました。後半戦はこの“ふしあわせ”についての討論からスタートすることに。

 前半戦では忘れられていたゴングがきちんと鳴らされ、川原氏とパネラー6人によって、後半戦がスタートしました。まず切り出したのは山極氏。

 山極氏:「(日立製作所フェロー)矢野(和男)さんから“信じる”ということはAIにはできない、人間にしかできないという話が出たが、“信じる”ことを間違えると大きな“ふしあわせ”になってしまう。鈴木さんのようにサッカー選手になれる人は一握りだし、愛していると言って信じても、裏切られれば不幸になる。いったいなぜ“信じる”ということが起きてきたのか。」
 “信じる”ことは結局、人間に“しあわせ”も“ふしあわせ”も与えている。このジレンマの解消法はないのでしょうか?

 山極氏の答えは、なんとAI。前半では“ふしあわせ”の要素として登場したAIが、解決策として再登場したことに、思わず会場も「お~ッ」とどよめきました。山極氏いわく、人間ではないものに判断を委ねることで、“信じる”ことのジレンマを解消するしかないと語ります。
 これを受けて、矢野氏はここ最近までその役割を果たしてきたのは経済活動だと答えます。貨幣が人間に価値基準を与え、世の中がお金が儲かるほうに向かってまとまっていたと言います。

 しかし、前半戦でも出たように、お金を持っていることが“しあわせ”とは限らないことに世界が気付きはじめています。その原因は「お金が交換価値という意味以上の役割を与えられはじめたから」と矢野氏。経済でもテクノロジーでも、結局“信じる”ことにはジレンマがつきまとうと言います。では、“信じる”とはどのようなことなのか?

 ここで瀬戸内寂聴氏秘書の瀬尾まなほ氏が、新たな答えを提示します。それは自分自身を“信じる”こと。
 瀬尾氏:「自分の感覚・好奇心にそのまま従うというのが“信じる”ということ。いいことも悪いことも、自分の思うように生きるということが自分を“信じる”ということだと思う。」

 なにを“信じる”かを決めるのは自分自身であり、もしその選択が間違っていたとしても受け入れる。誰かの判断基準に身を委ねるのではなく、まず自分を信じ、受け入れることが“信じる”ことのジレンマを解消してくれるのかもしれません。

一番の“しあわせ”の種は笑うこと?“しあわせ”を巡る議論の結末は?

 「僕は腸内細菌………まあ、うんこの研究をしてるんですけど…」という衝撃的な言葉から始まったのは、鈴木氏による体のコンディショニングと“しあわせ”の関係について。
 「体の調子がいいと無条件で“しあわせ”じゃないですか?」というように、体の健康と“しあわせ”の関係について話しはじめます。
 それに対して山極氏がジャングルでの体験を例に、情報ではなく五感でつながることの大切さを、矢野氏が身体的な感覚の共有の大切さを訴えます。体がシンクロすることで、気持ちが伝わり、共感されていくと矢野氏は言い、“しあわせ”は伝染していくという可能性が示唆されました。

 その一方で、ヤッホーブルーイング代表取締役社長の井手直行氏からは心の健康の大切さが語られました。自身の会社で30分の雑談を取り入れていることを例に、人間関係の円滑さが“しあわせ”のひとつのポイントだという話も。
 “信じる”ことの“ふしあわせ”という話とは対象的に、またしても人と人の関わりの大切さが提示されましたが、この帰結として最後に話題に上がったのが、笑顔の話。

 瀬尾氏:「瀬戸内はよく悪口も言うが、豪快に笑いながら話すのでどこか憎めない。天台宗の教えに和顔施(わがんせ)というものがある。これは笑顔でいれば相手や周りも気持ちよくなってくるという教え。瀬戸内は“しあわせ”は笑うことと言っている。」

 鈴木氏:「サッカー選手になりたいと思ったのは、初めてゴールを決めたときに母親が笑顔になったことがきっかけ。誰かが喜んでいることがうれしくて頑張って、それを見てまた喜んでくれる。それが“しあわせ”なのかな、と思いました。」

 瀬尾氏:「誰かのためという前提での自分の行いは人を“しあわせ”にするけど、それが返ってきて自分も“しあわせ”にする。誰か大切な人がいるということは自分の生きる指針になる。」

 井手氏:「最初はお金のために働いていたが、いまはビールを飲んで“しあわせ”になってくれる人がいるのがなによりも楽しい。」

 山極氏:「大阪人は笑いを取らないと気がすまない性質の人が多い。笑いを取ることは大きな意味がある。自分が笑って、相手を笑わせるという文化が日本にはあると思う。」笑ったり笑わせたりという行為には、人生を前向きに捉えたり、人との共感を大事にしたりという、これまで話してきた“しあわせ”の種がたくさん含まれています。自分だけが笑うのではなく、いいことも悪いことも相手と共有して笑い合うために行動することが“しあわせ”につながっていくのかもしれません。

 しかし、井手氏に「笑いながら悪口を言われるのは傷つかないもの?」と聞かれ、「すごく傷ついている」と答えた瀬尾氏。笑っていても悪口はほどほどにしておいたほうが無難なようです…。

 長いようで短い、まさに予測不能な議論もついに終わりを迎えます。最後は、京セラ研究開発本部の京本 政之からの挨拶で締められました。
 京本:「特に私が大事だと思ったのが、山極さんのおっしゃっていた、動いて募って語り合ってのような相互作用をお互いにしながら共鳴し合い、その共鳴その物に幸せがある…という部分を我々は続けていきたいと思いました。今回のような共鳴し合う場をこれからも提供し続けていくので、よろしくお願いします。」

 今回の議論が予測不能な展開を見せたように、“しあわせ”というものは人それぞれの気持ちに左右されるもので、一概に定義はできないもの。しかし、人が集まり、共感し合うことで、結果的に“しあわせ”が生まれていくのかもしれません。
 議論と興奮と、そして“しあわせ”が生まれる「異種格闘技戦」に、ぜひ今後もご期待ください!