THE NEW VALUE FRONTIER
OIA Open Innovation Arena
  1. Home
  2. オープンイノベーションアリーナ
  3. Event
  4. 「異種格闘技戦'19」技術は人類の超進化をどこへ導くのか?!

オープンイノベーションアリーナ

「異種格闘技戦'19」技術は人類の超進化をどこへ導くのか?!

京セラ株式会社は2019年7月、横浜みなとみらいに新拠点「みなとみらいリサーチセンター」を開設。そのオープニングイベントとして、パネルディスカッション「異種格闘技戦 技術は人類の超進化をどこへ導くのか!?」を開催しました。

白熱の舌戦の模様(動画)はこちら


なぜ今回のテーマ「異種格闘技戦 技術は人類の超進化をどこへ導くのか!?」を選んだのでしょうか。「このテーマを扱うことは京セラの使命」だと稲垣は言います。

「昨今、『シンギュラリティ』や『AIと倫理』が話題になっています。京セラで働いている私たちは、『人間として何が正しいかを判断基準にする』と弊社創業者の稲盛和夫から徹底的に叩き込まれている。だからこそ、いまや人とテクノロジーは切っても切れないという点を理解した上で、我々がやらなければ誰がこのテーマを扱うんだという使命感を感じました」(稲垣)

今回は各界を代表する方々がパネラーとして登壇しました。『アイデアは交差点から生まれる』『発明は既存のものの組み合わせ』とはよく言われていますが、どんな化学反応が起きたのでしょうか。イベントの模様をお伝えします。

サイエンスから映画まで、各界の重鎮が集った「異種格闘技戦」

パネルディスカッションに参加するパネラーは、いずれも各分野の第一線で活躍している方々ばかりです。

【パネラー】
金出武雄

●金出武雄

カーネギーメロン大学 ワイタカー冠全学教授、理化学研究所革新知能統合研究センター特別顧問、2016年 京都賞先端技術部門受賞

押井守

●押井守

映画監督、アニメ原作者、小説家、脚本家、劇作家、ゲームクリエイター、東京大学大学院講師

北野宏明

●北野宏明

ソニーコンピュータサイエンス研究所社長、沖縄科学技術大学院大学教授

下條信輔

●下條信輔

カリフォルニア工科大学教授

大関真之

●大関真之

東北大学大学院情報科学研究科 応用情報科学専攻准教授

稲見昌彦

●稲見昌彦

東京大学大学院情報理工学系研究科教授 JST ERATO 稲見自在化身体プロジェクト研究総括

【レフェリー】
稲見昌彦

●對馬淑亮

国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT)


今回のパネルディスカッションの最大の特徴は、下記のルールに従うことです。

【ルール】
1.空気を読まない
2.発言を控えない
3.レフェリーには従う(必ずしも公平とは限らない)

一般的なパネルディスカッションとは異なり、円卓を囲んだパネラーが自由闊達な雰囲気で、各々が意見を出し合うためのルールは、まさに“異種格闘技戦”といえるでしょう。

まずは「あと100年生きられたら(生きなければならなかったら)何をしますか?」というテーマのアイスブレイクからスタート。興味深い意見の連続となりました。

「昔から5、600年は生きようと思っているので、とりあえず科学的発展をする人工知能を作りながら老化の研究をして300年生きるようにする。その後、もう一回死なないための研究をしたらおもしろいんじゃないかと思います」(北野氏)

「100年も生きたくない。映画も人生も同じで、『なにやりたいか』ではなく『どうやって終わらせる』かが重要だと思うから。前向きな考え方ではないが、いろんな終わり方を眺めていたい」(押井氏)

イベントスタート早々に起きた独創的な発想の応酬に、会場からは感嘆や驚嘆の声が漏れます。

議論テーマ1「拡張後の空洞化にヒトはどう対処するのか?」

アイスブレイクが終わり、最初のテーマ「拡張後の空洞化にヒトはどう対処するのか?」というパネラーが戸惑うほどの難解なテーマが出題されます。

大関氏は「拡張」について、ゲームにおける拡張現実に置き換えてこう発言します。「ゲームに没入すると、現実との境目がなくなっています。最近のゲームは“痛みの代替物”をどのように表現するかを必死に考えている。現実で体感しなくても、『こういうときにはこう判断するんだ』と学習できるわけですから」

下條氏は戸惑いながらもインターネット空間の自身の感覚の差異を例にあげます。「空洞化の定義は非常に難しいですが……例えばグルメレビューサイトの評価と自分の評価が違う時、人はどうするか? 本来、自分は美味しいと思っていても、他者と評価を埋めるために、自分の味覚がおかしい、つまり、自分の判断を修正してしまう習性があります」と述べると、金出氏が「空洞化」とは「人間の退化」ではないかと指摘します。

「テクノロジーの進化とともに人間の機能は拡張してきました。しかし、生物本来の能力で原始人と比べると、現代人の運動能力は明らかに下がっている。モノを修理する力もありません。ある意味退化していると言える」(金出氏)

例えば、AIが普及していくと、人間は考える機会が減っていくかもしれません。そうなると、金出氏の発言の通り、人間の脳も退化していくかもしれません。

議論テーマ2「様々な課題・問題が瞬時に解決される時代、課題や問題がなくなった社会で生まれる新しい価値とは?」

続いての議題では、進行を務める對馬氏から「様々な課題・問題が瞬時に解決される時代、課題や問題がなくなった社会で生まれる新しい価値とは?」というテーマが伝えられた途端、すべてのパネラーが「課題がなくなることはない」「そんな時代はこない」とぶった斬りました。そんななか、稲見氏は課題・問題の解決・創造を漫才で例えます。

「このテーマは研究者やクリエイターへの議題としては不適切だと思います。なぜなら私たちは課題・問題を作る側だからです。問題を解決するのがツッコミで、作るのがボケだとすると、研究者は最初、ツッコミから入るのですが、一人前の研究者になるためにはボケないといけません」(稲見氏)

押井氏も「いい映画はみんなボケている」と語ります。

「『この映画のテーマやメッセージはなんですか?』と取材でよく聞かれますが、それが簡単に言えるなら映画は作っていない。ツッコんでほしいから作ってるんです。話題になる映画はみんなわかりやすい「ツッコミ」の映画だけど、その先に繋がる“何か”がない。だから自分はボケ続ける」(押井氏)

北野氏は課題を作るために、自身が期待する「新しいサイエンス」について語りました。

「毎朝ガンガン法則を出してくるけど、人間に理解できない法則をAIに出してほしい。世の中の形態すべてを人間が理解できる保証はまったくない」(北野氏)

新しい発想はいつ生まれる?観覧者からの質問にパネラーが回答

第二部では、事前にイベント観覧者から集めた質問に対してディスカッションを行いました。

「なぜ私が研究をするか・映画を作るか」

「なぜ私が研究をするか・映画を作るか」という問いに対して、金出氏と押井氏はこう答えました。

「人の役に立ちたいというのもあるし、自分の趣味でもあるから。あとは人よりも勝ちたいという競争心かな」(金出氏)

「映画を作るが先にきて、何をテーマにするかは後。映画の制作は手段ではなくて、ただおもしろいからやっているんです。」(押井氏)

新しい発想はどんなときに生まれる?

「新しい発想はどんなときに生まれる?」といった素朴な質問も挙がり、金出氏は「少なくとも30日以上考え続けた時」と答えました。さらにここでも、パネラーたちは「シャワーを浴びているときにアイデアは思いつかない」という意見で一致。

その中で、下條氏は「『どうやったらいいアイデアが生まれるか』や『どうすればノーベル賞を取れるか』という発想を排除したときに、良いアイデアは生まれる」とも答えました。 その他、具体的なシーンとして押井氏、大関氏、北野氏の3名からは「人と喋ってるとき」という意見も。

「冗談や馬鹿話、いい加減な話をしているときに、それがとっかかりになって、無意識に準備していたものが芋づるしきに出てくる。ストーリーのファーストシーンからラストまで繋がるときもある」(押井氏)

「論理的に説明しないといけないから、喋っている最中に『あ、わかった』という経験はある。だから僕はパワポが嫌いなんです。論理的じゃなくても、なんとなく通じるじゃないですか」(北野氏)


パネルディスカッションの最後は京セラ研究開発本部メディカル開発センター長の吉田真の言葉で締められました。

「心に残ったキーワードは『発想する時にシャワーはダメだ』です(笑)。というのは冗談で、今日は頭が活性化されました。今日のパネルディスカッションのように、さまざまな方々と一緒にオープンイノベーションを進めていければと思うので、京セラとなにかに挑戦してみたい方を探しています」

京セラ株式会社研究開発本部長の稲垣正祥がみなとみらいにリサーチセンターを開設した思いについて、こう語りました。

「みなとみらいはこれから新しく始まる土地。そのみなとみらいで勇気・希望・絆という心の繋がりをベースに、新大陸を目指す船がこのリサーチセンターのコンセプトです」

最後は入り乱れてのバトルロイヤル≪懇親会≫

最後は懇親会が行われ、皆さんでヤッホーブルーイングさんのよなよなエール片手に先ほどまで行われた舌戦に対しての余韻を楽しむひとときがありました。

京セラがみなとみらいに新拠点を置いた目的のひとつが「オープンイノベーションの推進」です。横浜市は行政が主体となり、オープンイノベーションを推進しています。みなとみらいでは大企業の本社やR&D(研究開発)施設、関内ではベンチャー企業の集積に力を入れています。大企業とベンチャー、個人など垣根を超えたオープンイノベーションが横浜で繰り広げられています。今回のイベントではそのとおり垣根を超えた様々なジャンルの人たちが交差し、その時々に意見を戦わせることで驚嘆・感激・その他さまざまな感情が生まれ、見ている人々を引き込みました。京セラはこれからもこのような取り組みを続け、多様性のある中で共感を生み出し、イノベーションを起こしていこうと未知なる海へ繰り出す姿を見ることができるイベントでした。