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【連載:第2弾】そもそもお金とは?変わる価値観と新時代のコミュニティ

 10月14日(金)、「京セラみなとみらいリサーチセンター」で第4回「異種格闘技戦’22」を開催しました。これまで、「テクノロジー」「社会(デザイン)」、そして「しあわせ」をテーマに、各界のエキスパートたちが激論を交わしてきたこのイベントですが、第4回となる今回のテーマは「お金」。現代の資本主義社会において、ある意味では最も重要な要素となるお金。一方で、お金に縛られる生き方を疑問視する声も聞こえてきます。
 さまざまな業種、業界から選出されたパネリストたちが、「お金ってなんだ!?」をテーマに、予測不能のトークバトルを展開。まずは、前半戦の様子をご紹介していきます。

お金の仕組みと、お金に依らない幸せ

 第4回となる今回の「異種格闘技戦‘22」は、人気のモンスターバトルゲーム、あるいは動物の友達を増やすあのゲーム、といった様相でパネリストの紹介を兼ねたオープニング映像でスタート。趣向を凝らした演出もさることながら、それぞれのキャリアや、領分を象徴するかのような各パネリストの「お金感」が非常に印象的なオープニングとなりました。

 今回レフェリーを務めるのは、日本経済新聞社で記者・コラムニストとして活躍する中山淳史氏。その中山氏がまず話を振ったのは、東京大学大学院で教授を務める渡辺努氏。昨今の世界情勢や、物価高、円安などに触れつつ、お金とは何か、について意見を求めました。
 渡辺氏は、大前提として根本的にお金には価値がなく、価値があるとみんなが信じることによって価値が生まれるという、貨幣経済を支える信用創造の仕組みについて語りはじめます。その上で、中山氏の質問に答える形で、現在の円安や物価高の上昇がいつまで続くのかについて予測を話してくれました。

 渡辺氏:「今、コロナが収束しはじめているという結構大きな変化が起きています。 過去にはスペイン風邪やペストなんてものがありましたが、大きな疫病のあとには社会が混乱するわけです。100年前とは医学の進歩が違いますが、それでも数年単位でこういう状態が続くのではないかと。」
 この世界情勢の変化のあおりを最も受けているのでは?と中山氏が次に意見を求めたのは、元・朝日新聞社で現在はフリーランサーとして活躍しながら、節電生活を送る稲垣えみ子氏。

 稲垣氏:「正直なところ、円安とか物価上昇とかなんの影響もないんですよ。しいて言えば、170円くらいだった電気代が200円を超えてきたことですね。」と、節電を心がける稲垣氏は、予想に反して特に影響を受けていないと語ります。というのも、自身の生活が「常時災害生活」であり、エネルギーやお金に依存しない生活を送っているからとのこと。
 未来が不確定な中で、お金に関係なく幸せに生きられるやり方を持っていたほうが現実的に良いと考えているそうで、自分が与えた分がいずれ返ってくる、お金を使わないエコシステムを作り上げた、とも語ってくれました。このお金以外の拠り所が今後の話のキーになってきます。

物質からの解放と、人間との関係性という価値の誕生

 ここからは、お金がテーマながら、「お金以外の価値観」について各々が語っていく展開に。
 まず、話を振られたのが、法政大学人間環境学部教授で、食と排泄について研究している湯澤規子氏。湯澤氏は「渡辺先生のお金の話を、全部『ウンコ』に変換して聞いていたんですよね…」と会場の笑いを取りながら、自身が研究する「ウンコ」を例に、お金の循環について話しはじめます。

 湯澤氏:「江戸時代にはウンコが物々交換をできる物質として価値があって、これは現代でも信頼関係を元にしたお金を介さない物々交換のような物質の循環というものにも通ずること。大きな物質循環の上に、資本主義社会があるのではと考えています。」
 あくまで人間は身体を持っていて、どんなときでも食べて出さなければいけない。そういう物質の循環は、仮想空間がどれだけ発達してもなくならないと話します。
 クラスター株式会社CEO加藤直人氏:「情報化社会が進んでも、食事や排泄というものはインフラとして残らないといけないですよね。飢餓や疫病といった問題は、ある程度は解決されてきました。次のアジェンダとして『幸せ』がありますが、その『幸せ』が今はお金や物質に紐づいているものになっている。」
 加藤氏は物質的な部分で残さなければいけないものはあるものの、自身が手掛けるメタバースなどを例に取り、物質から開放される世界観が広がっていると語ります。
 その一例として、あるオンラインゲーム内で、バーチャル上の衣装が年間40億ドルを売り上げていたり、某人生をテーマにしたゲームの令和版では 成功指標がフォロワー数になっていたりすることなど、具体的な話が挙げられました。

 渡辺氏:「メタバースではいろんなものがとにかく無料で提供されていて、自分のやりたいことがそれでできてしまう。そうすると貨幣というものにこだわりが無くなって、無くても良いかもとなるみたいで、そういった新しいコミュニティができているんです。」
 加藤氏の話を受けて、渡辺氏は貨幣経済と非貨幣経済が世の中にはあり、現代では非貨幣経済へのウェイトが大きくなっていると言います。そこでは、「いいね」やフォロワーが基準になり、人間の関係性のようなものに強い人がお金のように価値を持つようになっていると考えているとのこと。
 デジタルの進化、そして新型コロナウイルスなどの影響により、価値を求めるものが大きく変わり始めていることを、パネリストそれぞれが指摘していました。

 続いて口火を切ったのは、住友生命保険相互会社上席執行役員の藤本宏樹氏。自身が好きだという実業家・松岡正剛氏の言葉を紹介しつつ、コミュニティの変化について話しました。
 藤本氏:「昔の日本人はお金を稼ぐ『かせぎ』と、地域のコミュニティで役割を果たす『つとめ』があり、両方できて一人前とされていた。それが『かせぎ』ばかりになっていったが、今は『つとめ』を果たして幸せを見つけるという変化が起きている。」

 それに対し、稲垣氏は自身の生活が『つとめ』に近いと語ります。稲垣氏はライフラインの一部を自分の住む町に頼っている部分があるとして、自分の家をメンテナンスするように、町をメンテナンスしなければならないという意識があると言います。
 サービスを受けるだけでなく、笑顔を交わしたり雑談をしたりすることで、地域との関係性を構築していく。「自給自足」というと閉じられた印象を受けるが、実際は人とつながる暮らしなんだと持論を展開しました。
 こうした人とのつながりが、冒頭で出た関係性がつながってできるエコシステムの構築へとつながっていったのでしょう。

 加藤氏は、デジタルの世界でも『つとめ』があるとして、SNSの「欲しいものリスト」を例に、なにかいいことをしたら、欲しいものが贈られてくる、という助け合いの輪でつながるコミュニティがすでにできていることを指摘します。
 さらに、メタバースなどのバーチャル空間の中で、空間やアバターをお金稼ぎ以外のモチベーションを持って作る人たちが生まれていると、デジタル空間の現状を語ります。プロが作ったものではないものを共有し、楽しみ、人とのつながりが増えていくことをモチベーションとして、さまざまなデジタルの価値が生まれていると話しました。

 白熱したトークも、前半戦はここまでで終了。お金というものの基礎知識からスタートしたものの、いつの間にか、お金に変わる新たな価値や可能性について語り合う展開となりました。過去の異種格闘技戦でも物を持つことの価値が揺らいでいるという話は出てきましたが、やはり、現在の紙幣=お金をベースとした大量生産大量消費という時代は変化しようとしているのかもしれません。
 後半戦では、さらにデジタルの部分を掘り下げ、新しいお金の形について、白熱したトークが続いていきます。次回もぜひお楽しみに。