【前半戦】音楽、将棋、宗教―異種格闘技戦'23が探る未来、AIとの共創で何が生まれるのか?
11月2日(木)、「京セラみなとみらいリサーチセンター」で第5回「異種格闘技戦’23」が開催されました。これまで、「テクノロジー」「社会(デザイン)」、「しあわせ」、そして「お金」をテーマに、各界のエキスパートたちが激論を交わしてきたこのイベントですが、第5回となる今回のテーマは「AI」。
AIが人間の幸せや愛にどのような影響を与えるのか、AIが仕事を奪う可能性や技術の進化が心や感情に与える影響について議論が展開されました。
目次
今回の異種格闘技戦のテーマが「AI」であることから、本記事の録画データからの文字起こしを生成AIに読み込ませ、
生成AIによって作られたものを元に、編集部が手を加えて作成しました。
どうぞ記事でも人間とAIのコラボレーションをお楽しみください。
パネラー:
株式会社エクサウィザーズ 執行役員 Chief AI Innovator 石山洸
キュレーター 弘前れんが倉庫美術館 副館長兼学芸統括 木村絵理子
脳科学者 茂木健一郎
東京大学名誉教授 東京大学先端科学技術 研究センター前所長 神﨑亮平
AR三兄弟 長男 川田十夢
横浜みなとみらいホール館長 東京芸術大学客員教授 新井鷗子
レフェリー:
フリーアナウンサー 渡名喜織恵
会は京セラ株式会社研究開発本部本部長、仲川の冒頭挨拶より開幕しました。AI進化と安全性への疑問から、異種格闘技戦'23のテーマは「AIと書いて愛と読む」と説明しました。技術が人の幸せに貢献する未来を議論し、ChatGPTで作成された挨拶文を通じて、言葉の捉え方にも触れました。
今回レフェリーを務めるのはフリーアナウンサーの渡名喜氏。「ルールはございません。相当なご流血ですとか、場外乱闘にならない限りはこのゴングは鳴らないかと思いますので、皆さん熱くトークバトル繰り広げていただければと思います」の音頭から、序盤からメラメラ燃えている茂木氏が「今日はタイガー・ジェット・シン譲りのストロングスタイルで行くから!」と冗談を入れて前半戦がスタートしました。
身体知の進化:AIの影響で人間が新たな次元へ
新井氏は、AIの活用によって個から生まれたものがユニバーサルになっていくことが期待されていると述べました。会場では「誰でもピアノ」という製品を紹介し、脳性麻痺の女の子がピアノを弾く夢を叶えるための製品であることを披露しました。このピアノは、右手だけで引くと、ピアノの伴奏が人間に合わせてついてきてくれるという特徴を持っています。現在は高齢者の認知機能低下の予防など、介護福祉の分野でも活用されています。
その後、登壇者の皆さんはAIによって人間が進化していくことを話題に議論が展開されました。
新井氏は、ラフマニノフ作曲のピアノ協奏曲三番を例に取りながら、「誰かが弾けるようになると、世界中のピアニスト全員が弾けるようになる」という共有の経験が人間の特性であるとの考えを示しました。他にも、フィギュアスケートでの4回転半ジャンプの例を挙げ、一人ができるようになると他の人も真似するように、人間は結局見たものを真似する能力があると語ってくれました。
その後、音声合成のボーカロイドに焦点を当て、「人間が到底歌えないような音をボーカロイドで作ったら、人間がそれを真似して高い声で超絶技巧の歌を唄えるようになる」ことから、これによりAIが新しいことを成し遂げた場合、人間はそれを真似することで進化していくのではないかという流れを示唆しました。最終的に、AIができたことを人間が真似すると、人間の身体知も拡張していくと結論づけました。
AIとの頂上対決で輝く藤井総太の本質的な才気
ここからは、AIの進化によって「語学力」「記憶力」など、かつて「学力」と言われたものの価値がなくなるのかについて各々が語っていく展開に。
まず口火を切ったのは、将棋界の藤井聡太の強さについて触れた茂木氏。人工知能(AI)が将棋において人間を凌駕している現状を指摘しました。しかし、彼は藤井聡太の強さに独自の見方を示し、その藤井の特異性に注目します。八冠がかかる最後の将棋戦で藤井総太が負けているにもかかわらず、相手をなよらせてしまう強さについて議論しました。
石山氏は、将棋の魅力について、一つとしては必勝法を観戦者も含めて全員で考えているという、集団的な心理戦として展開されていると説明しました。もう一つとしては、将棋には文化的な側面があり、金や角、飛車等の駒の価値を大切にすることで人間が持つ文化的な要素が浸透していると指摘しました。
「花道とか、茶道とか、剣道とか全部含めて、長年その道みたいなものをやってる人と、そうじゃない人と何が違うのかっていうのを調べたら、「何が良かったですか」っていうのに対して「大切にする」っていうキーワードを答えている人が多いのがわかったんですね。それはいわゆる、剣道着を大切にするとか、スポーツ相手に勝つために健康大切にするとか、自然を大切にするとか入ってくると思うんですけど、ということは将棋を通じて駒を大切にするということを学びながら、文化を大切にするということを学び、「大切にする」ということ自体もラーニングしてたみたいな話がありました。」
石山氏の話を受けて、川田氏は将棋においてAIの計算速度が人間の思考を凌駕していることや、対戦中の独自の心理的な変化について言及しました。
「僕も羽生さんと対談した時に一つ聞きたいなと思って、あの人って自分は勝ったって分かった後の人差し指が震えるっていうじゃないですか。あの感じが日常生活に、例えばミステリーを見てて、犯人だと分かったらリモコンを持つ手が震えるのかなと思って聞いたら、「そんなことないです」と答えられました。特殊なエンジンっていうか、思考が何倍にもチートしているらしくて、その思考は日常生活ではやはり捉え合わないらしいですね。対戦中はやはり違う回転数みたいですね。」
それについて神﨑氏も「僕は実験屋さんですけど、なんかすごいデータが出た時って震えるよね。」と共感を示しました。神﨑氏は技術の進化により昆虫の動きまで再現可能になってきたが、全てを再現することが難しいと指摘します。データやパラメーターの変動が大きすぎて、ある程度までしか再現できないと述べ、茂木氏もマインドアップローディングに対しても慎重な見解を示しました。
宗教的経典とAI解釈の未来
続いて、石山氏とその仏教への探求心がクリエイティブな視点で浮かび上がりました。
石山氏は、髪が薄くなり「お坊さんみたい」と言われ、仏教に興味を持った経緯を述べました。日本の仏教において自力と他力の対立があり、それを統一しようとしている話をしました。法華教の異なる視点からの理解や、生成AIを活用して法華経の理論を統一しようとする取り組みを説明しました。仏教の難解な命題や音楽における指揮者とオーケストラの関係になぞらえ、仏教の統一に挑戦している状況を紹介しました。それに対して茂木氏は、物理学者の望月新一や宇宙際タイヒミュラー理論の難解さに触れ、新しい概念帯域が生まれ理解者が増える歴史の繰り返しを考察しました。
神﨑氏は宗教的経典のAI解釈への興味を示し、「生成AIが自己から離れることができるのかという点に興味あります。空海の密教が今、仏教で一番上だってよく言われてるんだけど、本当にそうかどうか、そのあたりってすごく興味あるので是非進めてほしいなと思っています。」これは、宗教や空海の教えにおいても重要なテーマであり、自己の超越や宇宙意識の探求に関連しています。
石山氏はAIを活用して自身の「現代の空海」としてのウェルビーイングを測定していることを明らかにし、AIが自己の枠を超える手助けとなる可能性を強調しました。
この討論会では、宗教や空海についての考え方や役割について熱い議論が交わされました。参加者たちは、AIの進化や人間の本質との関係についても議論しましたが、宗教や空海についての討論は特に感銘を与えるものでした。異なる分野の専門家たちが集まり、多角的な視点からの討論が行われたことは、今後のAIの発展においても重要な示唆を与えるものと言えるでしょう。
編集部後記:
「異種格闘技戦’23」のテーマは「AI」であり、今回の記事作成において編集部はAIを導入してみました。前半戦の1時間の議論を通じてAIで論点を引き出そうとした結果、20~30もの興味深いテーマが浮かび上がりました。しかし、これらから具体的な記事を構築する際には、「どの論点を選ぶか」という選択に苦しむこととなりました。最終的には、議論を振り返り、最も印象深かった三つのテーマに焦点を絞ることとしました。このプロセスから、「要約」において、人間とAIの違いや相乗効果についてどのように捉えるべきかと考えさせられました。