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【イベントレポート】未来を切り拓くヒントがここに!イノベーションの極意を語るBAK Seminar Day#10

2024 年10 月 10 日、OiA の新人編集部員として、みなとみらいリサーチセンターで開催された神奈川県のビジネスアクセラレーションプログラム「BAK」のイベント、セミナー「イノベーションの極意」に参加しました。今回のセミナーには、今注目の、起業家精神を教育現場に広める活動を行っている伊藤羊一氏と、パラレルキャリアエバンジェリスト常盤木龍治氏が登壇されました。

お二人の話は、単なる経営論やテクノロジーに留まらず、人生の選択肢を広げ、前向きに生きるためのヒントも多く含まれていました。ただのビジネスセミナーとは一線を画す深い内容でした。

目次


    未来を創る力——アントレプレナーシップが拓く新しい可能性」

    伊藤 羊一氏 プロフィール

    武蔵野大学アントレプレナーシップ学部 学部長

    ・ Musashino Valley 代表

    ・ 元 Yahoo! アカデミア学長

    ・ Voicy パーソナリティ

    起業家精神の普及に尽力し、数々の教育・支援プロジェクトを推進



    「未来を予測する最良の方法は、それを創ることだ」。講演の最後、伊藤羊一氏が引用したアラン・ケイの言葉が、会場である白基調のオープンイノベーションアリーナに響きました。しかし、この言葉が単なる理想論に終わらない背景には、伊藤氏自身の経験と考え抜かれた哲学がありました。

    武蔵野大学アントレプレナーシップ学部の挑戦

    伊藤氏が武蔵野大学で立ち上げたアントレプレナーシップ学部は、日本初でオンリーワンの試みとして、学部の立ち上げから各科目の設定や先生の選定、寮の運営など大変な苦労があったと、さまざまな逸話をもとに紹介されました。

    失われた 30 年——その原因と突破口

    伊藤氏は、日本が「失われた 30 年」と呼ばれる経済停滞を迎えた背景に、人口減少やテクノロジーの活用の遅れがあると指摘します。1995 年、Windows 95の登場と共に始まったインターネットの民主化 「インターネット元年」。この時期アメリカでは、インターネットの可能性を見出し、個人の妄想を形にするアントレプレナーたちが次々と登場し、Facebook や Twitter などのテックジャイアントを生み出しました。

    Amazon は「インターネットで注文したものが届くようになったらいいな」と思ったことから始まったし、Twitter は 140 文字で世界中の人と情報交換できたらうれしいなみたいな妄想から始まっていることが紹介されました。

    対して、その頃の日本の企業では会議を開いて「なんでも自由に言ってくれたまえ」から始まるものの、誰かが 140 文字で世界中の人と情報交換できたら超最高にうれしいなんてアイデアを言った途端に、「 140 文字で表現できるわけない」とか、「しかもどうやってビジネスにするんだ」というような、否定される状況が容易に推測できます。この「否定の文化」が、挑戦する力を奪い、新たなサービスやエコシステムを育てる機会を失わせたとも考えられます。

    対話から生まれる新たな価値

    現在、AI や ChatGPT などのテクノロジーは再び世界を変えようとしています。従来もインターネットの大企業は様々なインターフェースで AI を活用していたが、ChatGPT の登場により AI が民主化されたという状況の中、伊藤氏が強調するのは「技術そのものではなく、人との対話の重要性」です。「正解がない時代だからこそ、個々人が対話を通じて気づきを得ることが、社会を進化させる鍵になる」と伊藤氏は述べました。

    たとえば、武蔵野大学でもアントレプレナーシップを教えられない。授業や寮の場で学生同士が対話する仕組みを重視し、その上で対話の中から自分で気づいていく、一人で抱えるアイデアを他者と共有することで、新しい価値を生み出すサイクルを育てているということでした。

    失敗を恐れないマインドセット

    伊藤氏の講演で特に心に残ったのは、「失敗を恐れないこと」の重要性です。「最初に自転車に乗る時も、野球を覚える時も、失敗を繰り返して初めてできるようになる。それなのに、なぜ仕事になると失敗を許さないのか?」。この問いかけは、会場にいた多くの社会人に新しい視点を与えたことと思います。

    未来を創るのはあなたの「譲れない思い」

    講演の中で伊藤氏は、「あなたの譲れない思いは何ですか?」と問いかけました。その思いを燃やし続け、行動に移すことが、アントレプレナーシップの核心です。そして、その行動の積み重ねが、正解のない時代に新たな未来を切り拓く力になるのです。

    この記事を読んでいるあなたの中にも、譲れない思いがあるはずです。それを形にする第一歩は、対話と行動です。「未来を予測する最良の方法は、それを創ることだ」という言葉を胸に、まずは周りの人と話してみませんか?その小さな一歩が、未来を創る力になるかもしれません。アントレプレナーシップは決して難しくはありません。

    データと行動が未来を変える——常盤木龍治氏が語るパラレルキャリアと DX の挑戦

    常盤木 龍治氏 プロフィール

    パラレルキャリアエバンジェリスト

    株式会社 EBILAB 取締役ファウンダー CTO CSO

    岡野バルブ製造株式会社 取締役 DX 推進本部長

    30 社以上の企業支援に携わり、企業の成長とイノベーションを推進

    沖縄の IT 産業発展に貢献し、地元経済の活性化を目指す



    「変化できる者が生き残る。」ダーウィンのこの言葉を引用した常盤木龍治氏の講演は、オープンイノベーションの本質と DX 推進における具体的な行動指針や事例で溢れた大変すばらしい内容でした。沖縄を拠点に、国内外で数々のプロジェクトを手掛けるパラレルキャリアエバンジェリストの彼が伝えたのは、イノベーションを起こす鍵は「行動」と「データ」にあるというメッセージでした。

    パラレルキャリアの本質——「組織は手段でしかない」

    「組織はあくまで手段であり、目的ではない。」常盤木氏の言葉は、従来のキャリア観に一石を投じます。沖縄在住の彼は、自身のキャリアの一環として観光産業や IT 産業を融合させた取り組みを展開。10 兆円規模の事業体を目指す中で、「自律型組織のリーダー」を育てることをミッションとしています。

    彼が示す未来像は、特定の組織に依存せず、それぞれが主体的に価値を創出する社会です。そのために必要なのは、「データ活用」と「動く力」だと言います。

    「DX とは、技術ではなく組織の課題だ」と断言する常盤木氏。某テーマパークでは、観光業がコロナ禍で大きな影響を受ける中、やるべきことよりも「やらないこと」を明確にする戦略を選びました。繁忙期にはメニューを絞る事により料理の提供速度を高速化、お客様を待たせる時間を削減。また、テラス席専門のクイックメニュー等も用意したり、近隣地域のキッチンカーを誘致しお客様に多様なメニューを提供しながら、繁忙期の食事難民を減らす工夫も。自前主義で自社リソースですべてを解決するのではなく、地域での“DX”を実現することで地場に目指したテーマパークのブランディングにもつながっています。さらには、接客や調理場や品出しなど、Z 世代の従業員には得意分野に特化し強みを活かすことで、働くことへのストレスを減らしつつも効率化と働きやすさを両立する改革を実現しました。

    その結果、給料を大幅に引き上げ、休園日を増やしながらも事業を持続可能な形に再構築しました。「DX の成功は、技術だけではなく、チーム 編成や報酬設計といった組織論にこそ本質がある」と語る彼の言葉には、リアルな現場経験に基づく説得力があります。

    新規事業の成功要因——「データなしにイノベーションなし」

    「データはイノベーションの貯金。」常盤木氏は、新規事業や DX の成功にはデータ活用が欠かせないと強調します。例えば、古い POS システムを使い続ける日本の飲食業界では、データ不足がビジネス改善の大きな障壁になっています。

    彼は、単なるデジタルツールの導入ではなく、データの活用方法やそこから得られる洞察を重視します。「簿記 3 級の知識を社会人の最低要件にするべき」と提言する彼の主張は、経理やマーケティングといった一般職のスキルアップが DX の土台になるという意識に根差していると見て取れます。

    常盤木氏が語るオープンイノベーションは、単なる技術共有ではありません。「パートナーと共にスイートスポットを見つけ、レベニューを共有する関係性を築くこと」が重要だと説きます。

    そのためには、「自社の都合を押し付けない」姿勢が不可欠です。企業間の協業では、柔軟な発想で「何ができそうか」を互いに出し合うことで新たな可能性が生まれると語ります。

    未来への問いかけ——「誰が笑顔になるビジネスか?」

    講演の最後、常盤木氏はこのように問いかけています。「ユーザー視点とパートナーへの尊重と愛情、誰が笑顔になるためのビジネスなのか? 自分の生き方なのか? を考えていただきながら、このデスバレーを超えていただけるような皆さんになってくれたら嬉しいです。」 この問いは、顧客視点を重視し、イノベーションが本質的に解決する課題を見つめ直すための核心に違いありません。

    この記事を読んだあなたも、「データ活用」と「行動」を意識することで、未来を変える一歩を踏み出せるかもしれません。常盤木氏が示すパラレルキャリアのあり方や DX の成功要因を、日々の仕事にどう活かせるか、一度立ち止まって考えてみてください。それが、新しい価値を生み出す第一歩になるはずです。

    編集後記

    お二人の話を伺い、浮かんできた言葉は「死ぬこと以外はかすり傷」「やってみなはれ」。
    何か変化を起こすには、とにかく行動することが大切です。しかし、ただやればいい、失敗してもいい、というわけではありません。大切なのは、そこからしっかり学び、仲間を作り、志を持ち続け、次にはその山を乗り越える力をつけることです。挑戦した者だからこそ、乗り越え方を身に着け、さまざまな方法を知っている仲間を増やしていく。その積み重ねが、イノベーションの扉を開ける鍵になるのかも知れません。

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