破壊的イノベーションが新市場を創る! 事例や戦略、その起こし方
IT技術の進歩によってさまざまな市場に変革がもたらされている現代においては、従来どおりの製品・サービスの質の向上だけでは企業が持続的に成長できない可能性があります。
そのような中、市場における従来の常識やルールを覆し、破壊することで新たな価値を提供する「破壊的イノベーション」は、今後の企業成長や事業の成功に必要なものとして大きな注目を集めています。
この記事では、破壊的イノベーションとは何か、そしてその種類や事例、それを生み出すための戦略などについて解説します。
目次
破壊的イノベーションとは
破壊的イノベーションとは、市場における従来のやり方やルールを覆して、破壊することで新たな価値を提供することを指します。これは「イノベーションのジレンマ」の著者であるクレイトン・クリステンセン氏が提唱した理論です。
これまでにない新たな商品やサービス、あるいは技術を市場に投入して、従来のビジネスモデルを根本的に変革します。
市場シェアがトップのリーダー企業は、“大切な顧客”を抱えており、その顧客の期待に応え続けなければなりません。しかし、一般的に新しい技術や仕組みはリーダー企業ではない新興企業などが生み出すケースが少なくありません。それらの企業によってイノベーションが起こると、リーダー企業はシェアを脅かされることになります。クリステンセン氏は、これを破壊的イノベーションと名づけました。
破壊的イノベーションの代表例には、携帯電話が主流の時代に登場したスマートフォンや、店舗に足を運ばずとも商品を購入できるネットショッピングの浸透などがあります。
破壊的イノベーションの中でも、特にデジタル企業が起こすものを「ディスラプション(ディスラプティブイノベーション)」と呼びます。ディスラプションは、日本語で「破壊と崩壊」を意味する言葉です。ディスラプションは市場を破壊し、崩壊させるほどインパクトの大きい破壊的イノベーションです。
持続的イノベーションとは
持続的イノベーションとは、既存の商品やサービスにさらなる付加価値を付けて、顧客のニーズに応えることを指す言葉です。すでにあるものに対して、顧客のニーズをくみ取りながら改善や改良を施していきます。
持続的イノベーションの例には、製品の高性能化や小型化、コストダウンによる価格の引き下げなどがあります。このイノベーションは、従来から日本企業が得意としているものです。
このイノベーションでは、すでに市場が形成されており、比較的低いリスクで高い収益を得られる可能性があります。その一方で、破壊的イノベーションによって市場破壊が起こった際に、事業の継続が困難になる場合もあります。
破壊的イノベーションが注目される背景
破壊的イノベーションは、近年大きな注目を集めています。IT技術の発展やグローバル化、ニーズの多様化によってビジネス環境がめまぐるしく変化している今、従来の製品やサービスの充実を図る持続的イノベーションだけでは、事業の継続や成長が困難になるケースも往々にしてあります。
持続的イノベーションを目指し製品やサービスの充実のみに重点を置いている企業は、新たな技術によって生まれる破壊的イノベーションに対応できなくなってしまいます。
そのような事態に陥らないよう、持続的イノベーションを狙い、既存事業の改善・改良を行いながらも、これまでに得た知見や培った技術を用いて、新たな事業に着手することも重要です。
「破壊的イノベーションは既存事業を脅かす可能性がある」と尻込みするのではなく、新たな価値の創造にチャレンジすることが、企業の持続的な成長には重要と考えられます。
破壊的イノベーションの種類
破壊的イノベーションには、大きく分けて2つの種類があります。ここからは、企業が成長し続けるために知っておきたい、2つの破壊的イノベーションについて解説します。
ローエンド型破壊的イノベーションと代表事例
ローエンド型破壊的イノベーションとは、既存の製品よりも主要な性能は劣るものの、それより安価な商品やサービスの提供を実現するイノベーションのことです。
既存市場で大きなシェアを確保しているリーダー企業は、高性能かつ高価格な製品を提供します。一方で、後発の企業は市場に低価格で簡便性のある商品やサービスで参入できれば、市場に変革をもたらせます。これがローエンド型破壊的イノベーションの仕組みです。
このタイプのイノベーションには、必ずしも高度な技術は必要ありません。すでにある商品を単純化・小型化できる技術があれば、ローエンド型破壊的イノベーションを起こせる可能性があります。
ローエンド型破壊的イノベーションの代表例に、格安航空会社があります。格安航空会社は、サービスを必要最小限に抑えながら、需要の高い特定の路線のみを提供することで低価格を実現しました。
高額な航空券を利用できなかったローエンド層向けの新たな市場を獲得した結果、次第に高額な航空券を利用していた層からも支持を得るようになりました。
日本では、ピーチ・アビエーション、ジェットスター、スプリング・ジャパンなどがこれに当たります。
アパレル業界においては、定番商品の大量生産やシンプルなデザインの衣類を大量生産するファストファッションが破壊的イノベーションを起こしました。大手メーカーや百貨店、ブランド品とは異なる価値を提供して、新たな市場を創出しローエンド層を獲得しています。
ファストファッションは世界的に支持されており、スペインのZARA、スウェーデンのH&M、日本ではUNIQLOなど、さまざまな国でファストファッションを提供する会社が誕生しています。
新市場型破壊的イノベーションと代表事例
新市場型破壊的イノベーションは、既存の市場で競い合う企業が重要視する顧客層をターゲットとしません。新たな価値基準に基づいた顧客層に価値を提案することで、新たな市場を創出していきます。
これまで消費のなかった「無消費」と呼ばれる状況を変革するイノベーションであり、このタイプのイノベーションを狙う企業は、既存市場を破壊するような新しいバリューを提供します。その上で、新たな市場を創造します。
新市場型破壊的イノベーションの代表事例に、iPhoneがあります。「画面に直接触れることで操作する」という、これまでの携帯電話にはなかったUI(ユーザー・インターフェイス)を採用し、幅広い層に浸透しました。
また、スマートフォンでは電話だけでなくカメラや音楽プレイヤー、ナビゲーション機能などを有しており、ビジネスメールの確認・送信も可能であるなど、1台で複数の役割を果たしたことも普及拡大につながったと考えられます。
加えて、スマートフォン用アプリケーションの開発も活発に行われるようになり、「アプリ市場」をも創出しています。
動画配信を行うNetflixも、新市場型破壊的イノベーションを起こしたサービスです。それまで、映画などはレンタルショップに足を運び、レンタルして自宅などで楽しむことが一般的でした。Netflixはこの価値観を破壊し、さまざまな映画や動画を、いつでも・どこにいても楽しめるようにしました。そして低価格で利用できるサブスクリプションという仕組みでサービスを提供し、多くの支持を得ています。
Netflixは、IT技術の進歩が実現を可能にした破壊的イノベーションの代表格です。現在、同サービスは全世界に多くのユーザーを抱えています。後にテレビ会社など大手企業も動画配信サービスを行うようになるなど、レンタル業界やテレビ業界にも変革をもたらしました。
破壊的イノベーションを生み出す戦略
破壊的イノベーションは、持続的イノベーションで地位を獲得してきた大企業には起こしにくいと言われています。
持続的イノベーションを重視してきた企業が破壊的イノベーションを起こすには、これまでにない新たな発想をもって事業開発に取り組むことが必要だからです。
新たな発想を生むには、事業開発の関係者以外を含めた「多様なメンバー」を集めることを意識したチームメンバーの選定が求められます。そのようなイノベーションが生まれやすい環境をつくりましょう。
加えて新規事業を考える際には、これまでの進め方と異なる戦略を練る必要があります。破壊的イノベーションでは、主要顧客には物足りないシンプルな機能になることが多く、リリース直後は持続的イノベーションで獲得した優良顧客を惹きつけない可能性があります。
ところが、はじめはシンプルな機能の製品に興味を示さなかった主要顧客も、破壊的イノベーション製品自体が改善・改良されていく中で、使い勝手や圧倒的なコスト差から次第に破壊的イノベーション製品に置き換えていくという現象が起こるようになります。そうして前述した代表事例のように、破壊的イノベーション製品が市場の中心になった例は枚挙にいとまがありません。
このような破壊的イノベーションを起こすには、これまで企業が目を向けてこなかった「無消費者」をターゲットに新規事業開発を進める必要があります。無消費者とは、ニーズがあるにもかかわらず、スキルや時間・価格など、何らかの要因によって消費しない人たちです。
無消費者が抱える「消費しない要因」を解消した製品やサービスの開発によって、新市場型破壊的イノベーションを起こせる可能性があります。
無消費者が見つからない場合には、製品やサービスの性能をこれ以上向上させても満足度が変わらない「満足過剰」に陥っている顧客を探しましょう。そうした既存の製品・サービスをシンプルかつ低価格なものに変更することで、ローエンド型の破壊的イノベーションを起こせる可能性があります。
破壊的イノベーションについての提案
ここからは、破壊的イノベーションを起こす事業アイデアのヒントをご紹介します。
コーネル大学の研究チームは、「エリンギ」によって制御される2つのロボットを開発しました。エリンギの菌糸体をロボットのハードウェアに組み込むことで、環境を感知しロボットが反応します。菌糸から発生する電気スパイクに反応し、歩いたり転がったりするのです。このようなロボットは、「バイオハイブリットロボティクス」と呼ばれています。未完成ではあるものの、将来的には自己修復や増殖ができるロボットや、生物の持つ機構で動くロボットとして期待されています。
生物が持つ運動能力やエネルギー効率の良さを活かし、より高性能なロボットを開発できれば、現在のロボット技術を根本的に変革する可能性もあります。ロボットに生物の機構を取り入れるという発想こそが、破壊的イノベーションを起こす事業アイデアのヒントの一例と言えます。
破壊的イノベーションの源泉
とはいえ、破壊的イノベーションを起こすためのアイデアに、単なる発想のみでたどり着くことは容易ではありません。そこで目を向けたいのは、世の中にあふれる「社会課題」です。
「なんとしてでも解決したい!」という社会課題に対してであれば、熱意を持って課題解決のための糸口を必死で探すでしょうし、それに比例して情報感度も自然と高くなるでしょう。
破壊的イノベーションを起こすには、単に新発見のニュースや新技術を追うだけではなく、前提として課題を見つけ、課題解決に対する強い意識と熱意が必要なのです。