オープンイノベーションアリーナ
logo-oia

地域エネルギーを育む情熱と、AIが拓く未来。テッちゃんの京セラのAEMS*¹運用現場訪問記

【テッちゃんプロフィール】

OiA 編集長、趣味は電車にプロレス、そして友達を増やすこと。好きな食べ物は「〇まや」ランチの明太子の食べ放題定食。でも大分値上げしちゃって最近ご無沙汰。好奇心旺盛で、面白いテーマに興味津々!定年後はピッツェリア開業を夢見る、五十ウン歳。

ど~も!お久しぶりです。テッちゃんです。突然ですが皆さん、鹿児島県日置市って知ってるかい?右にあるように鹿児島県は薩摩半島の西側。ちょうど桜島や鹿児島市の真西にある、人口4万5千人弱の小さな市なのだ。地方の衰退や過疎が大きな社会課題となりつつある今、こちらで大きな挑戦に取組まれていて、そこに京セラが一枚かんでいるという噂…。そこでは地域でエネルギーの地産地消に取り組む、京セラのAEMS*¹が使われているのだ!



*¹ 京セラのAEMS…Area Energy Management Systemの略。地域の再エネ活用を支える、小売電気事業者向けの全自動需給管理を主としたシステム。
▼こちらの記事もご覧ください
その需給管理、もっとスマートにできるかもしれません。電力事業の未来を支えるAEMS

今回インタビューに応じていただいたのはこのお二人なのだ!

 

ひおき地域エネルギー株式会社 電力販売事業部 奥 保成さん
その筋では有名な“泣く子も黙る”電力需給管理の鬼!
(京セラの人にそう見えるだけなのだwww)


太陽ガス株式会社 電力事業部 大重 郁也さん
太陽ガスで、先代の社長、現社長、そして地域のみんなを支えるナイスガイ。
電力の需給予測をエクセルでやっちゃう剛腕の持ち主!!

 


 こんにちは!いや~やってきました。鹿児島県日置市。空が高くて真っ青!気持ちいいなぁ。
 日置市役所に立ち寄ると、市役所前に立つ謎の施設の数々。電柱も周りに何本も立っていて、その電柱の周りに這っている電気配線の数が多い。下を見ると何やら看板が…。
 おお!これが地域内でエネルギーを配分する地産地消のエネルギー利用のためのマイクログリッド*²か。
 これを読んでいる皆さんのほとんどが、大きな電力会社から電気を買って使っているのだが、昨今は発電事業者と小売電気事業者が分かれて様々な電気が買えるようになってきたのだ。
(たとえばC〇エナジーとか、東○パワーサプライとか地域によって電気を買うところが選べるようになってきたのだ!)
 この流れは長距離送電におけるエネルギーロスや中東地域のカントリーリスク回避、そして各家庭への太陽電池の普及や様々な発電手法の効率改善等が進んで生まれたクリーンエネルギーが普及してきたためなんだって。
 そして最終的には様々な情報が公開され、それらの上でAIを使った発電量の予測精度が向上したことにより、各地域ができるだけ地域の電力で賄える部分は地域で賄い、不足分を電力会社から買うと言う事ができるようになってきたんだと。
 今まで大きな電力会社が担ってきた電力という重要なライフラインを地域が自分たちで担うムーブメントの奥底にはいったいどんな狙いがあるのか?この日置市で地域エネルギーの地産地消に取り組んでいる「ひおき地域エネルギー株式会社」の奥さんと、「太陽ガス株式会社」の大重さんを突撃して取材してみたのだ!!



*² マイクログリッド…特定の地域や施設において構築された独立した電力供給網のこと。

目次

    地域エネルギーの挑戦者たち:太陽ガスの情熱とAEMSが拓く未来

    テッちゃん:奥さん、大重さん、今日はよろしくお願いします!まず伺いたいのは地域エネルギー事業って、どんなきっかけで始まったのだ?一体、どんな地域の課題があって、この事業を始めることになったのか聞かせてほしいのだ!


    奥さん: はい、こちらこそよろしくお願いいたします。まず、ひおき地域エネルギー設立の主体となった太陽ガスの話からさせていただきます。太陽ガスの先代社長が、地域の過疎化や人口減少、少子化、そしてオール電化の普及によるLPガス需要の減少に強い懸念を抱いておりました。将来、この地域でのガス事業だけでは会社が立ち行かなくなると考え、電気も含めた総合エネルギー事業への転換が必要だという強い使命感があったのです。
    大重さん: 加えて、それまでのLPガス事業は中東情勢によって価格が乱高下し、国際的なエネルギー価格の乱高下の影響を強く受けていました。「元売りに全てを握られている」という状況から脱却し、新しい電気事業では自社で価格決定権を持ちたいという意図もあったのです。

    テッちゃん: なるほど、地域への強い危機感と、サステナブルな事業展開を見据えてのことなんだな。先代の社長さん、先見の明があったのだ。すっごーい!


    奥さん: ええ。2016年の電力小売全面自由化を控え、どうせ電気事業をやるなら自前で電源を持ちたい、そしてできれば再生可能エネルギーで、という方針になりました。  

    テッちゃん:その中で、最初は太陽光ではなく小水力発電*³に注目したと聞いたんだが、なぜ小水力だったんです?

    *³ 小水力発電…従来のダム建築による水力発電と比べ、農業用水路やため池を使い、簡便に発電できる「1000kW以下」の水力発電。


    大重さん: たしかに当時、太陽光発電はFIT*⁴の開始前後で急速に普及しており、さまざまな事業者が参入していました。そうした中で、先代社長は「自社としてどのような電源に取り組むべきか」を重視していたのです。


    *⁴ FIT…Feed-in Tariffの略。エネルギーの買い取り価格を法律で定める固定価格で買い取る方式の助成制度。

    テッちゃん:なるほど。でもなんで小水力?     

     

     

    大重さん: ドイツなどへの海外視察をした際に、太陽光は着手しやすい一方で、小水力は水利権や自治体、農業関係者など多くの利害関係者を巻き込む必要があり、開発には時間がかかる電源であると説明を受けました。しかし先代社長は、「水力は出力が安定した電源であることに加え、多くの関係者が関わることで地域との接点が増える。その関係者が将来的に電力の利用者にもなり得る」と考えたのです。その結果として、地域の中でお金や価値が循環する、いわゆる“地域内経済循環”にもつながる点が、地域密着型の事業やエネルギー地産地消と非常に相性が良いと判断しました。

    テッちゃん:デメリットが逆にチャンスになるなんて、すごい発想なのだ!地域の皆で力を合わせるということなんですな。

     


    奥さん: これを機に、小水力開発の事業会社として「日置WATERテクノロジー株式会社」を設立しました。一方で、日立パワーソリューションズさんが日置市に「地域エネルギー事業やマイクログリッドを一緒にやらないか」と提案を持ちかけてきたのです。太陽ガスとしても当時、「やらないと生き残れない」という強い危機感から、この提案も検討しました。 太陽光によるエネルギー供給は燃料費がゼロであり、安く売れる価格設計ができれば勝算がある、という「勘」があったようです。また、地域の人口減少とインフラ維持コストの問題から、マイクログリッドのノウハウを持っていれば、地域企業がそのエリアを守れる、という考えも強い動機となっていました。

    テッちゃん:地域の未来を守るという、壮大なビジョンがあったんだな!



    奥さん: 元々、小水力もマイクログリッドも太陽ガスの一事業として検討していましたが、この「日置WATERテクノロジー」を小水力だけでなくマイクログリッド事業や小売電気事業等、地域エネルギー全体を担う会社としての位置づけを明確にするために「ひおき地域エネルギー株式会社」に変更しました。その上で、マイクログリッド事業のFS(フィージビリティスタディ:実現可能性調査)補助金に応募し、2016年に採択されたのです。私がひおき地域エネルギーに入社したのは、そのFSが始まった頃でした。

     この時、奥さんのひおき地域エネルギーの前職の話になったんですが、なんとテッちゃんと同じ結晶成長(エピタキシャル成長*⁵)のお仕事をされていたのだとか!「私、やめてからエピをやったことのある人って初めて会いました!」とテッちゃんと意気投合!この時、奥さんは一番顔がほころんでいました。やはり同じ苦労をした人、特にその業界の専門用語を話せる人と会った時はうれしいっすよね。
     その後はテッちゃんと「エピ!」「エピ!」エピ話の連発でした。しかも、なんと同級生!!ホントは僕はその後のプロセスが専門だったんですけどねwww。今度はエピを肴に飲みましょう!!

    *⁵ エピタキシャル成長…工学用語。単結晶基板の上に単原子層を順次成長させることで、高品質な薄膜を形成する結晶成長方法の一つ。略称「エピ」

    テッちゃんと奥さんのちょっとヨタ話

    地域の未来は僕たちで守る!需給管理の猛勉強!!

    テッちゃん:奥さんは電力小売の知識はなかったのに、需給管理まで担当することになったのか?



    奥さん: はい。当社の現社長の中尾が2016年当時にひおき地域エネルギーで、アルバイトで小売電気事業の立ち上げを行っていたのですが、入社後に電力小売のオペレーションを引き継ぎました。太陽ガスで大重さんが需給管理を始めた後、マイクログリッドを含めたひおき地域エネルギーの需給管理を太陽ガスに業務委託しました。2019年夏頃から、大重さんの需給管理ノウハウを徐々に引き継ぎ、2022年の秋口に本格的に需給管理にフルシフトしたのです。
    大重さん: 太陽ガスで需給管理の開始準備を進める中で、Excelなどで並行して勉強・検証するうちに、「弊社の供給規模ならばExcelでも運用できる」と判断し、実際に実施しました。内製化で大幅なコスト削減を実現したんです。この経験から、会社としても「できる限り内製化し、地域内にお金を落とす」という方針を強めていきました。

    テッちゃん: それはすごい話なのだ!Excelでできちゃうんだ。じゃ、京セラのAEMS(エリアエネルギーマネジメントシステム)はいらないじゃん!?


    奥さん:当面は私たち自身のExcel運用で十分だと考えていましたが、いずれ限界が来るであろうとも思っていましたので、将来のことを考えAEMSでの運用実証に参加しました。そんな中、JEPX(日本卸電力取引所)*⁶のシステムが変更され、システム間での計画提出や入札が必須となる方向が明確になったのです。Excel運用だけでは対応が難しくなるため、改めてシステム導入を検討することになりました。その際、京セラさんとはマイクログリッドの実証でご一緒しており、その実力を把握していましたので、京セラさんのAEMSを採用する判断に至った次第です。


    *⁶ JEPX(日本卸電力取引所)…卸電力取引市場を運営する日本唯一の取引所。卸電力取引は発電事業者と小売電気事業者や大口需要家が電力を取引すること。

    テッちゃん:なるほど、外部環境の変化が決定打になったんですね。実証では、どうやってAEMSの予測精度を評価したんだ?

     


    奥さん: 実証中は、京セラさんのAEMSによるAI予測を実際に広域機関へ提出する一方で、私自身は従来通りの手法で需要予測を継続していました。そして、AI予測と私の予測を毎日比較し、実績需要との誤差を評価していったのです。季節ごとのイベントや気象変動を一巡させ、精度を確認するため、1年程度の並行検証を実施しました。

    テッちゃん:自分の予測とAIの予測を毎日競わせていたのか!まるでAIと勝負しているみたいだ。それで、AIの予測は奥さんの予測にどのくらい近づいたんです?


    奥さん: 結果はね、なんとAIの予測精度は私の予測と遜色ないレベルに到達したんですよ。それを見て、「これなら任せられる」と判断したのです。
    大重さん: 実証期間中には、AI予測の精度が需給担当者と同等であるという評価結果が、京セラさんの営業面での信頼確保にも役立ったのではないかと思っています。

    テッちゃん:それはすごい!まさに実績が信頼を生んだのか!www。では、今はもうAEMSに全面的にお任せですか?奥さんは予測をやめて、悠々自適?

     



    奥さん:一種の「監視」の意味合いで需要予測は継続しているのでが、それ以外はすべてAEMSに任せ、空いた時間を他の業務に使っています。
    大重さん:私の場合も、単に当てるだけであればAEMS予測値で充分なのですが、まだ太陽ガスとして導入した期間が短いことと、日々の需給動向や相場などに触れておきたいので予測を実施してます。もう少ししたら、任せてしまおうと思ってます。


    ひおき市役所の駐車場にも屋根があって、上には太陽電池がずらりと…。そして蓄電池もある。
    当日は太陽光が燦燦と降り注ぐ発電日和だったのだ!
    毎日しっかり地域の電力を供給しているのだった。

    市役所の南にずらっと並んだ太陽電池
    発電した電気を充電・放電する蓄電池

    そして未来へ!自立したエネルギー供給のために!!

    テッちゃん: では、今後、この事業を通じてどんな未来を目指しているのだ?




    奥さん: ひおき地域エネルギーは、環境省の「脱炭素先行地域」事業に日置市や太陽ガス、鹿児島銀行と共同で採択されており、現在4年目です。今後も太陽光発電所などを開発し、自社電源としての再生可能エネルギー比率を高めていく計画です。小水力電源も少量ながら加わり、将来的には「自社の再生可能エネルギー電源で地域の電力供給を賄う」方向に向かっています。
    大重さん: 現在弊社が持っている水力は20年のFITですが、終了後も自社の安定電源として活用できる点が大きいのです。国際情勢でエネルギー価格が乱高下する将来において、自社が価格決定権を持てる水力電源をベースに、「太陽ガスと契約している地域住民には、安定で安価な水力電気を供給できる」状態を目指しています。これが地域にとって大きな強みになると考えているのです。

    テッちゃん: 地域の電力インフラを自ら守り、安定供給を実現する。本当に素晴らしいビジョンなのだ!最後に、京セラのAEMSに今後期待する機能や要望があれば教えてほしいです。


    奥さん: 電力制度は今後も頻繁に変更される見込みがあります。現場としては「何が変わるのか分かりにくく、実務への落とし込みが難しい」ため、制度変更時にはAEMSがそれに対応し、現場負担を減らしてほしいですね。新電力立ち上げを検討する事業者にとっても、制度対応をシステム側に任せられることが大きな安心材料になるはずです。
    大重さん: 加えて、GHGプロトコル*⁷における再エネ価値の評価方法の変化は重要な論点です。太陽光を大量導入してもそのままでは昼間しか使用できません。BESS(Battery Energy Storage System:蓄電池システム)を組み合わせた時間帯別の再エネ管理が必要になる局面では、AEMSとBESS制御の連携、時間帯別の再エネ属性の管理・証書化など、システム側の高度な対応が不可欠になるでしょう。


    *⁷ GHGプロトコル…GHG(Greenhouse Gas:温室効果ガス)の排出量を算定するための国際基準のこと

    テッちゃん: 制度変更への柔軟な対応、そしてGHGプロトコルや分散型エネルギーの最適化。AIが進化しても、人の知恵とシステムが協力し合うことで、地域の未来が守られるのだな!今日はとっても勉強になったのだ。地域のエネルギーと経済を両方回すことで、サステナブルに住み続けられる街づくり。なるほど、そこには地元を思い、そこでビジネスを続けていくという熱い気持ちがあったのだ。テッちゃんは今、モーレツに感動している。本当にありがとうございました!

    目次抽出処理



    この記事はいかがでしたか?