京セラギャラリー2025年秋季特別展『EXPOSING』
このたび京セラ株式会社・京都市⽴芸術⼤学との産学連携による「京セラギャラリー2025年秋季特別展」として、『EXPOSING』を開催いたします。
今⽇、商品の陳列から美術展に⾄るまで、私たちの⾝の回りにはさまざまなかたちの「展⽰」が繰り広げられていますが、⼀⾒中⽴的に映るその形式や制度の背景には、ものを分類し、価値を与え、⾒る者/⾒られる者の関係を操作する、強い⼒学が働いています。こうした「展⽰」の原型を遡ると、1851年のロンドンに始まり、その後ヨーロッパ諸国へと広まっていった「万国博覧会」にまでたどり着きます。万博は、国家と産業の威信を誇⽰する装置として、先にも述べた⼒学が最⼤限に発揮される催しであったといえます。⽇本においては、1867年のパリ万博への正式参加を契機として、殖産興業を推進する気運が⾼まり、後に「内国勧業博覧会」という形で制度化されていくこととなります。そしてその流れの⼀端として、⽇本で初めて「博覧会」という名称を冠した催しが⾏われたのが、ここ京都でした。
本展では、そうした「博覧会」のもつさまざまな歴史的背景に取材した 3名の作家による空間的・視覚的・制度的なアプローチを通して、無意識化されている「展⽰」の側⾯に光をあてます。
建築家の寺岡波瑠は、これまで世界の諸相を建築的な構造によって解釈しながら、アレゴリカルな装置へと置き換えることで、暗黙のものとされている世界の不条理を提⽰してきました。また、相容れないはずのイメージを重ね合わせるしかたで絵画を描く画家の新平誠洙は、⾮決定的で曖昧な像を画⾯上に浮かび上がらせることで、対峙する者の「⾒る欲望」を刺激します。美術家の肥後亮祐は、たとえば地図や辞典、測定器といった私たちが盲⽬的に基準としているものの根拠を辿り、史実に潜むそれらの虚構性を明らかにしてみせます。
本展『EXPOSING』は、3名の作家による表現を⼿がかりに、「博覧会」という近代的装置の機能について再考し、それによってかたちづくられてきた「展⽰」の構造を⽴体的に捉え直そうとします。そして、その内部で駆動している欲望のシステムを「展覧会」において可視化しようと試みます。
会期 | 2025年11⽉1⽇(⼟)~12⽉13⽇(⼟) |
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開館時間 | 10:00-17:00(⼊館は 16:30 まで) |
休館 | ⽇・祝 |
入場 | 無料 |
会場 | 京セラギャラリー(〒612-8501 京都府京都市伏⾒区⽵⽥⿃⽻殿町 6 番地 京セラ本社ビル 1F) |
主催 | 京セラ株式会社、京都市⽴芸術⼤学 |
共催 | 京都市 |
後援 | 京都新聞、KBS京都、エフエム京都 |
企画 | D ARTS |
![《Phantom Paintシリーズ》 2025 撮影:来田猛 [画像提供:アートコートギャラリー]](/company/csr/facility/gallery/images/exhibition/exposing_01.png)
《Phantom Paintシリーズ》 2025 撮影:来田猛 [画像提供:アートコートギャラリー]
新平誠洙 Seishu NIIHIRA
1988年⼤阪府⽣まれ。2014年京都市⽴芸術⼤学⼤学院美術研究科修⼠課程美術専攻油画 修了。男⼥、内外、遠近など、相対するイメージの間にある曖昧な状態をリアリティととらえ、物体として強さを持つ絵画表現に定着させる。近年は AI 画像⽣成技術を取り⼊れることで⼈間と AI の間にある創造性に焦点を当てた作品を制作している。近年の主な展覧会に個展「Ghost Painter」(Gallery TAGA2、東京、2025年)、個展「Phantom Paint」(アートコートギャラリー、⼤阪、2025年)、「METAMETA」(BnA Alter Museum / 京都、2023年)、「MEET YOUR ART FESTIVAL2023」(寺⽥倉庫、東京、2023年)、「京都府新鋭選抜展」(京都⽂化博物館、京都、2022年)など

《広島式オーダー》 2020 撮影:Kenichi Harada
寺岡波瑠 Haru TERAOKA
1993年滋賀県⽣まれ。2018年京都市⽴芸術⼤学⼤学院美術研究科修⼠課程デザイン専攻環境デザイン 修了。近代的合理性に貫かれた世界の中で、建築において⼀般的に遂⾏される様々な慣習や様式といった既成秩序や、建築物が取り壊される際のコンテクストに対して感じる疑問を題材に制作している。近年の主な展覧会に、「京都芸術センター開設25周年記念展『そのへんにあるもの』」(京都芸術センター,2025)、「学園前アートフェスタ2024」(帝塚⼭学園18号館,2024)、sanwacompany Art Award / Art in The House 2023」(サンワカンパニー東京ショールーム,2023)、「六甲ミーツ・アート芸術散歩 2021」(ROKKO 森の⾳ミュージアム周辺 新池,2021)など。
![《ブロンドの記譜法》2023 「Osaka Directory 5 supported by RICHARD MILLE 肥後亮祐」[画像提供:大阪中之島美術館]](/company/csr/facility/gallery/images/exhibition/exposing_03.png)
《ブロンドの記譜法》2023 「Osaka Directory 5 supported by RICHARD MILLE 肥後亮祐」[画像提供:大阪中之島美術館]
肥後 亮祐 Ryosuke HIGO
1995年北海道⽣まれ。2024年京都市⽴芸術⼤学⼤学院美術研究科博⼠(後期)課程美術専攻構想設計領域 修了。博⼠(美術) 。「Google Map 上に誤記載された幻島」や「実在しない単語」など、流通する情報における盲点を遺物と捉え、社会や個⼈が無⾃覚にまたは意図的につくりだす事象や状況を考察し新たなかたちでの継承を試みている。近年は、「基準」や「貯蔵」を⽀える構造に焦点を当てた作品を制作している。近年の主な展覧会に「Osaka Directory 5 supported by RICHARD MILLE 肥後亮祐」(⼤阪中之島美術館、⼤阪、2023年)、「クリテリオム 97 肥後亮祐」(⽔⼾芸術館現代美術ギャラリー 、茨城、2020年)、「Parallel Circuit」(東京藝術⼤学⼤学美術館 陳列館、東京、2025)などがある。