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次世代材料開発を牽引する「5G、6Gに向けた高周波導電率評価技術」の開発

 近年、高速大容量通信を可能にするミリ波帯電磁波の利用が拡大しています。通信インフラとして、第5世代通信システム(5G)、車載ミリ波レーダー、WiGig(60GHz帯を利用し最大7GBpsの高速デジタル無線通信の通信規格)などの事業化が進み、さらに次世代の第6世代移動通信システム(6G)の研究開発にも注目が集まっています。
 通信用回路の消費電力を左右する伝送損失は周波数が上がるほど増大するため、低損失化を可能とする材料開発が強く求められています。

界面導電率とは?

 通信用回路を構成する伝送線路の伝送損失は、(1)導体の導電率による導体損失、(2)誘電体の誘電正接による誘電損失、(3)回路からの放射損失の3つの要因があります。そのうち、導体の導電率による導体損失の寄与が比較的大きいことが知られています。
 高周波回路では、表皮効果と呼ばれる現象により、導体と誘電体の界面部分に電流が集中します。一般的に導体は、接着のために界面が粗化されており、高周波回路での実効的な導体の導電率は、直流の時に比べて大きく低下します。そのため、導体と誘電体の界面部分における実効的な導体の導電率を、界面導電率といいます。それを評価することが重要となります。

 界面導電率を評価することは、マイクロ波帯、ミリ波帯の高精度回路設計、誘電体や導体材料の開発指標、導体と誘電体の貼り合わせ技術の指標となります。

界面導電率を評価するための課題や解決について

 界面導電率を評価するためには、ネットワークアナライザという装置を用います。ネットワークアナライザとは、透過・反射電力の周波数特性を測定するための高周波特性測定機器です。デバイス等の伝送特性の評価に利用される他、導体の導電率や誘電体の誘電特性などの電気的な材料物性の評価にも活用されています。
 京セラでは2枚の銅張り基板で挟まれた誘電体共振器により、マイクロ波帯の界面導電率を評価する手法を開発しており、この手法については、既に国際規格(IEC61338-1-5)に登録されています。

 京セラはこの技術を応用し、更に高周波であるミリ波帯における界面導電率を評価する新たな評価技術を開発し、国内外で発表してきました*¹。ミリ波の場合、誘電体共振器のサイズが1~3mm程度と非常に小さくなるため、前述のIECで規定されたループアンテナ(下記図1中の、ケーブル先端が1mmΦ程度のループ形状となったアンテナを指します)を用いた従来の電磁界の励振方法では、界面導電率の測定が困難になるという課題がありました。

 そこで京セラは、新しくNon-Radiative Dielectric waveguide(非放射誘電体導波路:NRDガイド)というミリ波の伝送線路の切断面により、電磁界を励振できる共振器を考案しました(図2をご参照ください)。本方法ではNRDガイドの主要伝送モードが測定電磁界と結合し易いため、対象物の測定電磁界を乱さずに測定することが可能となります。
 銅張り有機基板では接着強度を確保するため界面が粗されています。そのため、図3に示すように、周波数が増加するに伴い界面導電率は低下してしまいます。したがってミリ波帯における回路設計においては、このような界面導電率の低下を考慮する必要があることが分かります。

 次に、ミリ波帯における界面導電率の低下を評価するために、代表的な線路であるマイクロストリップラインにおける伝送損失のシミュレーションを行った結果を図4で示します。
 マイクロ波、ミリ波における界面導電率と、誘電特性の測定により、伝送損失における誘電損失と導体損失の切り分けを行うことができます。なお、京セラ開発品ではこの伝送線路における放射損失は、ほとんど無視できるレベルでした。
 図4に示される材料では、誘電体の誘電損失よりも導体の導体損失の方が大きくなっています。そのため、導体の粗度を下げる独自の工法を考案することで、他社よりも伝送損失の少ない、優れた材料開発へ繋げることができました(下記記事をご参照ください)。このように、界面導電率の評価を行うことは、伝送損失の改善を進める上で非常に重要です。

今後の研究開発について

 世の中では6Gに向けたサブテラヘルツ帯の材料、デバイスの研究・開発がスタートしています。材料、デバイスが5Gから6Gに進化するには、大きな技術ギャップの克服が必要です。
 そのため、我々は日夜、材料・デバイス開発の指針となる高周波特性の評価技術の研究開発に取り組んでいます。
 ご興味がある方はお問い合せください。共同研究で、一緒に材料、デバイス、評価技術の開発へ取り組みましょう。

*¹…①国際学会:N. Hirayama et al, Asia-Pacific Microwave Conference, 2018
  ②ワークショップ:Microwave Workshops & Exhibition 2019 エレクトロニクス材料の電磁波特性評価技術