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『セラミックスだけじゃない!』京セラの高周波向け有機基板材料

伝送する情報が増えることでますます周波数は上がっていく…

 京セラでは、ニューノーマル社会に貢献する、さまざまな製品やソリューションを提供しています。
 ミリ波を用いた第5世代移動通信システム(5G)は、単にモバイル通信の高速化・大容量化をもたらすにとどまらず、あらゆるモノをネットワークでつないで制御する、次世代のインフラとして、通信サービスを劇的に進化させることを期待されています。5Gでは低くても3GHz帯、高ければ28GHz帯といった高周波の利用が見込まれています。
 また自動車のADAS/自動運転向けミリ波レーダーでは76GHz帯、79GHz帯といった高周波無線を利用しており、濃霧や吹雪のようにカメラだけでは前方が見えない状況で威力を発揮しています。自動車やスマートフォンの移動体高速通信で始まった5Gの技術革新が進む中、さらに、各国で60GHz帯の使用を認めるための準備が進んだことで、呼吸・拍動などのヘルスケア・モニタリング、浴室内などプライベート空間での見守り等の様々な用途にミリ波レーダーを利用することができないかが注目されています。

周波数が上がると損失も増大

 従来のメガヘルツレベルの周波数信号に対応した回路基板の場合、ギガヘルツ以上の高周波下では伝送損失(左図)の影響で信号速度が制限されてしまいます。そこでミリ波と呼ばれる波長が1-10mm(周波数で30~300GHz)の送受信を行うことができるよう、伝送する信号の遅延や損失を極限まで低減でき、かつ環境変化(温度/湿度)対して誘電特性が安定した、低損失材料が求められます。また金属箔の表面プロファイル(表面粗度)に依存する表皮効果による伝搬信号の損失(導体損失)を抑制するため、配線に用いる粗度が小さい銅箔(ロープロファイル銅箔)との密着強度が保持されていることが重要となります。

 これまで、アンテナ用基板材料として主に採用されてきたフッ素樹脂基板材料は、比誘電率と誘電正接が小さく低吸水率で安定した誘電特性を有する材料として知られています。しかしフッ素樹脂に代表される低損失材料は、極性が低く不活性な性質をもつため、金属箔や他基材との接着性が悪く、接着性確保のための特殊な表面処理、処理に伴う高コスト化が普及のネックとなっています。
 特に銅箔との接着性が低いために、銅箔の接着面の粗度が粗いものを使用しなければならず、導体損失をさらに下げることが困難でした。

「縁の下の力持ち」基板材料の課題

 京セラでは、独自の樹脂配合技術と金属表面のカップリング剤処理により、低誘電特性でありながら、ロープロファイル銅箔との密着強度を大幅に改善した有機基板材料(フィルム)を開発しました。
 開発材料を配線基板に加工し、高周波での利用が想定されるマルチファンクション型ミリ波レーダーを作製しました。開発材料の特性が導波路(給電線路)およびマイクロストリップアンテナの低損失/高効率化に大きく寄与することを確認しました。


①低誘電特性
②低吸湿性
③ロープロファイル銅箔との密着強度を確保
④ビルドアップ工法が使用可能(設計自由度向上)
⑤PP材(ガラスクロス入り基材)特有の厚みの偏差・厚みによる誘電率の変化抑制

これらの要求性能に対して以下の表のような特性を得ることが出来ました。

次世代の基板に求められる基本性能

 京セラは今後、ますます増大する通信容量やセンシングの高性能化に対して、新たな技術で応えたいと考えています。

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