セラミックパッケージ

キヤノン株式会社様 テラヘルツデバイス

セラミックパッケージがテラヘルツデバイス開発の一助に!

掲載日:2024年11月6日

採用先
キヤノン株式会社
対象製品:テラヘルツデバイス
概要:キヤノン株式会社様はセキュリティや6G通信などへの応用が期待されているテラヘルツデバイスを開発され、京セラ製セラミックパッケージがその開発の一助となりました。
開発者の方に当時の様子についてお話を伺いました。
※お話しいただいた内容の一部を掲載しています。

開発品について

キヤノン株式会社様が開発されたテラヘルツデバイス

テラヘルツ波は電波と光の中間の周波数(波長)を有し、双方の特性を併せ持つ電磁波です。現在広く使われているX線と異なり、被ばくすることなく物体を透過させることができるため、セキュリティ用途での活用が期待されています。また、次世代の通信方式とされる「6G」の実現に向けても活用が検討され、高速・大容量通信への貢献も期待されています。
今回、キヤノン株式会社様が開発されたテラヘルツデバイスは、共鳴トンネルダイオード(Resonant-Tunneling Diode:以下、RTD)を用いた方式で、1個の半導体チップに36個のアクティブアンテナを集積したアクティブアンテナアレイの開発に成功しました。その結果、高出力高指向性両立した小型のテラヘルツデバイスの開発を実現することができました。 (キヤノン株式会社様のWEBサイトより抜粋)

採用前の課題・セラミックパッケージを検討したきっかけ

高出力のテラヘルツデバイスを実現するために、36個のアンテナを集積したデバイスを開発していました。
当初はパッケージ材料に有機材料(FR-4)を使用していたのですが、アンテナ数の増加に伴いデバイスからの発熱量が増えるため、効率的な放熱が課題となっていました。当初は、放熱性を高めるためにパッケージの厚みを薄くするなどして対処していましたが、そうすると剛性が不足し信頼性の面で懸念が出てくるため、有機材料(FR-4)には限界を感じていました。
また、開発品が発振器のため、周波数を安定させる必要があり、配線のインピーダンスを下げることが必要でしたが、有機材料(FR-4)ではそれが難しいと感じていました。このような経緯で、他のパッケージ材料の検討を始め、京セラをはじめとした各セラミックパッケージメーカーさんにお話を聞きました。

京セラを選んだ理由

窒化アルミニウム多層パッケージの特長(イメージ図)

はじめに、京セラの営業担当の方から、取り扱いのあるセラミック材料(アルミナ、窒化アルミニウム、LTCC)について、網羅的にそれぞれの特長を教えていただき、色々とご提案いただきました。幅広くご紹介いただいた中から、窒化アルミニウムが最適だと判断し、具体的な検討を進めることになりました。
当時は、窒化アルミニウムはコストが高く、配線技術が進歩しきっていない印象がありました。しかし、実際に京セラに話を伺うと、予想とは異なりコストの面で他材料と大差なく、配線技術も洗練されていると感じたことを覚えています。

このような背景で、ご提案いただいた内容や窒化アルミニウムが持つ可能性を踏まえ、京セラにお願いしようと決めました。

窒化アルミニウムを採用したポイント

※京セラ調べ
※上記の材料物特性は代表値です。これらの値は、材料や工程の改善等によって変更されることがあります。

有機材料(FR-4)を使用していた際の放熱性に関する懸念は、高熱伝導率の窒化アルミニウムを使用することで払拭できました。また、窒化アルミニウムは基材のInP(リン化インジウム)と熱膨張係数がマッチしていたため、熱応力を緩和させることもできました。さらに、開発品が36個のアンテナを集積した構造であり、高周波になると配線インダクタンスの影響で、配線インピーダンスが高くなってしまっていた点についても、窒化アルミニウムの高い設計自由度によって対処することができたと考えています。
つまり、高放熱であり、かつ熱膨張係数が素子とマッチしている点や、設計の自由度などの観点から窒化アルミニウムが最も適していると判断し、採用に至りました。

京セラに対する印象

問合せをさせていただいてから約3か月で初回試作(カスタム品)の仕様を決めて発注をすることができたのですが、京セラの的確なご提案のおかげと考えています。打合せの際は営業担当だけでなく、工場の技術担当者にも参加いただき、問題点があった際にはその場でリアルタイムに議論を進められたことも非常に進めやすかったです。 開発品の試作は、1回ではうまくいかないことが大半だと思うのですが、京セラからご提供いただいた初回試作品は私たちの要求の80%を満たす出来栄えでしたので、さすがの提案力・技術力だと感じました。

また、京セラにシミュレーション環境があったのも良かったです。
仕様を詰めていく際、当社でのシミュレーションとダブルチェックができたので、安心して設計を進めることができました。

将来的な展望(採用したいアプリケーションなど)

セキュリティ用途でのイメージ
(キヤノン株式会社様のWEBサイトより抜粋)

ここ数年で、各社からセキュリティや通信用途のテラヘルツ波に関する発表が増え、テラヘルツの分野は徐々に注目され始めているように思います。
私は、これまでテラヘルツ技術の開発に長年携わってきましたので、当社で開発したテラヘルツデバイス技術を活用して、将来的に何か社会貢献ができるようなアプリケーションを開拓し、社会や生活を豊かにしていくことが最終的な目標だと考えています。 最近ではありがたいことに、マイクロ波分野に関する世界有数の国際学会であるIEEE MTT-Sが出版するテラヘルツ波の専門誌『IEEE Transactions on Terahertz Science and Technology』において、日本企業として初めて最優秀論文賞(Best Paper Award)を受賞させていただくなど、業界内でも高い評価をいただいています。

テラヘルツ技術の社会実装には、様々な企業や研究機関との協力が必要不可欠と考えています。キヤノンのテラヘルツ技術にご興味をお持ちいただけましたら、ぜひ当社にお問合せいただけたら嬉しいです。

※米国電気電子学会(IEEE:Institute of Electrical and Electronics Engineers)のマイクロ波の理論および技術に関する専門部会(MTT-S:Microwave Theory and Technology Society)。
お客様情報

 会社名:キヤノン株式会社
 事業内容:映像機器や事務機器、半導体・ディスプレイ製造装置(露光装置、蒸着装置)などの製造・販売
 Webサイトhttps://global.canon/ja/
 テラヘルツデバイスの詳細https://global.canon/ja/technology/terahertz-device-2023.html

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