遂にできたぞ!これがアートだ!!京セラ×明和電機アートコラボプロジェクト~最終章~
2022年の年末から、土佐信道さん率いるアート・ユニット「明和電機」さんとともに、京セラの素材でアート作品を作る「京セラ×明和電機 アートコラボプロジェクト」を始動。土佐社長のアトリエに押し掛けたり、京セラの工場を訪問していただいたり、紆余曲折を経てアート作品が出来あがりました。(前記事:セラミックスでアートを作る?京セラ×明和電機アートコラボプロジェクト!?を参照)
(インタビュー:テッちゃん)
(話し手:明和電機 代表取締役社長 土佐信道)
【テッちゃんプロフィール】
OiA編集長、趣味は電車にプロレス・料理・競馬、そして友達を増やすこと。好きな食べ物は「〇まや」ランチの明太子の食べ放題定食、年齢は~~内緒。好奇心旺盛で、面白いテーマに興味津々!
キッカケは横浜開港祭のライブ協賛から
ーーご無沙汰しております~このたびはありがとうございました。そもそもなんでこれ始まったんでしたっけ(笑)。
テッちゃんご無沙汰~そうですね。2022年の横浜開港祭のライブに呼んでいただいて、隣同士でお店も出して、「そこでなんかやれたらいいですね」みたいな話になって。まさかこんなことになるとは思わない感じで、軽~く始めた感じですね。
ーーそうですね。僕らがセラミックナイフ売っている横で、オタマトーン売ってましたね。社長自ら(笑)。
まあ、とにかく何があるのか、どういう素材があるのかという話からスタートし、その後サファイアなどを持ってこのアトリエに来ていただいたんですよ。
ーーそんなに展開早かったでしたっけ!
そうですね。割と早かったです。
ーーそこで京セラから、「はい、なんかやりましょう!」という話になって、いろいろなサファイアの材料とかピエゾ素子とか、Possiとかでしたね。
そうですね。Possiがまあ一番いい作例で、「京セラはこういう素子も作ってるけど二次展開でこういう商品も作っていますよ。なんならPossiのオタマトーンできませんかね?」みたいな話になって、そこから技術的な話もいろいろ聞いていきました。
今回のプロジェクトで使う京セラの素材
①単結晶サファイア
ガラスよりも固く傷がつきにくいサファイア。高級腕時計のガラス部分に使われていたりするほどの、優れた機械的・化学的安定性や光学特性を持つ材料です。
詳細はこちら:
https://www.kyocera.co.jp/prdct/fc/wp/catalog/sapphire/index.html
②ピエゾ素子(圧電セラミックス素子)
ピエゾ素子は電圧をかけることで伸び縮みする性質を持っています。それを利用してブザーとして音を出したり、人間には聞こえない超音波で近接物を検知する自動車用のソナーにも使われています。
詳細はこちら:
https://www.kyocera.co.jp/prdct/ecd/piezo_d33/index.html
③ペルチェ素子
ペルチェ素子は一枚の板みたいな構造ですが、電気を流すと片面が冷えるとともに、反対面が温まるという不思議なモジュールです。学校でやったフランスのペルチェさんが発見したペルチェ効果を使ったものです。
詳細はこちら:
https://www.kyocera.co.jp/prdct/ecd/peltier/index.html
さあ、ナンセンスな発想でものづくり!
ーー率直に最初、このような機器や装置の中に入っている、一般の人から見たら意味不明な素材を見たときに、どんな感想をお持ちになりました?
圧電ピエゾとかは僕らも楽器のマイクやスピーカーで使ったりしていますが、見たことがないのでその小ささに驚きました。また、高精度の制御もできるアクチュエータとしても利用可能だったり。サファイアってこんな結晶なんだと知って、面白いなと思いました。 好奇心がそこで湧きましたね。
あの大きさの小型のアンプをマイクに使ったことはないので、まずピエゾはアンプにしようかなと。ピックアップとしての実験をまずやってみました。それが最初のイメージだったんです。しかし、工場を見学した時にデモ機を見せていただく中で位置制御をやっているのを見て...「あっ!そういう使い方もあるんだ!」とピンと発想が切り替わって、その微細なアクチュエータとして使えないかという発想で実験が始まりました。
ーー実際こうモノを触ってみて、そのイメージとモノって一致しましたか?
そうですね。ピエゾ素子はオモロイなと思って、動力として使ってみようと思いました。「カタカタカタ...」とノックをするちっちゃいロボット。「多分作れるわ」と思って作ってみて、見事叩いたんです。でも、あまりの高速さに壊れてしまうことが分かったんです。次に振動するのを使って、笛のリードみたいに震わせて音程を出せるぞ!と思いついたんですよ。リードが振動する代わりにピエゾ素子にやらせる。
それも最初、音が出たんですよ。「ヤッター」と思ったらボトッて壊れてね。いろいろ試行錯誤していくと、このくらいのデリゲートさとか使い道っていうのが、だんだんわかってきてイメージを変えていきました。
ーーいきなり限界まで動かしてみちゃうんですね。すごい!
また、ケーシングピエゾの方はめっちゃ負荷かけてもいい点が途中で分かって、すごい微細な動きだけど、かなりのアタック感「カンカンカンカン」ですので、これがオモロイなと思って、鉄球を飛ばしてみたんです。
ーーえっ!鉄球飛ぶんですか?
そう。鉄球を飛ばせるかなと思ったら、見事にポンポンポンポン飛んで(笑)。なんでも飛ばせるかなと思ったら、砂を入れたらあんまり飛ばなくてみたいな。
ーー面白いですね。普通のエンジニアたちってその材料を見て、そこまでなかなかイメージわかないと思うんですけど、土佐さんは思いついたことをガンガンやっちゃうんですね。
多分、エンジニア思考じゃないと思いますね。その「こういうのがあったらいいな」という漠然としたイメージから、仕組みを作れないかなという逆の考え方だからかと思いますね。
ーー最初は「面白いものを作りたい」の気持ちからスタートですね。普通の人はまずモノがあって、作ってみたら意外と面白くないものしかできなかったりしますが、土佐さんは逆なんですね。
そうでしょうね。多分小さいロボットを作ろうとすると、そのロボットがまずボンと見えるというイメージですね。まあ、ビジュアルが先行してるからだと思いますね。
ーー社長はまず最初に絵を描くじゃないですか。やっぱりその辺は「土佐社長!!」といつも思いますね。
ええ、たぶん芸術的な考え方なんでしょうね。僕の実家が機械加工工場で、工場の二階に住んでいたので、エンジニアリング的な思考もありました。父親も設計をしていて、家族は理系っぽい家庭でした。姉も海上自衛官で、通信隊で電気に詳しかったです。だから、エンジニアリング思考や論理思考も身についたと思います。でも、子どもの頃は絵を描くのが大好きで、そちらに興味が向いてしまいました(笑)。
完成品、これが「アート」!
サファイアクロック
CVレーザー
ペルチェフラワー
これで2サイズ白色
※完成したアート
【サファイアクロック】
単結晶サファイアを時計の文字盤として使い、ケーシングピエゾ素子で飛ばした鉄球で単結晶サファイアを叩くことで、
チャイムのような音を出す置時計
【CVレーザー】
アナログシンセサイザーのコントロール信号であるCVの電圧変化でピエゾ素子を振動させ、ピエゾ素子に取り付けた鏡を動かすことで
音に合わせてレーザー光線の軌跡を変える装置
【ペルチェフラワー】
試験管の中の低音で沸騰する液体をペルチェ素子で気化させ、それによりゴム風船を膨らまし花を咲かせる装置
「明和電機」にアート思考の神髄を見る。
ーー本当いろいろ面白いアイディアがたくさん途中で出てきたのを見せていただいて、すごい僕もワクワクしてたんですけど、最後いくつかこう、失敗作も含めて作品が出てきて絞られていったんですね。
前半は、まあまあイメージが出たら、最初はドンと素材を見てアイディアが浮かんで、もうとにかく自由にスケッチを書いて、ぶわって拡げるんですけど、次は本当にできるの?という検証に入ります。ざっくり試作をバンバンやっていたんですね。試作は本当に試行錯誤で、でも絶対にやればわかってくるという結果が前半の中で出てきました。
後半の思考は商品化とか、展示する作品たるかって。そして仕上げ。ブラッシュアップ部分での思考もあるので、「これいいんだけど展示として面白くない」とか、「お客さんが分からないな」とか、そんなのをそぎ落していって...とにかく面白くなるのであろうというものとしてやっていきます。
ーー土佐さんはこういうふうに絵が描けるので、そうするとイメージがすごく掴みやすくなりますね。我々はなかなかやっぱ絵を描ける人がいない。フツーにみんなの前で絵を描くの恥ずかしいですよね(笑)。
最終的にその絵から姿になった。やっぱ結構そこって、この動きのスピードとか、最初のイメージの時にはこれぐらいのスピードで動かないといけないとかって、当然あるんですよね。そこが逆だったのが、ペルチェフラワー。 花が咲く装置になる時の、アイディアができていくプロセスをたどると、最初はペルチェで熱膨張とか低温膨張する液体を膨らませればアクチュエータになるという原理はわかってたんです。原理モデルも作って、こうなるなと思ったんですけど。花の開き方がゆっくりだった。とてもゆっくりです。高速で動かすのが無理だったんで、かつそんなに面白くない、地味でどうしようかなと思った時に、一方で低温のあの液体がぶくぶくぶくぶく膨れていく現象はすごい不思議で。 もしかしたらエンジニアの人はそこを見せないかもしれないんですけど。
これビジュアル的に面白いやと。これをフィーチャーしたっていうのが作品になった時、面白いぞと思って。花のイメージにも合ったと思って。ブクブクの液体で花が開くとかですね。めっちゃゆっくりだけど、そのゆっくりさがいいんじゃんっていう、逆にそう切り替えました。
ーーあれでなんかだんだんだんだん動いてるんだなっていう。あれがないと何が起こっているのか、上の変化が小さすぎてわからないというそのプロセスも含めて見せることが面白いとなったわけですね。
そうです。ぜひ動画をご覧ください。
プロジェクトを終えて
今までのわれわれ企業が何か製品開発する時の考え方とは大分違っていて、部品の性能がどうだからとか、そういうことからイメージの限界を決めずに考える。そこで決めたイメージをしっかり持って、それに向かってやっていく。土佐さんのやり方というのは、われわれにとってもとても勉強になるプロジェクトだったのだ。
実は、京セラが大事にするフィロソフィにも 「見えてくるまで考え抜く」 という節で、どうしたらいいかそのイメージがカラーで見えるくらいまでに考えるというものがあるのだ。土佐さんの頭の中のイメージには絶対に色がついているハズ!
今回の学びを土台にして、「これからも限界を作らず突撃していこう!」と心に誓うテッちゃんであった。土佐社長、明和電機の関係者の方々、ほんとうにありがとうございました。