高耐熱のセラミックパッケージを用いることで、高信頼の全固体電池を開発!

採用先:マクセル株式会社
対象製品:全固体電池
概要:外装にセラミックパッケージを採用することで、高耐熱性と高密閉性を実現しました。また、リフローはんだによる基板への実装が可能です。医療やインフラ、FAなど、高信頼性が求められるような領域への展開を行っています。
今回は、開発マネージャー様にインタビューを行いました。
※お話しいただいた内容の一部を掲載しています。

課題

当時開発を進めていたコイン形全固体電池は、液系の電池よりは優れた性能を得られていましたが、高耐熱・長寿命という面では、想定よりも良い特性が出せていませんでした。 常温では使えるレベルにあるものの、100℃という環境下や、10年以上の継続利用は実現が難しい状況でした。そこで、外装体の変更を検討しはじめました。 また、当時産業機器メーカー様などから表面実装可能な電池のご要望をいただいていたのですが、従来の方法(右図参照)では、耐振動・衝撃の面で信頼性に欠けるという話があり、リフローで表面実装できる方法を探っていました。つまり、高耐熱・長寿命を実現させることと、リフローで表面実装できることの両立が大きな課題でした。
京セラへの依頼を検討したきっかけ
実は、上記のような課題が明らかになる少し前に、京セラさんの技術者の方からセラミックパッケージのご提案を受けていました。その後、 課題が浮き彫りになったので、改めて詳しく話をさせていただきました。打合せの際、当社が開発していたコイン形全固体電池がちょうど入るサイズのパッケージサンプルをお持ちだったので、課題解決できるか確認するために「簡単な評価をしてみましょう」というご提案をいただきました。すると、非常に良い特性が出て、「これは使用できるな」という感触を得ました。それからは色々とご提案をいただきながら、セラミックパッケージ型の全固体電池の開発を進めていきました。
採用のポイント・効果

セラミックパッケージを使用した全固体電池を試作し、一般的に電子部品に実施されるような試験を一通り行ったところ、特に高温高湿試験の結果が格段に良くなりました。コイン形全固体電池では外部環境の影響を受けていましたが、セラミックパッケージに入れて気密封止をすることで、外部環境の影響を受けづらくなったので、全固体電池そのものが本来持つ性能がしっかり発揮されるようになったという印象を持ちました。(左図参照)外的要因をほとんど気にしなくて良いので、寿命予測などのシミュレーションもしやすくなりました。
セラミックパッケージに電池を入れると劣化しづらいということを学会などでも発表させていただきましたが、大きな反響がありました。
また、セラミックパッケージを使用することによって、プリント基板に実装した状態での振動試験や衝撃試験においても、信頼性が格段に向上しました。リフロー試験でも問題なく性能を維持しており、表面実装可能な部品であることが確認できました。 ホルダーにコイン形全固体電池を挟む方法では、産業機器向けなどで使用する際に、信頼性の面で不安がありましたが、そういった問題も解決することができました。セラミックパッケージを使用することで、デバイス単体としては全固体電池そのものが本来持つ性能が発揮できるようになり、高耐熱・長寿命の実現が可能になりました。また、リフローで表面実装において、信頼性が確保できるようになったことで、高信頼性が必要な機器にも使用できるようになりました。
京セラに対する印象

京セラさんは職人気質が強く、技術にこだわりのある企業という印象を持ちました。課題解決の提案を積極的にしていただけましたし、 ものづくりに対して誇りとこだわりを持たれており、信頼感があるなと感じています。また、営業の方も技術者同様の知識を持たれていて、工場見学に伺った際には、非常に細かい点まで説明をしていただきました。営業の方は、現場を理解するために、工場のラインに入ることもあると聞き、彼らの知識が豊富である理由に納得がいきました。
当社では、『まぜる、ぬる、かためる』というアナログコア技術をベースにビジネス展開を進めているのですが、京セラさんのセラミックスもアナログ技術で通じる部分があるように感じています。
将来的な展望

小型のセラミックパッケージ型全固体電池は現在量産フェーズにあります。(掲載日時点)安全、高耐熱、長寿命など、これまでにない特長をもっているので、これまで電池の使用を諦めていた用途も含め、多方面に展開していこうと考えています。 例えばタイヤへの埋め込みや、設備モニタリング、太陽電池や圧電素子などのエナジーハーベストに関する話などもいただくようになってきました。
また、この全固体電池は高温環境だけではなく実は低温にも強く、例えばマイナス50℃の環境下でも使用することができます。冷凍庫や冬山などといった環境での用途も含め、「こんなところにも使えるの?」という用途がどんどん増えれば嬉しいなと思っています。
当社のビジネス全体にも言えることなのですが、医療やインフラ、FAなど、高信頼性が求められるような領域に展開していくことで、社会課題の解決に通じるような、長期トレンドに沿ったモノづくりをしていきたいと考えています。ぜひ今後も社会課題の解決に通じるようなビジネスを京セラさんとともにおこなっていけたら嬉しいです。
会社名:マクセル株式会社
事業内容:エネルギー、機能性部材料、光学・システム及びライフソリューション製品の製造・販売
製品サイト:https://biz.maxell.com/ja/rechargeable_batteries/allsolidstate.html