出力制御(出力抑制)とは?
仕組みや太陽光発電への影響・ルール・対策を紹介!

近年、各電力会社が「出力制御(出力抑制)」を実施するケースが増えており、報道などで見聞きしたことがある方も多いのではないでしょうか。
実は太陽光発電を導入している企業・家庭にとって、この「出力制御」は無関係とはいえない制度です。
この記事では出力制御の仕組みを解説します。出力制御に伴うルールや、太陽光発電への影響も紹介するため、太陽光発電の費用対効果を最大限に高めたい方はぜひご参考になさってください。
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【目次】
出力制御とは

出力制御(出力制限)とは、電力の受給バランスを「発電量を抑えること」で整える措置です。
電力を安定供給するためには、需要(消費量)と供給(発電量)のバランスを取らなければなりません。もし需給バランスが崩れると、周波数が大きく変動することで電気設備の不調を招いたり、大規模停電(ブラックアウト)が発生したりする可能性もあります。
そのため消費量と比べて発電量が増えすぎると予想される場合には、発電量をコントロールすることで需給バランスを保ちます。これが出力制御です。
出力制御の定義と基礎知識
実は出力制御には次の2種類が存在します。
需給バランス制約による出力制御 | 需要(電力消費量)を制約とする出力制御 |
送電容量制約による出力制御 | 送電線・変圧器に流せる電気の量を制約とする出力制御 |
参考:資源エネルギー庁|出力制御について
いずれの場合も電気の安定供給を目的に、発電量が制限されることに変わりはありません。
そして出力制御の歴史は浅く、2018年に九州エリアではじめて実施されました。その後しばらくは九州エリアのみで実施されていましたが、2024年現在では、徐々に日本中で実施されるようになっています。
- 2018年~:九州
- 2022年~:四国・東北・中国(4月)、北海道(5月)
- 2023年~:沖縄(1月)、中部・北陸(4月)・関西(6月)
出力制御が実施されたことがないエリアは、2024年時点では東京電力エリアのみです。
出力制御が実施されることが徐々に増えている原因としては、太陽光発電が堅調に増加し、それによって発電量が増えていることが挙げられます。また、電力価格の高騰を背景に節電が進み、結果として需要量(消費量)が減っていることも原因の一つです。
参考:資源エネルギー庁|再生可能エネルギーの出力制御の抑制に向けて(3.46MB)
余剰電力が生まれる原因

火力発電所などは、電力需要予測に合わせて発電出力をコントロールすることも可能です。それにも関わらず、どうして余剰電力が生まれるのでしょうか。
その原因の背景としては、自然エネルギー発電の存在が挙げられます。
太陽光発電・風力発電など自然エネルギーに由来する発電は、発電量のコントロールが困難です。しかし昨今では環境へ配慮する観点から、自然エネルギー由来の発電所が増加しています。
その結果、「エアコン需要が少ない春・秋」「企業・工場などが稼働しない休日」など電力消費量が少なくなるタイミングで、自然エネルギー発電にとって望ましい条件(晴天など)が揃うと、余剰電力が生まれやすいのです。
出力制御の優先順位

需給バランスを保つことは重要ですが、太陽光・風力などの自然エネルギーは天候によって発電量が頻繁に変動します。このような状況で受給バランスを保つことは、非常に難しいと言わざるをえません。
そこで「優先給電ルール」と呼ばれる仕組みによって、出力制御される発電所の優先順位が決められています。出力制御される順番は次のとおりです。
- 火力発電の出力制御&水力発電の揚水&蓄電池の活用
- 他地域への送電
- バイオマス発電の出力制限
- 太陽光発電・風力発電の出力制限
- 水力・原子力・地熱の出力制限
この制御の順番には、各発電の発電コストや技術的特性が関係しています。
需給バランスが崩れそうな場合、まず第一ステップとして火力発電の出力が抑制され、あわせて揚水発電の「くみ上げ運転」によって電力需要が生み出されます。地域間連系線を活用し、他エリアへ送電されるのが第二ステップです。
それでも発電量が需要量を上回ってしまう場合は第三ステップとしてバイオマス発電が出力制御され、さらにその後の第四ステップとして太陽光発電・風力発電の出力制御が実施されます。
なお、水力・原子力・地熱は「長期固定電源」と呼ばれ、短時間で小刻みに出力調整することが技術的に難しい発電方法です。出力を一度低下させてしまうと、すぐに元に戻すことができないため、抑制する優先順位は最下位とされています。
参考:資源エネルギー庁|出力制御について
太陽光発電に関係する出力制御のルール

- 旧ルール(30日ルール)
- 新ルール( 360時間ルール)
- 無制限無補償ルール(指定ルール)
- それぞれ、無補償での出力制御の上限に違いがあることが特徴です。詳しく見ていきましょう。
旧ルール(30日ルール)
2015年(平成27年)1月25日までの接続申込み案件が対象とされている法改正前の旧ルールは「30日ルール」と呼ばれています。
年間30日は無補償での出力制御に応じることが義務付けられており、上限日数を超えた出力制御については補償されることが特徴です。
新ルール( 360時間ルール)
2015年(平成27年)1月26日以降の接続申込み案件からは、「360時間ルール」が適用されています。
より柔軟に出力制御できるよう、「日数単位」から「時間単位」へ移行されたことがポイントです。また、時間単位に移行されたことで、太陽光発電の系統への接続可能量が増加しました。
無制限無補償ルール(無期限・無補償)
ここまで紹介した出力制御枠を超過して太陽光発電・風力発電の連系が見込まれるエリアの一般送配電事業者は、「指定電気事業者」に指定されました。そして指定電気事業者のエリアで契約締結した発電事業者は”無制限・無補償”で出力制御に応じることが義務付けられたため、これが「無制限無補償ルール」と呼ばれています。
東京・中部・関西エリアは指定電気事業者化されておらず、基本的には360時間ルールが適用されていました。 しかし、2021年4月以降は東京・中部・関西エリアを含む全エリアで無制限・無補償ルールが適用されるようになっています(指定電気事業者制度は廃止されました)。
その結果、現在ではすべての新規接続案件で無制限・無補償ルールが適用されるようになっています。
出力制御の対象となる太陽光発電規模
出力制御の対象となる太陽光発電は、当初は500kW以上の大規模発電所に限られていました。
その後は対象が徐々に拡大し、2024年現在では10kW以上の太陽光発電設備が対象とされています。

参考:資源エネルギー庁|出力制御について
家庭用など10kW未満の太陽光発電については、当面の間は出力制御の実施対象外とされています。
しかし、今後の情勢によっては、10kW未満の太陽光発電が出力制御の対象となる可能性もゼロではありません。
太陽光発電の出力制御については10kW以上を優先しつつも、それでもなお出力制御が必要な場合には、10kW未満の太陽光発電についても対象となるとされているためです。
今後ますます太陽光発電が普及していくことを鑑みると、法人だけでなく家庭でも出力制限への対策を考えておいたほうがいいでしょう。
出力制御に備えた対策と取り組み
電力を安定供給する観点で考えると、出力制御は非常に重要な仕組みです。
しかし太陽光発電を設置する側の立場で考えると、せっかく発電した電気が無駄になってしまうため、何らかの対策をしておくべきでしょう。
とくに昨今は、ノンファーム型接続でないと、電力会社の系統に接続させてもらえないこともあります。
ファーム型接続:接続時に確保された容量の範囲内で自由に発電できる接続方法
ノンファーム型接続:系統が空いている時間帯のみ電気を流す前提で接続する方法。つまり系統混雑が予想される場合は、出力制御される。
参考:資源エネルギー庁|出力制御について
ノンファームで接続する場合、容量圧迫時は出力制御されるため、「需給バランス制約による出力制御」よりも頻繁にコントロールされる可能性も否めません。そのためより一層、出力制御に備えておくことが重要です。
出力制御への対策方法としては、次の2つが挙げられます。
- 出力制御機器の導入(オンライン化)
- 蓄電池の導入
それぞれ詳しく見ていきましょう。
出力制御機器の導入(オンライン化)

出力制御用機器を取り付けた発電設備による「オンライン制御」は、出力制御用機器を取り付けていない「オフライン(手動)制御」に比べ、実需給に近い柔軟な運用が可能で、出力制御量の低減が見込まれることが特徴です。
出力制御の対象が拡大されている状況も鑑み、2022年4月から太陽光発電設備のオンライン代理制御が導入されています。
たとえば九州エリアでオンライン代理制御を導入した場合、それまでと比べて再エネ出力制御量が全体として2割程度低減するとされています。
出力制御量が減らせるということは、それだけ売電収入を増やせるということですから、太陽光発電を設置する側のメリットは大きいといえるでしょう。
なお、新ルール(360時間ルール)と無制限・無補償ルールの対象設備は、出力制御機器を設置することが義務づけられています。
蓄電池の導入

出力制限によって売電できなかった電力を蓄電池に溜めておけば、夜間など発電できない時間帯に使用できます。
そのため出力制御への対策として、蓄電池を導入することもおすすめです。
また、出力制御に左右されずに太陽光発電による経済的メリットを享受したい場合には、売電ではなく自家消費にフォーカスしたほうがいいでしょう。
このような観点から、昨今では出力制御に左右されない自家消費型として「逆潮流しないシステム」を導入するケースも増えています。
逆潮流とは、需要家側(企業・家庭など)から系統側へ、電気が逆流することです。逆潮流しない太陽光発電システムは常に「自家消費量>発電量」となることが前提で、売電を想定していません。そのため出力制御されることなく、自家消費を賄う量だけ発電できることがポイントです。
工場などの電力消費状況に合わせた量だけ太陽光発電を設置する「自家消費型のPPA」も進んでいます。
ただし、逆潮流なしのシステムでは「逆電力継電器(RPR)」を導入するため、逆潮流が生じそうな場合には、発電がストップすることには注意しなければなりません。
実務的にはパワーコンディショナの負荷追従制御によって消費電力に追従した発電量のコントロールを行い、RPRを作動させないようなシステムの構築をします。
例えば、土日・休日など、工場などの電力消費量が減るタイミングでは、パワーコンディショナの出力を減らすなど調整し、RPRが働かないようにします。このような専門的なハンドリングについては、太陽光発電メーカーと相談することをおすすめします。
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太陽光発電の費用対効果を高めるためには出力制御も考慮
太陽光発電の費用対効果を最大限に高めるためには、出力制御されることも考慮しなければなりません。
電力会社が出力制御する例が増えており、太陽光発電の事業性が不透明になっていることもあり、今後は「出力制御に左右されない自家消費型」にフォーカスしていく必要があるでしょう。
蓄電池を導入し、自家消費量を増やしていくことも重要です。
京セラでは「自家消費型のPPA」「蓄電池」など、太陽光発電の費用対効果を最大限に高めるために必要なさまざまなサービス・製品を提供しています。太陽光発電の導入を検討している方は、ぜひ一度ご相談ください。
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