太陽光発電の今後はどうなる?課題や将来性、活用方法を解説!
太陽光発電の普及が進む一方で、その将来性を不安視する声も聞かれます。実際のところ、太陽光発電は今後どうなるのでしょうか。
この記事では太陽光発電の抱える課題や期待できる将来性、さらには今後の活用方法について紹介します。
太陽光発電の導入を考えている方はもちろん、既に保有している太陽光発電について不安を感じている方は、ぜひ参考にしてみてください。
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太陽光発電の普及率はどれくらい進んだ?太陽光発電の現在とは?
太陽光パネルの寿命はどのくらい?耐久性能や劣化原因を解説!
【目次】
太陽光発電の現状
太陽光発電の未来を知るためにも、まずは現状について知っておきましょう。世界各国の太陽光発電導入状況は次のとおりです。
国名 | 総発電量に占める 太陽光発電の割合 |
発電量(億kWh) |
日本 | 8.3% | 861 |
ドイツ | 8.5% | 500 |
イギリス | 4.0% | 124 |
中国 | 4.0% | 3,392 |
フランス | 2.7% | 151 |
スペイン | 8.0% | 216 |
インド | 4.4% | 719 |
アメリカ | 3.4% | 1,462 |
参考:資源エネルギー庁|今後の再生可能エネルギー政策について|2023年6月21日(7.14MB)
日本やドイツ、スペインなどでは総発電量に占める太陽光発電の割合が8%以上となっており、火力発電などと比べると小さな割合ですが、少なからず重要な発電源になっているといえるでしょう。また、中国やアメリカでは割合は小さいものの、発電量は相当な規模になっています。
太陽光発電の普及率はどれくらい進んだ?太陽光発電の現在とは?
ポジティブな要素
- 環境へ配慮した発電方法
- 普及率増加
- エネルギー安全保障への貢献
技術革新によって導入コスト・発電コストが低下し、さらに行政が補助事業を用意していることから、太陽光発電の累積導入件数は年々増えていることも特徴です(単年度の導入件数には波があります)。
日本に目を向けると、石油資源の乏しい国内でも発電できる方法として、太陽光発電は、エネルギー安全保障の観点からも注目されています。
参考:(一社)太陽光発電協会|太陽光発電の状況(1.37MB)
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ネガティブな要素
太陽光発電にまつわるネガティブな要素としては、次の2点が挙げられます。
- 卒FITを向かえるシステムの対応
- 寿命を終えた太陽光パネルの廃棄
FIT(固定価格買取制度)とは再エネを普及させるために、個人や事業者が発電した再エネ電力を「一定価格」で「一定期間」にわたって電力会社が買い取ることを、国が約束した制度です。
10kW未満の太陽光発電の場合、FIT期間は10年とされています。そして2019年11月以降、徐々に期間満了(卒FIT)を迎える家庭が増えています。これにより、太陽光発電を導入している方の経済的メリットが減少することが懸念されているのです。
参考:資源エネルギー庁|本制度における卒FIT電源の取り扱いについて(1.09MB)
また、寿命を終えた太陽光パネルの廃棄方法にも懸念の声があがっています。実は太陽光パネルには、パネルの種類によっては鉛・セレン・カドミウムなどが含まれています。卒FITを迎えたことで、これら有害物質も含まれる太陽光パネルを不法投棄する事業者が出てくるのではないかと心配する声が上がっていることも事実です。
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太陽光発電が抱える今後の課題
- 卒FIT後のシステムの活用
- 設置場所の確保
- 不法投棄の懸念
卒FIT後のシステムの活用
今後ますます卒FITを向かえる家庭・企業はますます増えていきます。太陽光発電を活用する経済的メリットが薄まってしまうことを不安に感じる方もいるでしょう。
もちろん売電を継続することも選択肢の一つですが、それ以外の活用方法を考えることが重要です。
もっとも検討すべきは、自家消費量を拡大することでしょう。自家消費して電力会社からの電力購入量を減らすことは、燃料費高騰などによる電気代値上げの対策にもなります。
蓄電池を導入し、余剰電力の行先を売電から自家消費に切り替えれば、より電気代削減効果を高められます。たとえば日中発電した電気を売電せず蓄電池にためておけば、夜間・荒天時など自家発電できない時間帯にも自家消費が可能です。
卒FIT後(固定価格買取制度 期間満了後)の対応とは?家庭でできる4つの方法をご紹介!
太陽光発電と蓄電池の両方を設置するメリット・デメリットとは?仕組みや特徴と合わせて解説
なお、太陽光発電と蓄電池を併用したほうが経済的メリットが大きい状態を「ストレージパリティ」といいます。各年度ごとストレージパリティ達成に向けた補助事業が実施されることもあるので、蓄電池導入時にはぜひ活用してみてください。
設置場所の確保
2050年カーボンニュートラル達成を目指し太陽光発電の普及を急ぐあまり、森林を切り拓いてメガソーラーを設置するのではないかなど、太陽光パネルの設置が引き起こす環境問題も懸念されています。
太陽光発電はたしかに環境にやさしい発電方法ですが、その設置のために環境を破壊してしまっては本末転倒です。
環境に配慮しつつ太陽光発電を普及していくためには、荒廃農地や空港、ソーラーカーポート、溜池など、自然を壊さずに遊休地を活用していく必要があります。
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不法投棄の懸念
先述したとおり、太陽光発電事業者が事業終了後、太陽光パネルを含む発電設備を放置したり不法投棄したりすることへの不安や懸念の声も少なくありません。
太陽光発電を今後さらに再エネの主力としていくためには、出口戦略として廃棄方法を確立することも求められるでしょう。 国は「再エネ特措法」を改正し、太陽光発電を含む再エネ設備の廃棄費用をあらかじめ徴収し、外部に積み立てることを原則とする制度を策定しました。これにより転売などで太陽光発電事業者が変わったとしても、廃棄時まで費用が保全されることが特徴です。
太陽光発電事業が地域社会と共生するための制度が、今後ますます整えられていくことが期待されます。
参考:経済産業省|「法制度」の観点から考える、電力のレジリエンス ⑥再エネのポテンシャルを全国規模で生かすために
太陽光発電の未来
- 2050年カーボンニュートラル実現のための主要要素
- エネルギー安全保障の観点からも重視
- さらに高品質な太陽光パネルの開発
2050年カーボンニュートラル実現のための主要要素
2050年までにカーボンニュートラルを実現するためには、再生可能エネルギーのさらなる導入が不可欠です。
再エネは水力・風力・地熱などさまざま存在しますが、その中でも太陽光発電はパネルの効率向上・コスト低下が進んでおり、将来的には総発電量に占める太陽光発電の割合がさらに増加することが期待できます。 カーボンニュートラルは太陽光発電の普及拡大によって実現が近づくといってもいいでしょう。
エネルギー安全保障の観点からも重視
日本は化石燃料資源の乏しい国であるため、世界情勢によってはエネルギー資源の確保が難しくなってしまいます。2024年時点でも、世界的な情勢不安から燃料調達コストが増大し、電気代が上昇していることは多くの方が実感しているでしょう。
このようなエネルギー安全保障の観点からも、国内で発電を完結できる太陽光発電の重要性はますます高まっていくと予想されます。
さらに高品質な太陽光パネルの開発
現在主流の太陽電池は、コスト低下は進んでいるものの、設置場所に制限があることも事実です。それなりに重量もあるため、耐荷重の小さな既存建物の屋根・壁面には設置できません。
しかし、これまで太陽光発電の設置が難しかったような場所にも導入できる「次世代型太陽電池」の技術開発が進んでいます。現在の太陽電池より軽量性・柔軟性に優れた製品が普及し導入方法の選択肢が増えることも、太陽光発電をとりまく明るい未来の一つです。
従来よりも大幅な薄型化、軽量化を実現したフレキシブル結晶シリコン太陽電池モジュール(開発試作品)
太陽光発電の今後の活用法
- ZEHによりエネルギーコストを抑える【住宅】
- FIP制度で売電する【法人】
- ピークカット・ピークシフトによる電気代削減を狙う【法人】
- 停電時の非常用電源にする【法人・住宅】
- PPAを活用して初期費用0円で導入する【法人・住宅】
ZEHによりエネルギーコストを抑える【住宅】
ZEH(Zero Energy House|通称:ゼッチ)とは、太陽光発電・省エネルギー設備・断熱材設備などを組み合わせることで、年間のエネルギー消費量を実質的にゼロにする住宅のことです。
生活に必要な電力は太陽光発電を主力として利用するため、家庭からのCO₂排出量をゼロに近づけることが可能です。災害に伴う停電時にも自家発電で生活を続けられるため、在宅避難しやすいこともメリットといえるでしょう。
新築住宅を建てる方は、ぜひ太陽光発電を活用した ZEH住宅を検討してみてください。ZEH住宅には建築時の補助金が出ることもポイントです。
FIP制度で売電する【法人】
FIT制度のように固定価格で売電するのではなく、再エネ由来の電力を市場価格にプレミアム(補助額)を加算して売電できるのが「FIP制度(Feed-in Premium)」です。
FIT制度では、1kWhあたりの売電単価(調達価格)が定められていますが、FIP制度でも「基準価格(FIP価格)」が定められます。この「基準価格」は再エネ発電に必要なコストなどさまざまな事情を考慮して決められていることが特徴です。また、電力の市場取引によって期待できる収入分として、市場価格に連動した「参照価格」も定められています。
FIP制度下では「基準価格(FIP価格)」と「参照価格」の差額が「プレミアム」となり、太陽光発電事業者が受け取ることが可能です(基準価格(FIP価格)>参照価格) 。
欧州など再エネ先進地域ではすでにFIP制度導入が進んでいましたが、日本でも2022年4月からスタートしています。
参考:経済産業省|再エネを日本の主力エネルギーに!「FIP制度」が2022年4月スタート
FIPは法人向けの制度ですが、自家消費ではなく売電収入を確保したい事業者は、卒FITに向けてFIPへの移行を検討してもいいでしょう。
【法人向け】FIP制度とは?FIT制度との違いやメリット・デメリットを比較
ピークカット・ピークシフトによる電気代削減を狙う【法人】
法人の場合、太陽光発電と蓄電池を組み合わせて「ピークカット」「ピークシフト」を実施することで、電気代削減効果も期待できます。
前提知識として、法人の電気代が決まる仕組みを知っておきましょう。
法人の電気代に大きく影響するのが「最大需要電力(契約電力)」です。契約電力は過去一年間に測定された30分ごとの平均使用電力(最大需要電力|1年間のデマンド値)によって決まります。このデマンド値が大きければ契約電力も大きくなり、電気代が高くなってしまうのです。
ピークカットでは太陽光発電を活用し、ピーク時の電力購入量を減らします。電力購入量を減らせることはもちろんですが、これによってデマンド値も減少するため、契約電力を低水準に保てることがポイントです。
また、ピークシフトでは蓄電池を活用します。夜間など低需要な時間帯に電力購入し蓄電し、その電力をピーク時に使用することで、やはりデマンド値を減少させる効果が期待できるのです(電力購入量は変わりません) 。
そして蓄電池を使えば、低需要の時間帯に太陽光発電が生み出した電力を溜めておけるため、余すことなく自家消費できます。太陽光発電と蓄電池を併用すれば、ピークカットを実施しながらピークシフトも可能となり、電気代削減効果を最大限に高められるのです。
●1年間の最大需要電力が、夜間や雨天など太陽光発電が稼働していない条件の際は、最大需要電力の削減ができないケースもあります。
停電時の非常用電源にする【法人・住宅】
法人・住宅ともに、太陽光発電と蓄電池を組み合わせれば、停電時の非常用電源としても活用できます。
太陽光発電のみでは日中しか電気を利用できませんが、蓄電池があれば夜間や荒天時でも電気を使えることがポイントです。非常用電源としての機能も求める場合は、蓄電池の併用も検討してみてください。
太陽光発電で停電時に備える方法と停電時の操作方法とは?【住宅】
産業用蓄電池の特徴とは?太陽光発電と併用時のデメリットや補助金情報を紹介【法人】
停電時に蓄電池で備える方法とは?蓄電池の選び方もご紹介!【住宅】
PPAを活用して初期費用0円で導入する【法人・住宅】
ここまで紹介した活用方法を鑑みて、太陽光発電を導入してみたいと考えている方も多いのではないでしょうか。しかし導入コストが低減しているとはいえ、住宅用であっても太陽光発電の導入には100万円以上の費用がかかります。法人用はさらに規模が大きくなるため、少なからず設置コストが負担になることも事実です。
また、昨今では太陽光発電単体では補助金が利用できないケースもあり、経済的負担から太陽光発電の導入を諦めている方もいるかもしれません。
そのような方には、PPAサービスの活用をおすすめします。PPAとは「Power Purchase Agreement(電力購入契約)」のことで、簡単にいうと初期費用0円で太陽光発電を導入できるサービスです。太陽光発電システムはPPA事業者の負担で設置し、需要家(住宅・法人など)は電力使用量に応じたサービス料金をPPA事業者へ支払います。
PPAであれば初期費用の負担なく太陽光発電を導入できるため、ぜひ検討してみてください。京セラでも住宅用・法人用それぞれにPPAサービスを提供しています。
太陽光発電を活用していくことは今後も重要
環境保護・エネルギー安全保障の観点から、今後は電気を自給自足していくことが求められるでしょう。
国家単位のマクロ的観点、事業所・住宅などミクロ的観点の双方から見ても、太陽光発電を活用していくことは今後より重要視されていくと考えられます。
技術進歩に伴い、太陽光発電の導入コストは低減していますが、初期費用の負担が気になる方もいるでしょう。今後を見据えて太陽光発電を導入したいものの、設置コストが負担になるという方は、ぜひPPAを活用してみてください。
【関連記事リンク】
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太陽光パネルの寿命はどのくらい?耐久性能や劣化原因を解説!