FIT制度(固定価格買取制度)とは?
売電時の仕組みやメリット・注意点を解説!
太陽光発電を導入し、なおかつ売電している場合には、FIT制度(固定価格買取制度)による恩恵を受けている方も多いのではないでしょうか。しかし「FIT制度」という言葉は聞いたことがあっても、その意味まで理解している方は少ないかもしれません。
この記事ではFIT制度にまつわる知識として、制度の概要や売電時の仕組み、FIT制度利用時のメリット・注意点を解説します。太陽光発電を最大限に活用したい方は、ぜひ参考にしてみてください。
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【目次】
・FIT制度の仕組み
・FIT制度が導入された背景
・FIT制度を活用するメリット
・住宅向けを含む50kW未満の太陽光発電でFIT認定を受ける流れ
・法人向けなど50kW以上の太陽光発電でFIT認定を受ける流れ
・FIT制度の課題と未来
・FIT制度の仕組みや特徴を理解し再エネを導入!
FIT制度(固定価格買取制度)とは
これは再生可能エネルギーで発電した電気を、電力会社が「一定価格」で「一定期間」にわたって買い取ることを「国」が約束する制度です。対象となる再生可能エネルギーは太陽光発電だけではなく、次の5種類が対象とされています。
- 太陽光発電
- 風力発電
- 水力発電
- 地熱発電
- バイオマス発電
いずれかの方法で発電し、なおかつ国の要件を満たす事業計画を策定し、その計画に基づいて発電を始めた場合にFIT制度の対象となります。
参考:経済産業省|制度の概要|FIT・FIP制度
FIT制度の仕組み
FIT制度の対象となる電気は、電力会社が一定価格で買い取ります。
この電力会社が再生可能エネルギーに由来する電気を買い取る費用の一部は、一般住宅・企業など電気を利用している需要家から「再エネ賦課金(再生可能エネルギー発電促進賦課金)」として徴収されていることが特徴です。
なお、FIT制度の買取期間・買取価格は各再生可能エネルギーごとに定められています。これは発電事業が効率的に行われたときに必要となるコストを基礎とし、さらに価格目標・事業者の利潤なども考慮して毎年定められるため、再エネを導入した年度によって差異があることも覚えておきましょう。
買取期間
一般住宅に設置されるような発電容量10kW未満の太陽光発電の買取期間は10年間とされています。
一方、法人が導入するような「10kW以上50kW未満」「50kW以上」クラスの太陽光発電の場合、買取期間は20年間です。
参考:経済産業省|買取価格・期間等(2024年度以降)
買取価格
FIT制度による買取価格は毎年定められますが、実態として年々下落していることが特徴です。
まずは2012年度〜2023年度の買取価格推移を見てみましょう。なお、10kW以上の枠については「50kW以上250kW未満」「10kW以上2,000kW未満」「10kW以上」など年度によって違いがあるものの、便宜的に2023年度に採用されている「10kW以上50kW未満」の枠組みで記載しています。
2012年度~2024年度までの長期推移(調達価格1kWh当たり)
年度 | 10kW未満 | 10kW以上50kW未満 |
2012年度 | 42円(税込) | 40円(税抜) |
2013年度 | 38円(税込) | 36円(税抜) |
2014年度 | 37円(税込) | 32円(税抜) |
2015年度 | 33円(税込) | 29円(税抜) |
2016年度 | 31円(税込) | 24円(税抜) |
2017年度 | 28円(税込) | 21円(税抜) |
2018年度 | 26円(税込) | 18円(税抜) |
2019年度 | 24円(税込) | 14円(税抜) |
2020年度 | 21円(税込) | 13円(税抜) |
2021年度 | 19円(税込) | 12円(税抜) |
2022年度 | 17円(税込) | 11円(税抜) |
2023年度 | 16円(税込) | 10円(税抜) |
2024年度 | 16円(税込) | 10円(税抜) |
参考:経済産業省|買取価格・期間等(2012年度~2023年度)
FITの買取価格は年々下落しているものの、2022年度以降は下落幅が緩やかになっていることが分かります。
つづいて最新のFIT情報として、2024年の買取価格を見てみましょう。 区分によっては2023年度下半期から買取価格が上乗せされており、さらに太陽光発電の設置場所によって買取価格が変わることも特徴です。
2024年度のFIT価格
電源 | 規模 | 2024年度 | 2023年度 下半期 |
2023年度 上半期 |
2022年度 (参考) |
住宅用太陽光発電 | 10kW未満 | 16円(税込) | 16円(税込) | 17円(税込) | |
事業用太陽光発電 (地上設置) |
10kW以上 50kW未満 |
10円(税抜) | 10円(税抜) | 11円(税抜) | |
50kW以上 入札対象外 |
9.2円(税抜) | 9.5円(税抜) | 10円(税抜) | ||
事業用太陽光発電 (屋根設置) |
10lW以上 50kW未満 |
12円(税抜) | 12円(税抜) | 10円(税抜) | 11円(税抜) |
50kW以上 | 9.5円(税抜) | 10円(税抜) |
参考:経済産業省|再生可能エネルギーのFIT制度・FIP制度における2023年度以降の買取価格等と2023年度の賦課金単価を設定します
技術進歩によって太陽光発電の導入コストが低減していることもあり、FIT価格は年々下落してきました。しかし政府が掲げる2050年カーボンニュートラルを達成するためには、再生可能エネルギー導入をさらに促進する必要があることから、近年のFIT価格下落幅は緩やかになっています。
今後もFIT価格の減少傾向は続くことが予想されますが、政府の方針によって動向が変わるため、これから太陽光発電を導入する方は注視しておきましょう。
FIT制度が導入された背景
FIT制度の概要が分かったところで、制度の目的や成立背景についても紹介します。
FIT制度の目的
FIT制度の目的としては、現状としてはコストの高い再生可能エネルギーを、国全体として支えていくことが挙げられます。
徴収した「再エネ賦課金」を高コストな再生可能エネルギー購入の支えとすることで、電力会社は再エネ由来の電力を導入しやすくなります。
また、FIT制度によって買取価格が固定されると導入コストなどの回収見通しが立てやすく、企業や一般住宅など発電者側の再エネ導入に対するハードルが下がることもポイントです。
電力会社・企業・一般住宅など全方向への支援を通じ、再生可能エネルギーの普及を促進することがFIT制度の目的だといえます。
FIT制度の成立背景
再エネ発電は火力発電など従来型の発電方法と比べると、依然としてコストが高いことは否めません。しかし環境負荷のことを考えると、高コストな再エネを普及していく必要性は高いといえるでしょう。
また、日本のエネルギー自給率は2011年には11.2%、2015年にはわずか7.4%でした。化石燃料資源の乏しい日本においてエネルギー自給率を高めるためには、国内資源で発電可能な再生可能エネルギーを普及させる必要があります。 このように日本にとって不可欠な再エネ導入を促進するため、2012年にFIT制度が開始されました。
参考:経済産業省|固定価格買取制度ガイドブック(926KB)
FIT制度を活用するメリット
- 電気代負担を削減しやすい
- カーボンニュートラルに貢献できる
- 日本のエネルギー自給率向上につながる
それぞれのメリットについて詳しく見ていきましょう。
電気代負担を削減しやすい
FITでは売電価格が電気の購入価格と比べて高く設定されるため、適用期間の電気代コストを削減しやすいことは大きなメリットです。
とくに一般住宅では、10年間固定の買取価格による電気代削減効果を考慮すると、発電設備の導入コストを回収できる可能性も高いでしょう。
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カーボンニュートラルに貢献できる
FIT制度を活用することは、再エネ拡大の一端を担うことでもあります。政府・自治体はもちろん、昨今はカーボンニュートラルの目標を掲げる企業も少なくありません。
そのためFIT制度を通じてカーボンニュートラルに貢献できることもメリットの一つといえるでしょう。
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日本のエネルギー自給率向上につながる
FIT制度を活用して再エネ拡大に寄与することは、日本のエネルギー自給率向上に貢献することにもなります。
発電した電力を自家消費することも重要ですが、売電した再エネ電力も役立っていることを覚えておきましょう。
太陽光発電の普及率はどれくらい進んだ?太陽光発電の現在とは?
住宅向けを含む50kW未満の太陽光発電でFIT認定を受ける流れ
ここからは住宅向けを含む「50kW未満の太陽光発電」でFIT認定を受ける流れを紹介します。実務上は太陽光発電業者が協力してくれることが多いですが、全体像を掴んでおきましょう。いくつか同時並行で進めるステップもありますが、概ね次の表の流れで進みます。
参考:経済産業省|発電設備を設置するまでの流れ
法人向けなど50kW以上の太陽光発電でFIT認定を受ける流れ
法人設備で多い「50kW以上の太陽光発電」でFIT認定を受ける流れは次のとおりです。
参考:経済産業省|発電設備を設置するまでの流れ
個別の事例によって順番が前後することもありますが、あらかじめ電力会社から系統接続の同意を得る必要があることが前提です。複雑な流れとなっているため、太陽光発電業者と相談しながら進めるといいでしょう。
【法人向け】太陽光発電の売電に必要な手続きとは?申請の流れと売電の注意点
FIT制度の課題と未来
最後にFIT制度の抱える課題と、今後の見通しについても紹介します。
再生可能エネルギー発電促進賦課金の負担
再エネ賦課金によって、再生可能エネルギーが安定的に買い取られることは事実です。
ただし消費者へ負担がかかることから、再エネ賦課金の存在が問題視される側面もあります。電気料金高騰の原因の一つが再エネ賦課金だと考えている方もいるかもしれません。
しかし再エネ導入にかかる費用負担に、公平性を求める観点からみると、再エネ賦課金は理にかなった制度として、国が定めています。また、再エネ普及の持続可能性を高めるためにも、再エネ賦課金は今後も継続していくと考えられます。
改正再エネ特措法の施行で始まった「FIP制度」
改正再エネ特措法の施行により、2022年4月からは「FIP制度」の導入も始まっています。FIPは「Feed In Premium」の略称で、その名のとおり売電収入(参照価格)に「 プレミアム(補助金)」が加算されることが特徴です。
なお、FIP制度の対象は50kW以上とされています。個人住宅でも対象となるFIT制度とは異なり、FIP制度は法人・事業者向けの制度といえるでしょう。
FIP制度の参照価格は、市場価格に連動して変動する売電収入で機械的に決定されます。プレミアムを含めたFIP価格は、時期や時間帯などによる受給バランスによって変動するため、買取価格が一定であるFIT制度とは似て非なる制度です。
太陽光発電と蓄電池を組み合わせると、発電量の少ない時間帯に集中して売電することもできます。たとえば電力需要のピークに合わせて売電することで、FIT制度よりも多くの収益をあげられる可能性があることがポイントです。
法人として売電収益を最大化したい場合には、FIP制度の活用もご検討ください。
【法人向け】FIP制度とは?FIT制度との違いやメリット・デメリットを比較
初期費用0円の定額サービス
再生可能エネルギーの導入となると初期投資が必要となるイメージがあるかもしれません。しかし、FIT制度を利用しない初期費用0円で太陽光が導入できるサービスもあります。
PPA(Power Purchase Agreement)、すなわち第三者所有モデル(電力購入契約モデル)であれば、PPA事業者の負担で太陽光発電システムを設置可能です。電力需要家(企業や家庭など)は使用した電気に応じてサービス料を支払うだけなので、負担を抑えて再生可能エネルギーを導入できます。
京セラでは、法人向けと住宅向けにそれぞれPPAのサービスを展開しています。メーカーが直接提供していますので、製品の品質はもちろんのこと、契約期間中のメンテナンスなどを安心して任せることができます。
卒FITに向けた対策
FIT制度には期限があるため、買取価格が下がる期間終了後に向けた対策も必要となります。いわゆる「卒FIT」に向けた対策です。卒FIT後は買取価格が下がるため、売電するよりも、発電した電力を自家消費して電気購入量を削減するほうが経済的メリットが高まります。
自家消費量を増やすためには、「晴天時」に発電した電気を「荒天時や夜間」に消費できるよう蓄電池を導入しなければなりません。とくに住宅向け太陽光発電のFIT期間は10年であるため、徐々に卒FITを向かえる家庭も増えていきています。太陽光発電の費用対効果を最大限に高めたい方は、ぜひ蓄電池の導入も検討してみてください。
卒FIT後(固定価格買取制度 期間満了後)の対応とは?家庭でできる4つの方法をご紹介!
太陽光発電と蓄電池の両方を設置するメリット・デメリットとは?仕組みや特徴と合わせて解説
FIT制度の仕組みや特徴を理解し再エネを導入!
FIT制度は再生可能エネルギーを普及させ、カーボンニュートラルやエネルギー自給率向上を達成させるために重要な役割をはたしている制度です。
なお、今後は1,000kW(1MW)以上の発電所はFIP制度が適用されます。50kW〜1MW規模の発電所はFIT制度とFIP制度を選択できますが、法人向け太陽光発電はFITからFIPへの転換点を迎えているといえるでしょう。
また、FIT制度は固定価格での買取期間が決まっているため、FIT終了後に向けた対策まで考えておく必要もあります。住宅向けであれば蓄電池との併用により自家消費を向上させることも有効です。法人向け太陽光発電も蓄電池と併用することで、停電時のBCP対策になることもポイントです。FIT制度を活用しつつ、さらに太陽光発電のメリットを高めるために、住宅・法人ともに蓄電池を活用してみてください。
(更新日:2024年10月24日)
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