ZEHとは?
メリットや課題、コストを抑えて実現する方法を紹介!【住宅】

環境意識の高まり・エネルギー価格の高騰・住宅ローン情勢などを背景に、家庭でのエネルギー消費量を実質ゼロにする「ZEH」が注目を集めています。
ZEHにはさまざまなメリットがあるため、今まさにZEH実現を目指している方も多いのではないでしょうか。その一方、ZEHを実現するための初期費用をネックに感じている方もいるでしょう。
そこで、この記事ではZEHのメリットはもちろん、導入時の課題や、コストを抑えて実現する方法について詳しく解説します。新築住宅を建てようとしている方はもちろん、工務店の方にも役立つ情報を紹介するので、ぜひご参考になさってください。
【関連記事リンク】
新築住宅に太陽光発電は設置するべき?メリットや補助金情報を紹介!【住宅】
電気代の内訳とは?明細の見方や節約方法のご紹介!
一軒家(戸建て)の電気代はいくら?平均額や集合住宅との比較、節約方法を紹介!【住宅】
太陽光発電の設置費用はいくら?費用を抑える方法や投資回収もご紹介【住宅】

【目次】
ZEHとは
そもそもZEH(ゼッチ)とはnet Zero Energy Houseの略で、エネルギー収支を実質ゼロ以下にする家のことです。 つまりZEHでは、次の式が成り立ちます。
なお、再生可能エネルギーは太陽光発電などを用いることも特徴です。
参考:経済産業省|知っておきたいエネルギーの基礎用語 ~新しい省エネの家「ZEH」
ZEHには断熱・省エネ・創エネが必要

ZEHを実現するためには、太陽光発電で自家発電するだけではなく、家庭で使用するエネルギー量を一般家庭より大幅に減らす必要があります。
しかし、エネルギー消費量を減らすといっても、ただ節電に取り組むのではありません。断熱性能を高めることで冷暖房に使うエネルギーを抑え、快適な住環境を整えつつ省エネを実現するのがZEHの特徴です。
また、ZEHでは、冷暖房設備以外にも「LED照明」「高効率給湯器(エコキュート)」「高効率な換気システム(熱交換型)」などを取り入れ、一般家庭よりも少ないエネルギーで快適な暮らしを実現しています。
つまりZEHには「断熱」「省エネ」「創エネ」の3要素が必要ということです。
ZEHシリーズ及びZEH+の定義
さて、一口に「ZEH」といっても、実は性能によって細かく区分されていることも知っておきましょう。
令和7年度以降の区分は次のとおりです。
参考:経済産業省|令和7年度以降におけるZEH+(『ZEH+』及びNearly ZEH+)の定義変更について(761KB)
国土交通省|【参考】住宅における外皮性能(1.34MB)
赤色のフォント、赤色の枠の内容は令和7年度以降の区分で変更となった点
分類 | 要件 | ||||||
外皮基準(UA値)・単位:(W/㎡・K) | 一次エネルギー消費量削減率 | その他要件・備考 | |||||
地域区分 | |||||||
1・2 | 3 | 4 | 5~7 | 省エネのみ | 再エネ等含む | ||
ZEH | 0.40以下 | 0.50以下 | 0.60以下 | 0.60以下 | 20%以上 | 100%以上 | 再生可能エネルギーを導入 (容量不問・全量売電を除く) |
Nearly ZEH | 75%以上 100%未満 |
||||||
ZEH Oriented | ー | 下表の対象地域に該当 再生可能エネルギー未導入も可 |
|||||
ZEH+ | 0.28以下 | 0.28以下 | 0.34以下 | 0.46以下 | 30%以上 | 100%以上 | 再生可能エネルギーを導入 (容量不問・全量売電を除く) ※のうち1項目以上を満たす |
Nearly ZEH+ | 75%以上 100%未満 |
ZEH Oriented 対象地域 |
|
- ●一次エネルギーとは、自然界の物質(石油や天然ガスなど)から直接的に得られるエネルギーのこと。
一次エネルギーを変換・加工して得られる電気や都市ガスなどは二次エネルギーと呼ばれる。
このうちZEH+とは、一般的なZEHよりもさらに高性能な住宅のことです。
ZEH+は平成30年度に創設された区分ですが、令和7年度からはさらなる性能アップを目指し、次のように定義が変更されました。
- ZEH(またはNearlyZEH)要件を満たしている
- 基準一次エネルギー消費量からの削減率30%以上(従来は25%以上)
- 外皮性能について断熱等性能等級6以上の必須化
- 「高度エネルギーマネジメント」または「再エネの自家消費拡大措置」を採用している
条件や違いをしっかり押さえておきましょう。
ZEHにするメリット

- 光熱費が削減される
- 環境に貢献できる
- 快適な室内環境と健康の維持につながる
- 災害対策になる(蓄電池がある場合)
- 住宅ローンの金利が引き下げられる
- 住宅ローン減税が優遇される
- 高い売却価値が期待できる
それぞれのメリットについて詳しく見ていきましょう。
光熱費が削減される
ZEHはエネルギー収支が実質ゼロ以下であるため、一般住宅に比べて光熱費を大幅に削減できます。
必ずしも光熱費(電気代)が0円になるわけではありませんが、光熱費が高騰している情勢において、これは大きなメリットといえるでしょう。
家計負担を減らしたい方は、ぜひZEHを検討してみてください。
環境に貢献できる
ZEHはそもそも必要とするエネルギーが少なく、さらに生活に必要なエネルギーは自家発電分で賄えるため、化石燃料由来の電気を削減できます。
そのため、温室効果ガス排出量を抑制でき、環境に貢献できる点もZEHならではのメリットといえるでしょう。
快適な室内環境と健康の維持につながる
ZEHは高気密・高断熱であるため、家中の室温を一定に保ちやすいことが特徴です。そのためお風呂上がりの「ヒートショック」リスクも低減されます。
また、エアコンの使用を抑えながらも快適な室内環境を実現できるため、エアコン使用による結露、結露によるカビ・ダニの繁殖などを防げる点もメリットです。アレルギーなどの健康リスクを低減したい方こそ、ZEHを実現するといいでしょう。
災害対策になる(蓄電池がある場合)
ZEHは太陽光発電で創り出した電気を最大限に活用するために、蓄電池を導入しているケースが多いです。蓄電池は平時にも役立ちますが、災害時には非常用電源としても役立ちます。
実は太陽光発電があっても、停電時にはリアルタイムで発電している間しか家庭内で電気を使えません。しかし蓄電池も併用すれば、夜間や悪天候時にも電気を使えるのです。
住宅ローンの金利が引き下げられる
昨今は多くの金融機関が、環境配慮型住宅(ZEHや長期優良住宅など)を購入・新築する場合の住宅ローン金利を優遇するプランを用意しています。金利が下がれば毎月の住宅ローン返済額も減りますから、これは大きなメリットといえるでしょう。
たとえば、フラット35を利用してZEHを取得する場合、当初5年間の金利が0.75%も引き下げられます。民間金融機関もさまざまなプランを用意しているため、ぜひ銀行ホームページなどでご確認ください。
参考:独立行政法人住宅金融支援機構|【フラット35】S(ZEH)
住宅ローン減税が優遇される
ZEHは住宅ローン減税においても優遇されています。
そもそも2024・2025年に新築住宅に入居する場合、省エネ基準を満たさない新築住宅は住宅ローン減税の対象外です(2024年1月以降に建築確認を受けた新築住宅の場合)。
新築住宅で住宅ローン減税を受けるためには、以下のいずれかに適合している必要があり、それぞれ減税条件が異なります。
種別 | 住宅ローン減税の対象となる年末残高の上限 | 令和7年以降に居住した場合の控除限度額 |
長期優良住宅 低炭素住宅 |
子育て世帯・若者夫婦世帯:5,000万円 その他の世帯:4,500万円 |
31.5万円 |
ZEH水準省エネ住宅 | 子育て世帯・若者夫婦世帯:4,500万円 その他の世帯:3,500万円 |
24.5万円 |
省エネ基準適合住宅 | 子育て世帯・若者夫婦世帯:4,000万円 その他の世帯:3,000万円 |
21万円 |
その他の住宅 | 0円 | ー |
新築住宅で住宅ローン減税を受けるためには、以下のいずれかに適合している必要があり、それぞれ減税条件が異なります。
参考:国税庁|住宅の新築等をし、令和4年以降に居住の用に供した場合(住宅借入金等特別控除)
一定額の減税を受けられる点も、ZEHにするメリットの1つです。
高い売却価値が期待できる
省エネ性能の高いZEHには、ここまで紹介してきたとおり数多くのメリットがあるため、将来的な売却・資産運用を考えた際にも優位に働く可能性があります。
たとえば、既存住宅を購入する場合の住宅ローン減税も、一般住宅よりZEHのほうが優遇されているため、購入希望者を見つけやすいでしょう。
また、環境に配慮した住宅と評価してもらえる点もメリットです。さらに太陽光発電や蓄電池があることで、災害に強い住宅としてのニーズもあります。
ZEHを実現する際の課題と注意点

- 初期費用が高くなる
- 太陽光発電などのメンテナンス費用もかかる
- 地域・天候による発電量の変化がある
- 家の設計や間取りに制約がかかることがある
それぞれ詳しく解説します。
初期費用が高くなる
ZEHを実現するためには高気密・高断熱であることはもちろん、太陽光発電設備も不可欠で、さらに蓄電池の導入も推奨されます。
これら設備をすべて導入するとなると、補助金があったとしても一般住宅より初期費用負担が大きいことは課題といえるでしょう。
太陽光発電と蓄電池の価格相場は?オトクな設置方法とあわせて解説!【住宅・法人】
太陽光発電などのメンテナンス費用もかかる
太陽光発電は導入して終わりではなく、定期的にメンテナンスしなければなりません。
経済産業省の調達価格等算定委員会が一般社団法人太陽光発電協会へヒアリングしたところ、5kWの設備を想定した場合のメンテナンス費用は次のとおりでした。
- 点検費用:1回あたり約4.1万円(3~5年ごとに1回程度が推奨)
- パワコン交換費用:42.3万円程度(20年間に1回)
以上をkWあたりの年間運転維持費に換算すると、約6,300円/kW/年となります。
2025年度の想定値は3,000 円/kW/年でしたが、人件費・資材費が上昇しているため、想定を上回って推移していることが分かります。
現在のインフレ傾向が続くと、今後もメンテナンス費用が上昇していく可能性がある点は留意しておくべきでしょう。
参考:経済産業省|令和7年度以降の調達価格等に関する意見(10.6MB)
地域・天候による発電量の変化がある
ZEHは太陽光発電によってエネルギー収支実質ゼロ以下を目指しますが、発電量や地域・天候によって左右されます。そのため、ZEHを実現するためには事前に発電量をシミュレーションし、家庭で使用するエネルギー量をまかなえる容量の太陽光発電を導入しなければならないのです。
下記ページで太陽光発電・蓄電池を導入した場合のシミュレーションが可能なため、ぜひ一度お試しください。
家の設計や間取りに制約がかかることがある
ZEHの実現には、住宅を高気密・高断熱にしなければなりません。しかし、そのためには窓の位置や大きさ、屋根形状などに制約が生じることもあります。
さらに、創エネ設備を効率的に配置するためには、設計段階からのプランニングが不可欠です。たとえば、太陽光発電の設置には十分な屋根面積や日当たりが必要です。そのため自由に設計や間取りを変えられない可能性があることも知っておきましょう。
ZEHに関する補助金
さて、ここまで何回かZEHに関する補助金に触れてきましたが、改めて補助金の種類や注意点について紹介します。
国の補助金
国主導のZEH補助事業は「ZEH補助金」と呼ばれており、2030年度の家庭部門排出量削減目標の達成、2050年カーボンニュートラルに向けた政府目標の達成に寄与することを目的に、条件を満たした新築住宅の建築・購入に際して補助金が支給されます。具体的な補助額は次のとおりです。
- ZEH・Nearly ZEH・ZEH Oriented:55万円/戸
- ZEH+・Nearly ZEH+:90万円/戸
また、蓄電システムや高度エネルギーマネジメントシステムなどを導入する場合、補助額が追加されます。
参考:一般社団法人環境共創イニシアチブ|2025年の経済産業省と環境省のZEH補助金について(923KB)
地方自治体の補助金
独自のZEH向け補助事業を展開している地方自治体もあります。たとえば、神奈川県は県としてZEH導入費に対して補助金を給付しており、さらに平塚市や逗子市なども独自に補助事業を展開しています。
- ● 神奈川県のネット・ゼロ・エネルギー・ハウス導入費補助金について、令和7年度分は受付終了しています。来年度以降の情報を注視しましょう。
参考:神奈川県|令和7年度神奈川県ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス導入費補助金
申請手続きと注意点
ZEHに関する補助金の申請手続きや注意点についても見ていきましょう。
まず、補助金は先述した「ZEH」「ZEH+」などの分類によって支給額が異なります。申請時にはそれぞれの分類ごとの条件を満たしている必要があり、複雑に感じるかもしれませんが、申請手続きは事業者が対応・サポートしてくれるケースが多いです。
ただし、国主導の「ZEH補助金」については、SII(環境共創イニシアチブ)に登録されている「ZEHビルダー/プランナー」が関与(建築・設計・販売)する住宅でなければ対象とはなりません。また、一年度ごとの補助額には上限があるため、年度末に申し込んでも補助を受けられない可能性があります。
また、地方自治体主導の補助事業にも、住宅購入者・住宅施工者の条件が設けられているケースが多いため、あらかじめご確認ください。
参考:一般社団法人環境共創イニシアチブ|2025年の経済産業省と環境省のZEH補助金について(923KB)
初期費用・メンテナンス費用を抑えてZEHを実現するにはPPAがおすすめ
ZEHは経済的・環境的・健康的にもメリットが多く、さらに災害にも強いことが特徴です。ただし一般住宅より高性能で、なおかつ太陽光発電設備が必要なため、初期費用が高い点はデメリットといえるでしょう。
もし太陽光発電・蓄電池を導入してZEHにしたいものの、初期費用がネックになっている場合は、初期費用0円で太陽光発電・蓄電池を導入できる京セラのエネルギーシステム定額サービス 「ハウスマイルe」 をご検討ください。
ハウスマイルeはPPAサービスであるため、太陽光発電・蓄電池の導入費用はもちろん、契約期間中のメンテナンス費用も0円です(PPAとは電力購入契約|Power Purchase Agreementのこと)。
ハウスマイルeなら太陽光発電システム・蓄電システムの容量は多彩なプランの中から選ぶことができるため、ZEH実現に役立てやすいことも特徴です。 新築住宅購入者はもちろん、工務店からのご相談もお待ちしております。

- ●「HOUSmile(ロゴ)」は京セラ株式会社の登録商標です。
【関連記事リンク】
新築住宅に太陽光発電は設置するべき?メリットや補助金情報を紹介!【住宅】
電気代の内訳とは?明細の見方や節約方法のご紹介!
一軒家(戸建て)の電気代はいくら?平均額や集合住宅との比較、節約方法を紹介!【住宅】
太陽光発電の設置費用はいくら?費用を抑える方法や投資回収もご紹介【住宅】