太陽光発電の売電価格はいくら?
今後の動向やFIT・FIP制度を解説!【住宅・法人】
太陽光発電導入の費用対効果を検証するときは、売電価格を知る必要があります。導入期間中に「売電で手に入る収入」+「削減できる電気代」を足した金額が「導入費用」を上回っていれば、太陽光発電を設置したほうがいいと判断できるでしょう。
この記事では、住宅・法人それぞれの太陽光発電の売電価格はいくらなのか、FIT・FIP制度の仕組みや、今後の動向をあわせて解説します。太陽光発電の導入を検討している方は、ぜひ参考にしてみてください。
【関連記事リンク】
太陽光発電の仕組みを図解でかんたん解説!特徴や基礎知識もご紹介!
FIT制度(固定価格買取制度)とは?売電時の仕組みやメリット・注意点を解説!
再生可能エネルギー(再エネ)とは?種類や特徴、メリット・デメリットを解説!
【目次】
・太陽光発電の売電制度
・太陽光発電の売電価格の推移
・2024年/2025年最新!太陽光発電の売電価格区分
・太陽光発電の売電価格の今後の動向予測
・太陽光発電の売電価格低下に備えた対策
・太陽光発電の売電価格の動向と導入メリットをチェック!
太陽光発電の基本情報
まずは太陽光発電の基本情報として、売電の仕組みや注目されている背景について紹介します。
太陽光発電の仕組み
シリコン半導体に光が当たると、電気が発生します。この性質を利用しているのが太陽光パネル(太陽電池モジュール)です。下記の図のように、太陽光パネルには「N型半導体(表面)」と「P型半導体(裏面)」が使われており、太陽の「光エネルギー」を直接「電気エネルギー」に変換しています。
この発電の過程で、二酸化炭素などの温室効果ガスが排出されることはありません。また、太陽光は化石燃料のように枯渇することもないため、太陽光発電はクリーンな再生可能エネルギーの一種とされています。
太陽光発電の仕組みを図解でかんたん解説!特徴や基礎知識もご紹介!
そして太陽光発電で作られた電力のうち、「余剰電力」を買取対象とする制度が2009年に開始されました。いわゆるFIT制度です。その後、発電した電力全てが買い取りの対象となる「全量売電」もできるよう制度が整えられました。FIT制度では太陽光発電をはじめとする再生可能エネルギーを、電力会社が「一定価格」で「一定期間」にわたって買い取ることを「国」が約束しています。
FIT制度(固定価格買取制度)とは?売電時の仕組みやメリット・注意点を解説!
太陽光から発電する流れと、売電(余剰電力) ・買電の流れを表したのが次の図です。
- ※1電力会社の系統の状況により、逆潮流電力(需要者側から電力系統側に送る電力)が制限され、太陽光発電システムからの売電電力量が少なくなる可能性があります。 このような状況が頻繁に発生する場合は、電力系統側での対策が必要な場合がありますので、販売窓口にご相談ください。
- ※2蓄電池で貯めた電気を売電することはできません。
●図は、晴れの日の平常時のイメージです。 ●建築基準法施行令第86条による垂直積雪量の荷重が、太陽光発電システムの製品仕様を超える場合は設置できません。 ●PC/タブレット/スマートフォンは付属していません。また、全てのPC/タブレット/スマートフォンに対して、表示を保証するものではありません。 ●蓄電システムに必要なパワーコンディショナ、リモコン、通信モデム、関連機器・部材は図に記載しておりません。
太陽光発電では消費電力をまかなえない場合は、電力会社から「買電」します。そして太陽光発電で生み出した電気は自家消費したり蓄電池に貯めたりし、さらに余った電力については電力会社へ「売電」するため、太陽光発電がない状態よりは電気代の実質負担を下げられることがポイントです。
太陽光発電が注目される背景
- 電気代の負担を減らせる
- カーボンニュートラル・SDGsに貢献できる
- 環境経営の実践につながる
日中の消費電力を自家発電で賄うことができれば、電力会社からの電力購入量を減らすことが可能です。燃料費の高騰や、世界的な情勢不安からエネルギー価格が上昇し、付随して電気代が値上がりしている現在のような場面では、電気代削減効果はより大きくなります。
また、昨今では脱炭素の目標を掲げる企業も増えていますが、太陽光発電は発電時に二酸化炭素を排出しないため、カーボンニュートラル・SDGsに貢献できることもポイントです。
企業のメリットとしては、太陽光発電の導入が環境経営の実践になることも覚えておきましょう。環境経営(環境配慮経営)とはその名のとおり、地球環境に配慮した経営のことです。二酸化炭素を排出しない太陽光発電を活用することは、企業の環境負荷を軽減することにつながります。これによって企業の社会的責任(CSR)を果たすことにもなり、さらにESG投資の対象となりうることも太陽光発電を導入するメリットです。
太陽光発電の費用対効果は?計算方法や効果を高める方法を解説!【住宅】
ESG投資とは?企業がESG投資を意識した経営をするメリットをご紹介!
太陽光発電の売電制度
太陽光発電の売電制度には、FIT制度とFIP制度の2種類が存在します。
比較項目 | FIT制度 | FIP制度 |
買取価格 | 固定価格 | 変動価格 |
対象 | 住宅向け・法人向け | 法人向け (50kW以上) |
非化石価値 | なし | 取引可能 |
インバランス | インバランス特例により免責 | 発電計画値の報告義務あり 計画値と実績値に差があるとペナルティー |
それぞれの特徴をさらに詳しく見ていきましょう。
FIT制度(住宅・法人)
FITとは「Feed-in Tariff(固定価格買取)」の略であることから分かるとおり、買電価格が一定である制度です。
発電容量が「10kW未満」(住宅向け)の太陽光発電の買取期間は10年間、それより大規模な「10kW以上50kW未満」「50kW以上」(事業者向け)の太陽光発電の固定価格買取期間は20年間とされています。
参考:経済産業省|買取価格・期間等(2024年度以降)
需要家(電力消費者)から徴収されている「再エネ賦課金(再生可能エネルギー発電促進賦課金)」は、電力会社が再生可能エネルギーに由来する電気を買い取る費用の一部に充当されていることも特徴です。
企業や一般住宅などの太陽光発電導入を促進するために設立された制度ですが、年々売電価格の水準は低下しており、経済的メリットが薄くなっていることが指摘されています(売電価格の推移については記事後半で詳しく紹介します)。
FIT制度(固定価格買取制度)とは?売電時の仕組みやメリット・注意点を解説!
FIP制度(法人)
FIPとは「Feed In Premium」の略称で、「売電収入」に「プレミアム(補助金)」が加算される制度です。FITは住宅・法人の双方に適用される制度ですが、FIP制度の対象は50kW以上とされていることを鑑みると、FIPは法人向け(事業者向け)の制度といえます。
FIT制度では電力市場の需給バランスにかかわらず買取価格が決まります。しかし先述したとおり、この買取価格の原資には再エネ賦課金が充てられているため、消費者の負担が大きいことも事実です。
FIPはこの課題を解決するため、「電力市場の完全自由競争」と「再生可能エネルギーの主力化」の両立を目指すために設立されました。
【法人向け】FIP制度とは?FIT制度との違いやメリット・デメリットを比較
太陽光発電の売電価格の推移
FIT制度下の調達価格1kWhあたりの売電価格の推移を一覧表で見ていきましょう。
2012年度~2024年度までの長期推移(調達価格1kWh当たり)
年度 | 10kW未満 | 10kW以上50kW未満 |
2012年度 | 42円(税込) | 40円(税抜) |
2013年度 | 38円(税込) | 36円(税抜) |
2014年度 | 37円(税込) | 32円(税抜) |
2015年度 | 33円(税込) | 29円(税抜) |
2016年度 | 31円(税込) | 24円(税抜) |
2017年度 | 28円(税込) | 21円(税抜) |
2018年度 | 26円(税込) | 18円(税抜) |
2019年度 | 24円(税込) | 14円(税抜) |
2020年度 | 21円(税込) | 13円(税抜) |
2021年度 | 19円(税込) | 12円(税抜) |
2022年度 | 17円(税込) | 11円(税抜) |
2023年度 | 16円(税込) | 10円(税抜) |
2024年度 | 16円(税込) | 10円(税抜) |
参考:経済産業省|買取価格・期間等(2012年度~2023年度)
(年度によって「50kW以上250kW未満」「10kW以上2,000kW未満」「10kW以上」など枠組みに差異がありますが、便宜的に2023年度に採用されている「10kW以上50kW未満」の枠組みで記載しています。)
このようにFIT価格は年々下落傾向にあり、10年前と比べると半分以下となっています。ただし2022年以降の下落幅は緩やかになっており、今後の動向には注視が必要です。
2024年/2025年最新!太陽光発電の売電価格区分
つづいて最新情報として、2024年度・2025年度のFIT価格・区分を見ていきましょう。
2024年度・2025年度のFIT価格
電源 | 規模 | 2024年度 | 2025年度 |
住宅用太陽光発電 | 10kW未満 | 16円(税込) | 15円(税込) |
事業用太陽光発電 (地上設置) |
10kW以上 50kW未満 |
10円(税抜) | 10円(税抜) |
50kW以上 入札対象外 |
9.2円(税抜) | 8.9円(税抜) | |
事業用太陽光発電 (屋根設置) |
10lW以上 50kW未満 |
12円(税抜) | 11.5円(税抜) |
50kW以上 |
参考:経済産業省|再生可能エネルギーのFIT制度・FIP制度における2023年度以降の買取価格等と2023年度の賦課金単価を設定します
2024年以降のFIT価格については、太陽光発電の容量のみならず、設置場所によっても買取価格が変わることが特徴です。
なお、50kW以上の発電所のうち、50kW〜1,000kW(1MW)規模の太陽光発電であれば、FIT制度・FIP制度のどちらを適用するか選択できます。1,000kW以上の太陽光発電は必ずFIP制度の対象となるため注意してください。
また、翌年度の買取価格・買取期間については、年度開始前までに定められます。2024年度以降のFIT価格が2024年3月19日に発表されたように、例年3月末に情報がリリースされることも覚えておきましょう。
太陽光発電の売電価格の今後の動向予測
年々下落している太陽光発電の売電価格ですが、今後はどのように推移していくのでしょうか。
資源エネルギー庁が2022年12月に公表した資料 「太陽光発電について」(3.14MB) では、2025年の買取価格目標を事業用太陽光発電(10kW以上)は7円、住宅用太陽光発電(10kW未満)は卸電力市場価格水準としています。
2024年3月に公表された実際の2025年FIT価格は、事業用太陽光発電が8.9円〜11.5円、住宅用太陽光発電が15円だったため、目標値より若干高い水準で推移してきたといえるでしょう。
しかし太陽光発電システムの導入コストが下がっていることや、再エネ賦課金の負担に対する批判的な声も存在していることをふまえると、今後もFITによる売電価格が減少していくと予想されます。
太陽光発電の売電価格低下に備えた対策
しかし太陽光発電を導入することには、売電収入を得る以外にも、電気代負担を削減したりカーボンニュートラルに寄与したりとさまざまなメリットが存在します。
つまり今後は、売電価格が低下したとしても太陽光発電設置の採算が取れるよう、費用対効果を最適化していくことが求められます。
太陽光発電の売電価格減少に備えて取りうる対策としては、次の4つが代表例です。
- 自家消費量を増やす【住宅・法人】
- 補助金を活用して設置する【住宅・法人】
- 長寿命の太陽光パネルを選ぶ【住宅・法人】
- FIP制度で売電する【法人】
自家消費量を増やす【住宅・法人】
「太陽光発電の設置費用 < 売電収入+電気代削減効果」が実現できるのであれば、太陽光発電を設置する経済的メリットがあると判断できます。
売電価格が下がっている情勢をふまえると、売電ではなく電気代を削減することにフォーカスしたほうがいいでしょう。つまり自家消費量を増やすということです。自家消費量を増やすためには、蓄電池の活用をおすすめします。下記は蓄電池を導入した住宅での電力利用イメージです。
日中に貯めた電力を夜間に使うことで自家消費量を増やせることが分かります。
また、法人の場合は蓄電池の導入によりピークシフト・ピークカットを実現することも可能です。これによって電気代をより一層削減できることも覚えておきましょう。
太陽光発電と蓄電池の両方を設置するメリット・デメリットとは?仕組みや特徴と合わせて解説
蓄電池を設置するデメリットとは?メリットと導入する際のポイント
補助金を活用して設置する【住宅・法人】
太陽光発電の費用対効果を判断する「太陽光発電の設置費用 < 売電収入+電気代削減効果」の式からも分かるとおり、たとえ売電収入が少なくなったとしても、太陽光発電の設置費用負担を減らすことができれば採算が合うでしょう。
太陽光発電設置に伴う自己負担額を減らすためには、補助金の活用がおすすめです。
しかし太陽光発電の単体設置で適用される国の補助事業は、一部の法人向け補助事業を除き存在しません。ただし蓄電池も併せて導入することで、太陽光発電が補助対象となるケースも多いです。
また、各自治体が主導する補助事業では、住宅向け太陽光発電の単体設置も補助対象となっていることもあります。まずは自治体のホームページをご確認ください。
令和6年度の住宅用太陽光発電導入に使える補助金を紹介!【2024年10月】
令和6年度の法人向け太陽光発電補助金情報を紹介!【2024年5月】
しかし補助金を利用するといっても、少なからず自己負担額が発生することも事実です。
もし初期費用を最小限に抑えたい方は、PPAサービスの利用も検討してみてください。PPAとは太陽光発電を初期投資0円で設置し、発電電力のうち利用した部分のサービス料のみを支払う契約形態です。ただし、サービス内容によって売電ができないケースがありますので、PPAサービスを検討する場合は、サービス料金とあわせて売電の扱いがどうなっているかを確認して費用対効果を試算すると良いでしょう。
京セラでは住宅向け・法人向けそれぞれにPPAサービスを提供しているため、ぜひお気軽にお問い合わせください。
長寿命の太陽光パネルを選ぶ【住宅・法人】
太陽光発電の売電は10年〜20年と長期にわたった契約です。自家消費をメインに運用する場合、30年以上は利用し続けることになります。
しかし一般的な太陽光パネルの寿命は20年〜30年です。また、寿命が尽きて突然発電されなくなるわけではなく、経年劣化によって発電量が徐々に落ちていきます。寿命の短い太陽光パネルを選んでしまうと思ったように発電量が延びず、売電量・自家消費量ともに低迷してしまうのです。
メーカーによって太陽光パネルの製品寿命は異なります。そのため長期にわたって発電量を維持できるよう、実績のあるメーカーを選ぶようにしましょう。
京セラの太陽光パネルは長期信頼性が高いことで知られており、住宅用・法人用それぞれ多くの長期使用実績があります。
京セラ佐倉事業所の太陽光パネルは設置から36年目の2021年時点で発電出力低下率は17.2%※3に留っています。
- ※3実績データをベースに、さらに出力特性の測定精度・ばらつきなど、外的要因も考慮した数値。当社調べ。
また、1990年代に設置された全国各地の京セラの太陽光発電システムが、長期稼働記録を更新※4しています。
写真は、広島県・大分県の公共・産業用太陽光発電です。
広島広域公園様 広島フィルム・コミッション撮影(1992〜稼働)
大分県産業科学技術センター様(1993〜稼働)
- ※42024年4月12日時点で稼働中のもの。
FIP制度で売電する【法人】
法人として売電を続けるなら、FITではなくFIPへ移行したほうが売電収入を増やせるでしょう。
先述したとおり、FIPとは「売電収入」に「プレミアム」が加算される制度です。
FIP制度下の売電価格は市場価格と連動しており、1ヶ月単位で見直されます。需給バランスに応じて売電価格が変わるため、取引戦略次第ではより高い収益が見込めることが特徴です。
FITと比べると中長期的な収益予想を立てづらいことも事実ですが、売電収入の最大化を目指したい場合には、FIPへの移行を検討してみてください。
太陽光発電の売電価格の動向と導入メリットをチェック!
ここまで紹介してきたとおり、長期的に見ると売電価格は減少傾向にあります。この傾向は今後も続くことが予想されるため、以前と比べると太陽光発電を導入するメリットが減ってしまったと感じる方もいるかもしれません。
しかし自家消費による電気代削減効果などをふまえると、法人・住宅ともに太陽光発電を導入することには依然としてメリットも多く存在します。
とくに太陽光発電と蓄電池を組み合わせることで、メリットを最大化させられることがポイントです。昨今は太陽光発電導入とあわせて蓄電池を「導入するケース」のほうが、「導入しないケース」よりも経済的メリットが大きい状態である「ストレージパリティ」という概念も注目されています。
法人向けの補助金として「ストレージパリティの達成に向けた太陽光発電設備等の価格低減促進事業」が用意されていることなどをふまえると、今後も太陽光発電と蓄電池の同時導入が推進されていくと考えられます。
太陽光発電の売電価格減少に備えるためにも、ぜひ蓄電池の同時導入もご検討ください。
(更新日:2024年10月24日)
【関連記事リンク】
太陽光発電の仕組みを図解でかんたん解説!特徴や基礎知識もご紹介!
FIT制度(固定価格買取制度)とは?売電時の仕組みやメリット・注意点を解説!
再生可能エネルギー(再エネ)とは?種類や特徴、メリット・デメリットを解説!