GX(グリーン・トランスフォーメーション)とは?
意味やメリットを分かりやすく解説!【法人】
世界的に環境保護の機運が高まるなか、GX(グリーン・トランスフォーメーション)が注目されています。社会的な責任を果たすため、「GXに取り組む」という目標を掲げる企業も増えてきました。
そのような中で、GXが具体的にどのような取り組みか、詳しくお知りになりたいとお考えの方もいらっしゃるのではないでしょうか。
そこで今回は、GXの意味やメリットを分かりやすく解説します。企業がGX実現のために取り組めることも紹介するので、ぜひご参考になさってください。
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【目次】
GXの定義
GXとはグリーン・トランスフォーメーション(Green Transformation)の略で、エネルギーの安定供給・経済成長・温室効果ガスの排出削減の同時実現を目指すことです(DX、つまりデジタルトランスフォーメーション(Digital Transformation)と同じく、接頭辞”Trans”がXと略されます) 。
産業革命以来、人類は化石燃料を利用して発展してきましたが、化石燃料を使う時に排出される温室効果ガスにより地球温暖化が進んでいることは、多くの方がご存知でしょう。
このような産業構造をクリーンエネルギー中心に移行させ、経済社会システム全体を抜本的に変革(Transform)するために、世界的にGXが推進されているのです。
日本政府も「脱炭素成長型経済構造への円滑な移行の推進に関する法律(2023年度成立)」や「GX2040ビジョン(2025年2月閣議決定)」に基づき、GXの実現に向けてさまざまな取り組みをしています。
参考:経済産業省|GX(グリーン・トランスフォーメーション)
GXが重視される背景
GXは「エネルギーの安定供給」「経済成長」「温室効果ガスの排出削減」の同時実現を目指すことですが、これら3要素の観点から、なぜ日本でGXが重視されているのか、より詳しく見ていきましょう。
エネルギーの安定供給の重要性
日本は化石燃料資源に乏しく、エネルギーのほとんどを輸入に頼っています。日本のエネルギー自給率は2022年度時点で12.6%と、世界的に見ても低い水準です。
低自給率によるリスクは以前より懸念されていましたが、2022年に始まったロシアによるウクライナ侵略をはじめ、イスラエル・パレスチナ情勢の悪化、海上交通の要衝でのトラブルなどによりエネルギー価格が高騰し、国民生活に大きな影響を与えています。
さらに世界情勢が不安定化すると、国内で必要なエネルギーを確保できない事態に発展するおそれもあり、エネルギー安全保障への早急な対策が求められているのです。
参考:経済産業省|日本のエネルギー自給率は1割ってホント?
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しかし日本で化石燃料を採掘することは現実的ではありません。そこで注目されているのが「再生可能エネルギー(通称:再エネ)」です。
再エネとは一度利用したあとも持続的に利用できるエネルギーのことで、太陽光・風力・水力・地熱などが挙げられます。これらは日本国内でも調達できるため、エネルギーを安定供給できるのではと期待されています。
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経済成長と温室効果ガスの関係性
先述したとおり、産業革命後の経済・社会は化石燃料を中心に動いています。
人類が快適な生活を手に入れたのは、化石燃料のおかげと言っても過言ではありません。
ただし、化石燃料を利用する際に排出される二酸化炭素(CO₂)などの温室効果ガスによって、地球温暖化が深刻化していることも事実です。
実際、2011〜2020年の世界平均気温は、産業革命前(1850〜1900年)よりも約1.09℃上昇しました(参考:環境省|IPCC 第6次評価報告書 統合報告書 政策決定者向け要約(3.66MB))。
今後も化石燃料を今のペースで使い続けると、さらに気候が変動してしまう可能性が高いです。
しかし、経済成長を止めることは現実的ではありません。このような中、温室効果ガスを出さないエネルギー源として再エネが注目されています。
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2050年カーボンニュートラルに向けた排出削減の必要性
環境保護の観点から、世界的にカーボンニュートラルを目指す国が増えています。
カーボンニュートラルとは「温室効果ガスの排出を全体としてゼロにすること」です。下記の画像のように、温室効果ガスの排出量を減らしつつ、同時に植林・森林管理などによって温室効果ガスを吸収することで、排出量の実質ゼロを目指します。
日本政府も2020年10月に「2050年カーボンニュートラル、脱炭素社会の実現を目指す」と宣言していますが、ここでもやはり再エネの活用が注目されています。
ここまで紹介したポイントをまとめると、再エネを活用すれば化石燃料資源の乏しい日本でもエネルギーの安定供給が期待でき、さらにエネルギーを使用しても温室効果ガスを排出しないため、経済成長しながらカーボンニュートラルを達成することも不可能ではありません。
再エネをどのように活用していくかが、GXの鍵と言えるでしょう。
GXの関連用語を整理
GXについてより理解を深めるために、知っておきたい関連用語の意味も整理しておきましょう。
低炭素
低炭素とは、温室効果ガスの排出量を「減らす」社会のことです。
大気中の温室効果ガス濃度を、気候に悪影響を及ぼさない水準で安定化させることを目指します。
脱炭素
脱炭素とは、温室効果ガスの排出量を「ゼロに近づける」「ゼロにする」社会のことです。
低炭素より進んだ状態で、実現する難易度は高いといえるでしょう。
カーボンニュートラル・ネットゼロ・ゼロカーボン
カーボンニュートラルは先述したとおり、温室効果ガスの排出量実質ゼロを目指す取り組みのことです。
2015年に採択された「パリ協定」の要点の一つで、脱炭素より現実的な目標として多くの国・企業が2050年までのカーボンニュートラル達成を目指しています。
ネットゼロやゼロカーボンも、カーボンニュートラルと同義です。
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カーボンネガティブ・カーボンマイナス
カーボンネガティブ(カーボンマイナス)は、温室効果ガスの排出量より、森林・CCUS(CO₂の回収・有効活用・貯留技術)などによる吸収量のほうが多い状態のことです。
カーボンニュートラルよりさらに進んだ状態だと言えます。
カーボンクレジット
カーボンクレジットとは排出削減の取り組み結果を認証したもので、「カーボンクレジット市場」で取り引きできます。
CO₂の排出削減の取り組みに経済的価値をつけられるため、企業へのメリットが大きい制度だと言えるでしょう。
なお、日本政府が主導する「J-クレジット」もカーボンクレジットの一種です。
カーボンオフセット
カーボンオフセットは、排出せざるをえなかった温室効果ガスについて、他の場所での排出削減・吸収活動への投資などで埋め合わせることです。
たとえば排出した温室効果ガス量に見合うカーボンクレジットを購入すれば、排出量が相殺されます。
カーボンプライシング
カーボンプライシングは、企業が排出するCO₂に価格をつけることです。
先述した「カーボンクレジット」もカーボンプライシングの一種ですが、他に「炭素税」を課すことで企業に排出量削減を促す手法なども存在します。
脱炭素ドミノ
脱炭素ドミノは、ある地域で成功した脱炭素化の取り組みを、他の地域にもドミノのように広げていくことです。
日本政府は2050年のカーボンニュートラルを目指していますが、そのために2030年までに全国でできるだけ多くの脱炭素ドミノを生じさせるよう施策を進めています。
GX実行会議
GXに必要な施策を検討するための政府機関が「GX実行会議」です。
2022年に官邸に設置され、議長は内閣総理大臣、副議長をGX実行推進担当大臣、内閣官房長官が務めています。
これまでに日本のエネルギーの安定供給の再構築に必要となる方策や、脱炭素に向けた産業構造変革へのロードマップなどを策定してきました。
参考:環境省|GX実行会議について(1.36 MB)
GXリーグ
2050年のカーボンニュートラル実現・社会変革を見据えてGXへ挑戦する企業が、同様の取組を企業群や官・学と協働する場として創設されたのがGXリーグです。
排出量取引制度(GX-ETS)を創出したり、企業間交流(GXスタジオ/GXサロン)を促進したりするなど、さまざまな施策に取り組んでいることが特徴です。
グリーンウォッシュ
グリーンウォッシュはマーケティング手法の一つで、実態以上に環境へ配慮しているかのように見せかけ、消費者などの印象を良くしようと試みることです。
これはGXに逆行する行為ともいえ、欧州では規制の対象とされています。
日本でも環境配慮にまつわる根拠のないキャッチコピーなどは、消費者庁による行政処分の対象となりうるため注意してください。
参考:環境省|CFP表示ガイドの作成に向けて国際的なグリーンウォッシュ規制の動向(1.01MB)
RE100(Renewable Energy 100%)
RE100(Renewable Energy 100%)は、事業用電力の100%を再エネで賄うことを目指す国際的なイニシアティブです。GXのビジョンと同じく、気候変動対策をしつつ、同時に経済成長する未来を目指しています。
なお、RE100は大企業向けの枠組みですが、中小企業向けの「再エネ100宣言 RE Action」という枠組みも注目されています。
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GHGプロトコル(温室効果ガスプロトコルイニシアチブ)
GHGプロトコルは、国際的に認められた温室効果ガス排出量の算定報告基準のことです。
GHGプロトコルでは製造〜廃棄までのサプライチェーンにおける排出量を、次の3つに分類しています。
- スコープ1:事業者が直接排出する温室効果ガス
- スコープ2:事業者が間接排出する温室効果ガス
- スコープ3:原材料仕入れ・販売後に排出される温室効果ガス
自社の温室効果ガス排出量を算定する際は、GHGプロトコルを参考にするといいでしょう。
SBT(排出削減目標設定)
SBT(Science Based Targets|排出削減目標設定)は、パリ協定が求める⽔準と整合した温室効果ガス排出削減⽬標のことです。
2050年までのカーボンニュートラル達成を目指す前段階として、各事業者は5〜10年先にフォーカスしたSBTを設定します。
なお、SBTは事業者単体の排出量だけではなく、サプライチェーン全体の排出削減を盛り込むことがポイントです。
企業がGX実現のために取り組めること
GXを実現するためには、電力を確保しつつ、温室効果ガスの排出量を減らしていくことが鍵となります。 このために企業が取り組める施策としては、次の4つが代表的です。
- 太陽光発電を導入する
- 蓄電池を導入する
- 省エネ製品を導入・開発する
- カーボンプライシング・カーボンオフセットも活用する
それぞれ詳しく解説します。
太陽光発電を導入する
太陽光発電は温室効果ガスを排出しない再エネであるため、GXに寄与する発電方法です。
昨今はオフィスや工場に太陽光発電を導入する企業も増えており、事業に必要な電力の大部分を自家発電する企業も存在します。
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蓄電池を導入する
太陽光発電で生み出した電気をより効率的に使うためには、蓄電池の併用がおすすめです。蓄電池を活用すれば夜間や悪天候の際にも、あらかじめ貯めておいた再エネ電力を使えます。
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省エネ製品を導入・開発する
GXのためには、温室効果ガスの排出量を削減する取り組みも欠かせません。そのため各種機器・設備を省エネ性能が高いものに置き換えることも、GXに向けた施策の1つだといえます。
なお、製造企業の場合は、省エネ製品を開発することもGXと言えるでしょう。自社製品からの温室効果ガスの排出量が減れば社会的なイメージも向上し、競合優位性も発揮できます。
カーボンプライシング・カーボンオフセットも活用する
太陽光発電や蓄電池、省エネ機器を導入するだけでは、自社のカーボンニュートラルを実現できないかもしれません。
そのような場合は、J-クレジットや非化石証書などのカーボンプライシング・カーボンオフセット制度の活用をご検討ください。
GXは社会全体で目指すものであるため、排出削減量・吸収量に経済的な対価をつけて買い取ることも価値ある行動だと言えます。
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企業がGXに取り組むメリット
企業がGXに取り組むメリットとしては、次の5点が挙げられます。
- コスト削減やイノベーションの創出につなが
- 公的支援・公的投資の対象となりうる
- ESG投資の対象となりうる
- 消費者・取引先からのイメージを向上できる
- BCP対策につながる
それぞれ詳しく見ていきましょう。
コスト削減やイノベーションの創出につながる
GXを進めるためにエネルギー効率を改善したり、廃棄物を削減したりすることで、事業コストを直接的に削減する効果が期待できます。
また、省エネ機器の導入や業務プロセスの見直しによって、電気代を節約したり長期的な固定費を圧縮したりすることも可能です。
さらに、GXに向けて新たな技術やサービスを開発する過程で、社内にイノベーションを生み出す土壌を醸成できます。
公的支援・公的投資の対象となりうる
政府はGX実現に向けて、10年間で150兆円超の官民GX投資を実現すべく「成長志向型カーボンプライシング構想」の具体化を進めています(参考:経済産業省|GX(グリーン・トランスフォーメーション)。
このような時代の波に乗れることは、企業として大きなメリットと言えるでしょう。
また、太陽光発電や蓄電池などを導入する場合、各種補助金を活用できます。政府・自治体がGXを重視している今だからこそ、少ない自己負担でGX設備を導入できるのです。
ESG投資の対象となりうる
環境・社会・ガバナンスに配慮して活動している企業を投資対象とする「ESG投資」の規模が拡大していることもポイントです。その規模は日本だけでも2020年に約310兆円に達しており、このトレンドは今後も継続すると考えられます。
そして、GXに取り組んでいる企業は環境・社会にコミットしていると考えられるため、ESG投資の対象となりえます。投資家・株主の目線から見ても、企業がGXに取り組むメリットは大きいと言えるでしょう。
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消費者・取引先からのイメージを向上できる
昨今は環境への意識が高い消費者・取引先も増えているため、GXに取り組むことで企業イメージの向上も期待できます。
ただし、イメージアップが目的になり、グリーンウォッシュに手を染めないよう注意しなければなりません。
あくまでもエネルギーの安定供給・環境保護の観点から太陽光発電の活用などを進め、結果として企業イメージが向上する正しい順番を意識することが重要です。
BCP対策につながる
GXの一環として太陽光発電・蓄電池を導入した場合、BCP対策としての効果も期待できます。
気候変動によって昨今は災害が激甚化しており、いつ停電が発生するか予測できません。デジタル化が進んだ現代社会において、電気がなければ業務を進められない企業も多いのではないでしょうか。
しかし太陽光発電があれば、自家発電した電力を使えます。蓄電池を併用すれば夜間・荒天時も電力を使えるため、停電の影響を最小限に抑えられるでしょう。
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太陽光発電の活用はGXの第一歩におすすめ
エネルギーの安定供給・経済成長・温室効果ガスの排出削減の同時実現を目指すGXの成功は、再エネをいかに有効活用できるかにかかっています。そして再エネにもいくつか種類がありますが、企業がもっとも導入しやすいのは太陽光発電です。
そのためGXを進めようと考えている場合は、ぜひ太陽光発電の活用をご検討ください。
太陽光発電を導入するとなると、多額の初期費用がかかると思っている方もいるかもしれません。 しかし、実は「PPA(Power Purchase Agreement|電力購入契約)」というスキームなら、初期費用をかけずに太陽光発電を導入できます。
PPAはサービス事業者の負担で需要家敷地内(屋根や空地)や遊休地に太陽光発電システムを設置するスキームで、需要家は電力使用量に応じたサービス利用料を支払います。
太陽光発電システムそのものはサービス事業者の所有物であるため、設置費用を需要家が負担する必要がないことがポイントです。
京セラも法人向けのPPA 「産業用電力サービス事業」 を提供しておりますので、GXのために太陽光発電の導入を検討している方は、ぜひお気軽にお問い合わせください。
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