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ファインセラミックスは、最先端技術の進歩発展を支える高機能材料です。

ファインセラミックスの歴史

1万数千年前に使用された縄文式土器がルーツ

時空を越えた新たな素材

パソコンの頭脳にあたるCPUや自動車のエンジン部品、こうした高い信頼性が求められる部品にも使われる「ファインセラミックス」は、最先端のハイテクノロジーと蓄積されたノウハウによって、さまざまな分野でカタチを変え、現代社会を支えている先端素材です。皆さんは、そのルーツをご存知ですか?実は、私たちが普段使っているお茶わんや花びんなどの「焼きもの」がファインセラミックスのルーツなのです。
「焼きもの」の歴史は、土器から始まります。今から何万年も前、人類は土をこねて器の形にしてから火で焼き固める技術を身に付けました。それまでは、岩石を砕いた石器しか使われていませんでしたから、土器は「工業製品そのもののルーツ」ともいえるでしょう。石器時代以降、現在のファインセラミックスが登場するまでには、私たちと焼きものの長い歴史があるのです。

陶磁器の歴史

日本における陶磁器の歴史は、今から1万数千年前の縄文時代(1万6000年~2500年前)にまでさかのぼります。縄文時代の生活の中で生まれた器が始まりです。人々が狩りをして暮らしていたこの時代には、縄を転がしたような紋様のある「縄文式土器」が使われていました。お米を作って暮らすようになった弥生時代(2千数百年~1700年前)には、いろいろな形をした「弥生式土器」が登場します。その時代、野焼きといって、器の形にした粘土の周りに薪を積み、600~800℃の温度で器を焼いていました。
次に、粘土をロクロのうえで回しながら器の形を整え、1000℃以上の高い温度で長時間をかけて焼くことのできる穴窯の技術が、1500年ほど前に大陸から伝わります。この技術で作られたのが「須恵器(すえき)」です。
ロクロや穴窯の技術が伝わったことで、日本の焼きものは大きく発達しました。形のいい硬い焼きものがたくさん作れるようになったからです。後に穴窯は一度にたくさん焼ける登り窯へとさらに発展していきます。
奈良時代(1300年ほど前)に入ると、ガラス質の粉を原料とした釉薬(うわぐすり)が使われるようになります。素焼きした焼きものに釉薬を塗って焼くと、明るくやわらかい色彩で焼きあがるとともに、水もれを防ぐこともできます。この技術で作られるようになったのが「陶器」です。
さらに、安土桃山時代(400年ほど前)には、大陸から「磁器」が伝わります。これは粘土に長石を混ぜて焼いた緻密な焼きものです。


写真:縄文式土器 深鉢(中期)

縄文式土器 深鉢
(中期)

写真:弥生式土器 深鉢

弥生式土器 深鉢

写真:須恵器双耳壷

須恵器双耳壷

写真:青磁輪花盤

青磁輪花盤

写真:京焼色絵松藤之丁字風炉(江戸)

京焼色絵松藤之丁字風炉
(江戸)

電気技術時代のセラミックス

太古より数々の変遷を経てきた日本の陶磁器文化も、いよいよ発展期を迎えます。
19世紀半ばにエジソンが電灯を、ベルが電話を発明し、電気の時代と呼ぶにふさわしい時代が訪れ、長い間、「器(うつわ)」として使われてきた「焼きもの」は、その時代にふさわしい新しい役割を果たしていくことになります。
一般的に、焼きものには電気を通さない性質があります。同じく電気を通さない性質を持つ紙や木材と比べ、焼きものは、気温や湿度といった外的環境が変わっても性質そのものが変化しにくい傾向、つまり、高い信頼性を持っています。また、1万年以上の焼きものの歴史を通じ、さまざまなカタチを実現する造形技術もあります。
こうして、焼きものは碍子や絶縁材料など、送電線から家庭で使用するさまざまな製品の部位に至るまで広く使われるようになり、電気を使いやすくするための大切な材料となりました。

エレクトロセラミックスの時代のセラミックス

写真:エレクトロセラミックスの時代のセラミックス

20世紀に入るとラジオ放送の開始、テレビ放送の開始、トランジスタの発明などエレクトロニクスの時代を迎えます。その時代を支えたのが新しいセラミックスでした。
まず使われたのが、20世紀前半の大型真空管用セラミックスです。無線機器に使用され、高い周波数で使用しても高い出力が得られるセラミックスの特性はほかの材料では代替できませんでした。
また、材料としてのセラミックスも大きな進歩を遂げます。天然の原料に加えて人工的に合成した原料が使われ始めたほか、金属材料と強固に接合するための技術も開発され、現在のファインセラミックスに大きく近づいてきました。
エレクトロニクス時代の中核的な部品「半導体」、この現代の基幹産業と呼ばれる産業を支えたのもセラミックスでした。戦後すぐにアメリカでトランジスタやICが開発されましたが、当時、外部からの湿気や強い光などに対して極端に弱く、そのままでは産業用に使用することはできませんでした。トランジスタやICの電気的な特性はそのままに、外部からの湿気や光を遮断することができたのが、セラミックパッケージでした。このパッケージがあってはじめて半導体は広く使われるようになったといっても過言ではありません。
電子部品として、コンデンサやインダクターを小型化したのもセラミックスです。20世紀の半ばから、セラミックスの持つ誘電性や磁性など大きく特性を改良したセラミックスが次々に開発され、電子部品は急速に小型化、高性能化を図ることができるようになりました。ひいては、電子機器そのものの小型化に、セラミックスはたいへん貢献したと言えます。コンデンサをセラミックスでつくることがなければ、現在のようなポケットに入るスマートフォンの存在はなかったはずです。今、スマートフォンには1 台あたり600個以上のセラミックコンデンサが使われています。
精選または合成された原料粉末を用いて、管理された工程でつくられる高精度の工業用材料として、従来の焼きものとは一線を画した「ファインセラミックス」がこの時代に誕生しました。

新素材の旗手としてのファインセラミックス

ファインセラミックスは、原料の種類や合成方法、これまで確立してきた豊富な製造工程などにより、いろいろな特性を創出することが可能です。そのために、エレクトロニクス産業に限らず、多様な産業においても利用することができるようになり、新素材の旗手ともいうべき存在となりました。軽くて剛性が高くかつ薬品などに侵されにくい性質を利用し、数mにおよぶ大型サイズのファインセラミックスが半導体製造装置や液晶製造装置に、また、信頼性が高くかつ金属との組み合わせが容易なことから自動車用部品に使用されています。
誘電特性や圧電特性を利用した小型で高性能なセラミックコンデンサ、セラミックフィルタやセラミック発振子など多くの電子部品の機能をつくる基盤の材料となっています。ほかにも、磨耗しない性質を生かして繊維産業に使われるなど多くの産業の中の基幹部品として活躍しています。工業製品や部品としてのみならず、ファインセラミックスならではの特性を生かして、包丁や装飾品、釣具部品など私たちの生活に身近で実用的な商品にもどんどん利用が拡大しています。


写真:構造部品

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