リスクマネジメント
京セラグループを取り巻く事業環境は、世界経済のデカップリングの動きが続く中で経済安全保障の観点からサプライチェーンの見直しを迫られるなど、不安定性(volatility)、不確実性(uncertainty)、複雑さ(complexity)、曖昧さ(ambiguity)に直面しています。
当社は、このような時代を生き抜くために不可欠なリスクマネジメントを積極的に推進することにより、経営のレジリエンシーを高め、グループの持続的な発展に貢献していきます。
リスクマネジメントの取り組み
京セラグループでは、複雑化するグローバルなリスクに対応するため、グループ全体でリスクマネジメント体制の整備に取り組んできました。市場環境の変化、自然災害や事件・事故の発生、地球温暖化による影響、情報セキュリティ、サプライチェーンにおける供給停止や労働条件の不備、人権侵害など、グループの信用やビジネスの持続可能性に影響を及ぼすと思われるリスクに関して「京セラグループリスクマネジメント基本方針」を定め、リスクの予防と軽減、事業継続計画(BCP)の整備に努めています。
京セラグループ リスクマネジメント基本方針
- コンプライアンスの徹底と京セラフィロソフィの精神に則り、人として何が正しい行為かを考え、その価値基準に基づき行動する。
- 京セラフィロソフィの精神に則り、「人の身体生命の安全確保を最優先」と位置づけて、危機に対処し、危機の収束に向けて、従業員が一丸となって、損失の最小化、損害の復旧、再発防止に取組み、お客様、取引先、株主・投資家、地域社会等の各ステークホルダー(利害関係者)の利益阻害要因の除去・軽減に努める。
- 京セラグループは、リスクマネジメントの実践を通じて、事業の継続的発展を図る。
- 社会の進歩・発展に有益な製品・サービスを安定的に供給することを社会的使命として行動する。
リスクマネジメント体制
当社グループは、2022年6月に改組した「リスクマネジメント委員会」を定期的に開催し、リスクマネジメント方針、コーポレートリスクならびにリスクオーナーの決定を行うとともに、対応策の進捗状況のレビューを実施しています。当委員会にて審議した議案を取締役会の決議事項とするとともに、各主管部門、工場・事業所ならびにグループ会社に対して方針の共有を行っています。また、2023年4月に専門部署であるリスクマネジメント部を設置し、リスクマネジメント体制の強化を図っています。
リスクマネジメント体制図

リスクマネジメントプロセス
京セラグループでは、リスクアセスメントを実施し、主要リスクを認識、分析、評価していることに加え、外部専門家によるレポート等で注目されているリスクについても分析・評価を行っています。グループ内の主要リスク及び外部環境で注目されているリスクの中から、経営への影響が特に大きく、対応が必要なコーポレートリスクを特定し、リスク対策の実施やレビュー、対策の改善等、以下のPDCAサイクルを推進しています。
コーポレートリスクのマネジメントプロセス図

コーポレートリスク
リスクマネジメントプロセスにより特定されたコーポレートリスクおよびその対応策は次のとおりです。
リスクの分類 | リスクの内容 | 主要な対応策 |
---|---|---|
国際的な事業活動 に関するリスク |
●海外市場で事業活動をする上で、政治的・地政学的・経済的要因により、経済安全保障政策・投資規制・製品や原材料の輸出入規制・収益の本国送金規制等に関する予期できない法律・規制の変更等のリスクに直面する可能性 |
●経済安全保障対策プロジェクトを発足し、カントリーリスクのモニタリング等、能動的なリスク回避策を実施 ●投資規制・収益の本国送金規制について、規制変更の情報を早期に収集し、当該国で保有する会社財産を国外に退避させる等、適切な対処の実施 |
人権に関する リスク |
●世界的な人権に対する配慮の高まりにより、自社だけでなくサプライチェーンにおける人権問題にも配慮が求められているため、予期できない法律・規制の変更等のリスクやレピュテーションリスクに直面する可能性 |
●従業員、顧客、株主・投資家ならびに取引先等、京セラグループに関わるすべてのステークホルダーの人権を尊重し、人権リスクの軽減を推進 ●EU紛争鉱物規則などの法規に対応し、調達する鉱物に紛争や人権侵害などのリスクが存在するかを調査し、リスク評価や是正措置を実施 ●RBA(Responsible Business Alliance)への加盟や当社及びサプライチェーンに対する人権デュー・ディリジェンスの実施、ハラスメント・差別の禁止教育等を実施 |
情報セキュリティ に関するリスク |
●情報機器の故障やソフトウェアの不具合、高度なサイバー攻撃等による情報漏洩や改ざん、滅失、システム停止等の被害を受ける可能性 ●技術革新や顧客からの最新のセキュリティ要求事項に対応した情報セキュリティの維持に関連する追加的な費用を負担する可能性 ●情報漏洩等のリスクにより、社会的信用や事業競争力の低下につながる可能性 |
●情報セキュリティ関連の規程の整備 ●従業員への教育の実施、ネットワークやIT資産等に対するセキュリティ対策、事業継続計画(BCP)を策定し、インシデント発生時の早期復旧策を構築 |
優れた人材の確保が 困難となるリスク |
●有能な人材の獲得競争が激化し、今後、現有の人材の維持、能力のある人材の増員ができなくなる可能性 ●ワークライフバランスの充実化やダイバーシティ&インクルージョンの推進を実施しない場合、現有の人材を維持できなくなる可能性 |
●インフレや労働市場を踏まえた給与水準、海外のさらなる現地化促進等、将来を見据えた人材確保 ●柔軟な勤務体系の導入により、ワークライフバランスの充実化やダイバーシティ&インクルージョンを推進 |
地震等の災害が 発生するリスク |
●地震や台風、大雨、洪水等の不可避な自然災害の発生や、設備故障、人為的ミスによる大規模な災害等が及ぼす事業への影響 ●災害に伴う直接的被害や、その結果生じる経済の停滞や消費の鈍化が、当社の財政状態、経営成績に影響を及ぼす可能性 |
●地震等の自然災害、設備故障及び人為的ミスによる大規模な災害等に対してBCPの体制を整備し、事前対策を実施 ●万が一被災した場合の早期復旧計画や代替供給策を策定し、教育・訓練を実施 |
リスクの内容、主要な対応策の詳細については、有価証券報告書(pdf/2,031KB)をご参照ください。
危機管理対策の推進
京セラグループでは、危機管理対策の推進を図るため、「危機管理対策基本指針」を定めています。この指針をベースに、テロが発生した際に、海外拠点で勤務する社員の安全を確保するための措置など、さまざまな事態を想定した危機管理マニュアルを作成しています。
インシデント発生時の関係部門の連携
京セラグループを取り巻くリスクに対して適切に対応するため、重大なインシデント発生時には、迅速に初期対応に当たり、影響の拡大防止と早期事業復旧に努めるものとしています。各リスク主管部門は、インシデント発生時の対応体制の整備、維持を行い、必要に応じ、対策本部を設置します。例えば、サイバーセキュリティインシデント発生時は対応規則に基づき、関連部門が連携して対策本部を設置し、公表や当局への報告の判断、各担当の専門性に応じた調査等を行います。