THE NEW VALUE FRONTIER

トップメッセージ

画像:社会課題の解決につながる新規事業創出と若い人材の力を引き出すことでさらなるチャレンジを続けていきます。代表取締役社長 谷本秀夫

私たち京セラグループは、創業以来、「全従業員の物心両面の幸福を追求すると同時に、人類、社会の進歩発展に貢献すること」という経営理念にもとづいて、事業を成長させ、社会の発展に力を尽くしてきました。その根幹にあるのは「京セラフィロソフィ」として60年あまりにわたって培ってきた私たちの経営哲学です。現在、私たちは大きな変革期に直面しており、DX(デジタルトランスフォーメーション)の推進に加え、5G(第5世代移動通信システム)やADAS(先進運転支援システム)、AI(人工知能)の普及、そして働き方改革など、変化の波は大きなうねりとなって押し寄せています。新型コロナウイルス感染症の拡大も事業環境や働き方の変化を促しました。私たちは受け継いできた事業精神を変えることなく、変革を加速していかなければなりません。経営理念の実現に向けて、若い人材にも一層、力を発揮してもらえるよう、従来の考え方や慣習にとらわれず、新たな発想のもと、制度改革などを推進していきます。

世界的な変動期を迎えて

 2017年4月に社長に就任以降、京セラグループを取り巻く環境は大きく変化しており、世界的な変動期を迎えていると言っても過言ではありません。社会の潮流としては、デジタル化やグローバル化が大きく進展し、それに伴い人々の求めるものも多様になり、価値の対象はモノからコトへと変化しています。事業環境が激変していく中で、最近ではコロナ禍の影響もあり、先行きの不確実性や不透明性が高まりました。その一方で、リモートワーク、フレックスタイム制度の導入など、従来進めてきた働き方改革は加速しました。このような環境変化の中にあって、企業も迅速な対応を求められています。ビジネスでは、確実性を重視する先例主義から、スピード優先で、積極的なリスクテイクへの変化が促されています。また、自前主義から脱却し、外部資源を積極的に活用するなどの事業変革へ一層のスピードアップが必要とされています。そして、何より重要なこととして、社会課題の解決をいかに事業戦略へ展開し、企業価値を高めていくのかが問われています。私たちは、カーボンオフセット※1に資する、再生可能エネルギーなどのエネルギー事業を担い、多様な技術や事業資産を保有する企業として、事業推進に伴う社会的側面をより一層重視していきます。

  • 温室効果ガス排出量の削減努力を行った結果、削減が困難な排出量について、排出権購入などで埋め合わせること

  • 外部環境の変化に適合した組織体制に再編

     私たちは外部環境の変化に適合し、多様な要素技術を活かすため、2021年度より事業部門を3つのセグメントに集約する組織再編を実施しました。これには、大量生産からオーダーメイドへとモノづくりの時代が変化し、多様化するニーズに迅速に対応するため、組織をピラミッド型からフラット型へと変える狙いがあります。市場の変化に対応できなければ、私たちのようなメーカーは生き残ることはできません。そのために、時代の変化に即した組織体制、人事制度の見直しを行っていく必要があると考えました。

     組織再編にあたっては、16のプロダクトラインを、新たに「コアコンポーネント」、「電子部品」、「ソリューション」の3つのセグメントに集約しました。私たちの強みは特定の領域に特化したものではなく、広範囲にわたって事業を展開していることですが、その一方で縦割り組織の意識が強く、事業間における融合が進んでいないという課題がありました。3セグメントへ集約することで組織間の横の交流を進め、縦割りの打破と連携強化を加速させていきます。同時に、管理部門も「コーポレート」部門へ統合しました。

     組織再編に伴い、それぞれに担当役員を任命するとともに、各担当役員に経営トップの権限を大幅に委譲しました。これは、事業部門の垣根を超えた戦略の実行や人材・組織の活性化、ならびに経営資源の有効活用など、既存の枠組みを超えた迅速かつダイナミックな経営判断を遂行し、京セラグループを新たな成長軌道に乗せようというものです。

     コアコンポーネントセグメントは、5Gおよび半導体などの成長市場へ注力すると同時に、技術開発を強化し、売上の成長と収益性の向上を目指します。電子部品セグメントでは、まずは米国子会社AVX Corporation(現 KYOCERA AVX Components Corporation)とのグローバルな営業組織の統合による販売力強化を進めます。2021年10月以降、新事業ブランド「KYOCERA AVX」の展開を予定しています。加えて、製造、開発の経営資源の統合などを通じて売上・利益の拡大をはかります。ソリューションセグメントについては、通信技術やソフトウェアを活用したさまざまな新しいビジネスモデルの構築に努めます。

     この他、社長直轄のプロジェクトも進めています。全社に共通する研究開発は、今後の成長に寄与する重点テーマを中心に、社長直轄プロジェクトとして推進していきます。例えばローカル5Gでは、基地局に加え、センサー、ソフト、AIなど、従来個別に展開していたものや、各組織で手掛けていたものを統合し、ハードウェアとソリューションを融合していきます。IoTが想定されていたほどに普及していない一因は、IoTを活用した問題解決に必要となる製品や技術を一手に扱える企業が少ないからと考えています。私たちは部品や無線通信の両方に関わる技術を保有しており、これを強みとして伸ばしていきたいと考えています。今後さらに、ハードウェアとソリューションの融合は不可欠で、将来的にはソリューション分野にも大きく投資をしていく考えです。

    グループの総合力を最大限に発揮する成長戦略

     設備投資については、2021年度からの3年間で合計4,500億円規模の投資を見込んでいます。特に5G関連では私たちが市場のリーダーとなるべく、この3年が勝負という意気込みで集中していきます。私たちの強みであるファインセラミックス、無線通信など、幅広い事業領域およびグローバル展開を最大限に活用し、この成長市場で積極展開をはかっていきます。部品では、創業以来培ってきたファインセラミック技術を応用し、半導体製造装置向けファインセラミック部品や、イメージセンサー用パッケージ、光通信パッケージ、通信モジュール基板など、多くの製品を供給しています。機器では、無線通信技術を活かし、5G端末、基地局、ルーター、IoT通信機器などの開発に取り組んでいます。さらに、ソリューションでは工場、競技場などへのローカル5Gシステムの展開や、農業用、点検用など、5Gを活用したドローン関連のソリューションの提供を計画しています。これらの5Gという成長領域でグループの総合力を最大限に発揮し、モノ売りからコト売りまであらゆるニーズに対応していくことで、事業成長を目指す計画です。

     全社のDX推進については、2020年4月に、各部門から全社のデジタル化を推進するメンバーを集結し、「デジタルビジネス推進本部」を発足させました。製造部門に対しては、生産性倍増に向けて、独自開発のデータプラットフォームをベースにIoTやAIを活用した自動生産システムを構築し、現在は滋賀野洲工場のクレイ型リチウムイオン蓄電池の生産ラインで運用を開始しています。これをモデルケースとして、全社でスマートファクトリーを展開していく計画です。営業部門に対しては、事業システム支援の一環として、事業本部間における営業情報の共有を目的に、営業支援システムの導入を進めており、一部の事業本部では本格運用に入りました。また、これらの取り組みをサポートするため、データサイエンス、情報セキュリティ、基幹インフラの分野において、さまざまな活動を推進しています。京セラグループ全体のデジタル化を総合的に推進すると同時に、社員一人ひとりの意識改革にもつなげていきたいと考えています。

    成長戦略実現に向けた適切な経営資源配分

     このような成長戦略を実行していくためには、資金や人材という経営資源の獲得および適切な配分をしていかなければなりません。資金調達においては、基本的には稼ぐ力を高めて賄うことが理想ですが、場合によっては借入や社債の発行などについても検討していきます。また、事業の選択と集中についても、従来よりも積極的に検討する考えです。今回の組織再編の狙いには事業のスクラップ&ビルドも含まれており、今後は、成長が期待できる事業や社会的価値のより高い事業へと経営資源を集中させていく考えです。

     人材面においては、経営理念である「全従業員の物心両面の幸福の実現」を目指して取り組んでいます。京セラグループを再び成長軌道へ乗せるための新しいアイデアやチャレンジを後押しする人事制度へと見直しを進めています。特に、実力のある社員の抜擢が可能な制度としてスペシャリストコースを新設し、まずは技術研究職を中心として働き方を見直します。人事制度改革により、年代の異なる層の交流も進め、若手・中堅社員の活躍をベテラン社員がサポートする体制を構築し、全社の活性化をはかります。また、人の流動化については中途採用など、外部から人材を獲得し、多様性を確保することで、環境の変化に対応していきます。私たちにとっては、人こそもっとも大切な経営資源であり、優れた人材の獲得、育成に努めていきます。

     さらに、M&Aや事業提携など、外部の経営資源の獲得も視野に入れています。2021年1月に買収した米国のSLD Laser社は、GaN(窒化ガリウム)技術を基盤とするレーザー光源の世界的なリーディングカンパニーです。今後も成長発展につながる優れた事業、技術獲得のためのM&A、出資を検討していく考えです。

    企業価値と社会課題解決を両立するESG経営

     現在、そして将来にわたる環境課題や社会課題を解決する取り組みは、私たちの価値創造・企業価値向上にとって極めて重要なテーマです。私たちは、創業以来、環境に優しいセラミックスの技術に磨きをかけてきました。さらに、日本が第一次オイルショックに見舞われた後、国を挙げて省エネ対策が叫ばれていた1975年にいち早く太陽電池の研究・開発をスタートし、1993年には業界初※2 となる住宅用太陽光発電システムを発売しました。その後も蓄電池、燃料電池の開発を中心にエネルギー事業を育成しています。こうした取り組みをさらに発展させ、私たちは今後もESGを重視した企業運営に取り組んでいきます。

     環境(E)面においては、気候変動対策として、2019年度に長期環境目標を設定し、2030年度までにCO2排出量を30%削減※3、再生可能エネルギー導入量10倍※3を目指していますが、現在、新しい目標設定について検討を進めています。昨年より、滋賀野洲工場で蓄電池を活用した再生可能エネルギー自己託送実証実験を開始したほか、鹿児島国分工場では、今年から太陽電池、燃料電池、蓄電池の3電池連携実証実験を開始しています。資源循環については、リサイクルに加え、製品寿命を延ばすことも重要であり、私たちのセラミック技術を活用できる領域と捉えています。その延長線上で、将来の新たな自動車部品の開発などにも貢献できると考えています。

     社会(S)面においては、ダイバーシティ&インクルージョンの一層の推進に取り組みます。京セラはもともと全員参加型のアメーバ経営を展開してきており、特に私が入社した当時はその取り組みが非常に色濃くありましたが、企業規模の拡大とともに徐々にピラミッド型の組織へと変わり、アメーバ経営の本来の良さが発揮しづらくなっていました。そして、現在はまた、アメーバ経営の活性化を促そうという動きにあります。このような経緯もあり、私たちは横の連携を促進するフラットな組織にスムーズに移行することができます。私は、これがダイバーシティにつながるものであり、あらためて京セラの文化にしていきたいと考えています。特にソリューション分野の拡大は、こうした体制のもとでなければ実現できません。例えば「新規事業アイデアスタートアッププログラム」では、年齢や性別、また経験に関係なく、広く社員からアイデア提案を募っています。現在、食物アレルギーを持つ人向けのアプリの開発の事業化を進めていますが、これは、ある女性社員の発想によるもので、今後はこのようなボトムアップ型の事業が必然的に増えていくものと考えています。また、サプライチェーンに関わる人権の尊重についても、グローバルに事業を展開する企業の責任として取り組まなければならない課題と捉えています。2020年11月には、「京セラグループ人権方針」を策定し、ビジネスパートナーやサプライヤーに対して、人権の尊重について働きかける取り組みを進めています。

     ガバナンス(G)面については、2021年6月の定時株主総会にて、組織再編に伴う役員人事によって社内取締役を従来の12名から半減の6名とし、株主総会後の取締役会は社外取締役を含めた9名構成となり、社外取締役の比率を3分の1に高めました。この取締役会の構成変更を通じて、経営の監督と執行の役割を明確にし、意思決定の迅速化と監督体制の強化をはかっています。これまでは事業部門の部門長は取締役あるいは執行役員とばらつきがありましたが、今回の変更でセグメント担当役員を取締役とすることに加えて、経営トップから人事や設備投資に関わる権限を担当役員に委譲することで、さらなる意思決定の迅速化をはかっています。

     また、新任社外取締役に企業経営経験者を迎えました。経営者としての豊富な知識と経験から、当社の経営活動全般に対するさまざまな助言を期待しています。さらに、今後、女性役員の増加も期待しており、社外取締役の構成も含め、多様性の確保につなげていく考えです。

     私たちは、長年にわたって事業拡大を通じた人類・社会の進歩発展への貢献を使命として取り組んできました。今後も、社会課題の解決を目指さなければ事業として成立しないという信念のもと、ESG経営を着実に推進していく考えです。

  • 1993年に国内初の住宅用太陽光発電システムを販売開始。京セラ調べ
  • 2013年度比


ステークホルダーの皆様へ

 私たちを取り巻く環境は、デジタル化の加速、人々の価値観の変化などにより大きく様変わりしつつあります。私たちは、時代や社会のこのような変化を新たな価値を生み出す絶好の機会と捉えています。一人ひとりがチャレンジし続けることで、京セラグループにとって、夢あふれる未来を創造するという想いを込めて、2021年度のグループ内のスローガンを「激変する環境を変革のチャンスと捉え、積極果敢なチャレンジで新たな未来を切り拓こう」としました。事業面においては、半導体や再生可能エネルギー分野など、私たちが存分に強みを発揮できる領域が眼前に広がっています。私は、すべてのステークホルダーとの関係を重視するステークホルダー資本主義と「京セラフィロソフィ」は極めて親和性が高く、企業価値の持続的な向上と社会課題解決との両立こそが使命だと認識しています。今後も、ステークホルダーの皆様から信頼され、期待される企業となるべく、これらの取り組みを加速させていきます。これからの京セラグループに、是非ご期待いただきたいと思います。

画像:代表取締役社長 谷本秀夫