サプライチェーン管理
京セラグループは、お取引先様との公正、透明な取引を遂行するために、購買活動における基本方針を定めるとともに、お取引先様と一体となって、公正な事業活動の実現に努めています。
購買活動に関する方針
京セラグループは、サプライチェーンにおける公正な事業活動の実現に取り組むことで、経営理念である「全従業員の物心両面の幸福を追求すると同時に、人類、社会の進歩発展に貢献すること」の実現を目指しています。また、開発、生産、販売、サービスなど、一連の事業プロセスに関わるすべての企業が協力し、社会の要請に応えていくことで、サプライチェーン全体の相互繁栄が実現できると考えています。今後も、お取引先様と積極的なコミュニケーションを図ることで、相互信頼にもとづくパートナーシップの構築に注力していきます。
なお、京セラは、サプライチェーンのお取引先様や価値創造を図る事業者様との連携‧共存共栄を進め、新たなパートナーシップを構築していくため、2020年12月に「パートナーシップ構築宣言」を公表しました。また、2024年3月に改訂し、全てのお取引先様を対象としました。

購買基本方針
京セラグループでは、購買活動を行うにあたり「購買基本方針」を定めており、会社概況やサステナビリティに関する各種調査により、お取引先様の公正な評価・選定を行っています。
購買基本方針
資材部門の意義・目的
「調達業務を通して、価値創造、事業発展に貢献し、誠実に仕事を追求するとともに、お取引先様との共生を図ることにより、人格を磨き、社会の信頼を得る。」我々資材部門は感謝の心を常に持ち、謙虚に反省し、更に努力することにより、信頼される存在価値のある資材部門を目指しております。
サプライヤー選定方針
弊社は下記方針に基づき、お取引先様を選定いたしております。
- 弊社の基本的な考え方をご理解いただけること。
- 経営者ご自身の考え方や経営理念が納得できるものであること。
- 経営力、技術力、製造力の向上をめざし、規模、財務面において適切で安定した経営状況であること。
- 品質、価格、納期、サービス対応力など総合的に優れていること。
- 地球環境保全活動に積極的であること。
- 京セラグループ サプライチェーン行動規範を遵守いただけること。
京セラグループ サプライチェーン行動規範
サプライチェーン全体で取り組まなければならないサステナビリティに関する課題に適切に対応するため、RBAのガイドラインに準拠した「京セラグループ サプライチェーン行動規範」を定めており、お取引先様にはガイドラインの遵守条項を盛り込んだ取引基本契約を締結していただいております。

サプライチェーン行動規範
サプライチェーンにおけるサステナビリティの推進
京セラグループは、Responsible Business Alliance(以下RBA)のメンバーとして、RBA行動規範を遵守し、社会と京セラの双方が持続的に発展できるよう、お取引先様のサステナビリティ活動に関する取り組み状況の調査を実施し、サプライチェーン全体でのサステナビリティ活動を推進しています。
サステナブル調達の取り組み
重要サプライヤーの特定
京セラグループでは、パートナーズセミナーにご出席いただいたお取引先様をはじめ、当社にとって重要な原材料を供給いただいているお取引先様や、取引額の大きなお取引先様、代替不可能なお取引先様を中心にして、前年度の購入金額の上位80%を目安に重要なサプライヤーとして特定しています。
サステナビリティ活動に関するサプライヤー調査
京セラグループでは「京セラグループ サプライチェーン行動規範」に基づき、お取引先様の遵守状況の確認を海外のお取引先様含め、毎年実施しています。
調査対象
特定した重要なサプライヤーを中心に、調査を実施しています。
サプライヤーの タイプ |
全サプライヤー数 | 重要なサプライヤー数 | 過去3年間に評価した 重要なサプライヤー数 |
過去3年間に評価した サプライヤーの比率 |
目標(2023年度) (対全取引先比率) |
実績 |
---|---|---|---|---|---|---|
直接納入する(一次)サプライヤー | 6,111 | 319 | 347 | 80%(金額ベース) 5.2%(社数ベース) |
目標:80%(金額ベース) 目標:6%(社数ベース) |
319社 |
評価項目
京セラが重視しているESG項目である、人権・労働、環境、安全衛生、公正取引・倫理、品質・安全性、事業継続計画(BCP)、情報セキュリティ、責任ある鉱物調達について調査を実施し、回答に対して以下の通りデューデリジェンスを行っています。
評価基準
総得点のスコアが20%以下の取り組み状況が「不十分」の場合、20%以上となるまで、実地監査を行い、改善を求め、その結果を確認しています。スコアが20%~60%の取り組み状況が「やや不十分」の場合は、60%以上となるよう結果のフィードバックを行い、能力開発プログラムの制定を勧奨しています。
ランク | 総得点に対するスコア | 取り組み状況 |
---|---|---|
A | 80%以上 | 大変良好 |
B | 60%以上 | 良好 |
C | 40%以上 | やや不十分 |
D | 20%以下 | 不十分 |
実績
2023年度は319社のお取引先様に調査票にご回答いただき、そのうち55%がAランクという評価になりました。

リスクの明確化
人権・労働、環境、安全衛生、公正取引・倫理、品質・安全性、事業継続計画(BCP)、情報セキュリティなどの各項目に対して調査した結果、取り組みが不足していると判定したお取引先様はリスクが高いと判断しています。
リスクが高いと判断したお取引先様に対しては、調査結果をフィードバックし、ガイドラインを用いて要求内容を説明するなど改善を依頼しています。改善が進んでいないと判断した場合は、訪問して対策を協議するなど、対話を継続しています。お取引先様とは様々なコミュニケーション手法を用いて対話しており、十分な理解を得られない、明確な改善の意志が見られない場合は、年1回、訪問による監査を実施しています。2023年度は5社をハイリスクと判定し、訪問しました。
サプライヤーのタイプ | 全サプライヤー数 | 重要なサプライヤー数 | ハイリスクと判定した サプライヤー数 |
ハイリスクと判定した サプライヤーの比率 |
---|---|---|---|---|
直接納入する(一次)サプライヤー | 6,111 | 319 | 5 | 1.57% |
また、京セラが重要項目として選定している「人権・労働」および「倫理」の項目に関するハイリスクのサプライヤー比率については、いずれもゼロであることを確認しています。
KPI | 目標数値・達成年度 | 実績 | |
---|---|---|---|
2023年度 | |||
人権・労働の項目に関するハイリスクのサプライヤー比率 | 目標数値:0% 達成目標年度:2023年度 |
0% | |
倫理の項目に関するハイリスクのサプライヤー比率 | 目標数値:0% 達成目標年度:2023年度 |
0% |
その他、以下の項目のいずれも該当する事実はありませんでした。
- 児童労働に該当する労働者
- 直接に、満額、かつ期日通りに、賃金を支払うことができなかった労働者
- 身分証明書を取り上げられたり、移動の自由を制限されたりした労働者
- 結社の自由および団体交渉の権利を制限された労働者
- 差別や不当な労働条件を強いられている女性労働者
- 健康と安全に関する影響を受けた労働者
- 過剰な長時間労働に従事する労働者
継続的なリスクの低減への取り組み
全てのお取引先様のリスクの解消を目標に改善を依頼した結果、対象となったお取引先様からは、改善が期待できる回答をいただいています。2024年度も同じ目標を維持し、同様の調査を行う予定です。対象となるお取引先様は、毎年リストを見直すとともに、判断基準の適用平準化を図ります。
評価を向上させたサプライヤー比率
測定単位 | 比率 |
---|---|
ハイリスクと判定したサプライヤーのうち、是正措置計画を定めたサプライヤーの比率 | 100% |
是正措置計画を定めたサプライヤーのうち、12か月以内に評価を向上させたサプライヤーの比率 | 100% |
パートナーズセミナーの開催
お取引先様に京セラグループの経営方針や事業方針などをご理解いただき、さらなるパートナーシップを構築していくため、京セラではお取引先様をお招きしたパートナーズセミナーを定期的に開催しています。2024年度は2月に開催し、215社、250名にご出席いただきました。また、1年間のお取引において品質・価格・納期などで特に優れたお取引先様を表彰させていただきました。

サプライチェーンBCP調査
京セラグループでは、災害などにより製品・サービスの供給が中断した場合でも、速やかな復旧と操業再開を目指すことを方針に掲げ、お取引先様へ事業継続計画(BCP)の取り組み状況について調査を実施するとともに、BCP活動の推進を要請しています。
新たに重要な原材料や部材を供給いただくこととなるお取引先様には、BCPの重要性を説明し、対策の強化をお願いしています。また、前年度の調査で取り組みが不十分であったお取引先様については、改善状況を確認しています。今後も、お取引先様に取り組みを推進いただけるよう、BCPの普及・浸透に努めていきます。
責任ある鉱物調達への取り組み
京セラグループでは、コンゴ民主共和国およびその隣接国で採掘される鉱物資源が人権侵害を引き起こしている武装勢力の資金源となっていることから制定された米国金融規制改革法(ドッド・フランク法)や、EU紛争鉱物規則などの法規に対応しています。また、OECDは全ての企業に対して「紛争地域および高リスク地域からの鉱物の責任あるサプライチェーンのためのデューデリジェンスガイダンス」(OECDガイダンス)の「責任ある鉱物調達」を求めています。京セラグループでは同ガイダンスに従い、「責任ある鉱物調達方針」を定め、紛争や人権侵害などのリスクが存在するかどうかサプライチェーンを調査し、リスク評価、是正措置を行うなど、リスクの軽減やサプライチェーンの透明化に取り組んでいます。
京セラグループの責任ある鉱物調達方針
京セラグループは、金・錫・タンタル・タングステン・コバルト・天然マイカ等、対象鉱物について「武装集団の資金源となる紛争鉱物、その他の人権侵害などのリスクを持つ金属を使用した材料、製品などを購入しない」とする方針を掲げています。(2024年6月改訂)
例えば、京セラのセラミックパッケージや電子部品では、回路形成や接続端子には金メッキを使用しており、ハンダにはスズが必要です。また、コンデンサには蓄電能力を高めるためにタンタルが使用され、切削工具の硬度強化にタングステンを使用しています。
このように京セラの製品は多くの鉱物を原材料として必要としています。責任ある調達に関する要求事項は、法律に留まらず、企業のサステナビリティ活動や世界の持続可能性に貢献する重要な要素と考えています。なお対象鉱物は、RMI※1が推進するRMAP※2に従っています。
- Responsible Mineral Initiative(責任ある鉱物調達イニシアチブ)
- Responsible Minerals Assurance Process(責任ある鉱物と第三者が認定するプログラム)
責任ある鉱物調達への対応体制
京セラグループは責任ある鉱物調達を行うため、「京セラグループ紛争鉱物対応規程」を制定しています。リスクのない鉱物調達をしているかどうかの調査は制度に則って実施し、状況と結果に対してデューデリジェンスを行っています。また、グループ各社に対して紛争鉱物に関する規則や方針を啓発し、グループ全体が紛争鉱物に関して適正な取り組みを行うことを推進しています。さらに、責任ある鉱物調達への対応におけるリスクを早期に認識するため、ステークホルダーや調達部門における窓口、内部通報制度を通じて収集された紛争鉱物に関する苦情や通報に対し、迅速に対応する仕組みを構築しています。
OECDデューデリジェンスガイダンスに則った取り組み
京セラグループでは責任ある鉱物調達に関する調査について、OECDデューデリジェンスガイダンスが定める5ステップの枠組みに準拠した体制と手順に従っています。具体的には、RMIが推進するRMAPに基づき調査実務を行い、同ガイダンスの附属書Ⅱに定められた人権侵害をはじめとするすべてのリスクに対する評価を行っています。また、多種多様な人権侵害をはじめとする広範なESGリスクに備えるため、顧客またはNGOからの要求および、各国の人権規制に対する情報収集に取り組んでいます。コバルト等の人権侵害リスクの高い鉱物への調査対応など、法律のみならずサステナビリティに対する取り組み状況の監視の強化をはかっています。OECDガイダンスでは、5ステップを要求しており、京セラグループは全てに対応しています。
お取引先様への取り組み
京セラグループは、グループ各社の担当者を対象に、米国、中国、ベトナム、タイの各拠点でデューデリジェンスの研修会を開催し、内部管理体制の強化を図るとともに、責任ある鉱物調達に関する社外との協力体制として、業界団体との連携・協力を推進しています。具体的には、米国金融規制改革法1502条などに関連する規制へ対応すべく、電子情報技術産業協会(JEITA)の中に設置された「責任ある鉱物調達検討会」の主要メンバーとして発足当初より参画しています。「責任ある鉱物調達検討会」では、調査における課題の把握と対応、調査説明会の実施など、積極的に協力しています。
さらに、京セラグループは、責任ある鉱物調達問題に取り組む国際的な組織である「Responsible Minerals Initiative(RMI)」が作成した「紛争鉱物報告テンプレート(CMRT)」を使用し、お取引先様に対して調査を実施しています。2018年度の調査より、OECDガイダンスの附属書IIに定められた6つのリスクを重視したデューデリジェンスを行っています。お取引先様より提供いただいたCMRTに記載の製錬所/精製所と、RMIで開示されているリストとの照合などを行っています。その結果、課題が残るお取引先様には、「リスクある製錬所報告書」を送付することで注意喚起しています。また、お取引先様の課題や疑問に応えるための説明会を開催することで、製錬所/精製所がコンフォーマント認定を取得できるようにサプライチェーンへの働きかけを行い、Conflict Freeとなるまで、継続的な活動を要請しています。

お取引先様より提供いただいたCMRTに記載の製錬所/精製所と、RMIで開示されているリストとの照合結果
金 | タンタル | スズ | タングステン | 合計 | |
---|---|---|---|---|---|
製錬所/精製所総数 | 173 | 41 | 87 | 52 | 353 |
コンフォーマント※認証を受けた製錬所/精製所数 | 90 | 37 | 67 | 33 | 227 |
コンフォーマント認証未取得の製錬所/精製所数(取得中を含む) | 83 | 4 | 20 | 19 | 126 |
紛争に関与していない、また、人権侵害などの問題がないと第三者により認定された製錬所/精製所
お取引先様へのEMRT調査の実施
京セラグループではお客様からの要請が増えつつある新たな鉱物調達に関する調査として、コバルトに関して2019年度から毎年調査をしています。2022年度からは、新たにRMIが発行したEMRT(Extended Mineral Reporting Template)を用いて調査をすることで、さらに対象鉱物と対象取引先を拡大しています。回答率はEMRT調査が94.0%、CMRT調査は96.4%と、ほぼすべてのお取引先様から回答を得ることができ、サプライチェーンにおける理解と関心の高さを示す結果となりました。
EMRT調査結果(2023年度)
鉱物 | 登録施設 | コンフォーマント認証 | 未認証 | コンフォーマント率 |
---|---|---|---|---|
コバルト | 99 | 47 | 52 | 47.47% |
天然マイカ | 30 | 3 | 27 | 10.00% |
調査の結果、リスクがあると特定された製錬所/精製所はありませんでした。その一方で、RMAPによって認証されたコンフォーマント製錬所/精製所の比率は、3TG(タンタル、錫、タングステン、金)においてこの数年低下しており、比例して、京セラでのリスクがないと認証されている製錬所の使用比率も低下傾向にあります。今後も、お取引先様にも製錬所リストの見直しをお願いし、JEITAの責任ある鉱物調達検討会の活動を通じて、監査を受審するよう製錬所/精製所に働きかけを行っていきます。また、これらの活動をより定量化して報告できるよう、以下のようなKPIを定めて管理しています。
認証されたコンフォーマント製錬所/精製所比率

KPI | 目標数値・達成年度 | 2023年度実績 |
---|---|---|
Conflict-affected and high-risk areas(CAHRAs)※との関連を精査し、リスクがないと認証されている製錬所/精製所の使用比率 | 目標数値:80% 達成目標年度:2025年度 |
64.3% |
紛争または人権侵害等のリスクが高い地域のことであり、OECDデューデリジェンスガイダンスで定義されている。
京セラサプライチェーン人権デューデリジェンスの取り組み
京セラグループは、京セラグループ人権方針において、人権デューデリジェンスを実施しています。京セラグループ人権方針を遵守するため、国連「ビジネスと人権に関する指導原則」に則った「サプライチェーンに対する人権デューデリジェンスの枠組み」を構築し、運用を開始しました。
外国人労働者の権利に関する影響評価(ステークホルダーとの対話)
昨今、日本における外国人労働者の受け入れに関して、最低賃金法違反や強制帰国等の深刻な人権侵害が発生していることが問題となっています。これを受けて、京セラグループにおいても特に影響を受けやすいライツホルダーと考えられる「外国人労働者」に対して、顕著な人権課題に関する調査を実施しました。
Ⅰ. アンケート調査
京セラグループ会社5社、京セラの国内サプライヤー※413社に対してアンケート調査を実施しました。
国内サプライヤー:「資材サプライヤー」、人材サプライヤー・構内請負会社等の「その他サプライヤー」、「協力会社」
【調査結果】
国内グループ会社
国内グループ会社の回答率は100%(5社)でした。グループ会社のうち外国人労働者を雇用しているのが60%(3社)、技能実習生の雇用は確認されませんでした。
調査社数 | 回答社数 | 外国人労働者雇用社数 | 技能実習生雇用社数 |
---|---|---|---|
5社 | 5社(100%) | 3社(60%) | 0社(0%) |
外国人労働者を雇用している3社の回答内容からは顕在化した人権課題は検知されませんでした。
一方で、「安全教育が十分に実施できていない可能性がある」、「宗教上の配慮が必要な労働者の把握が不十分な可能性がある」、といった潜在的な人権課題を特定しました。これらの潜在的な人権課題に対しては速やかに顕在化の可能性についての調査および必要な対応策の実施を行っていきます。
国内サプライヤー
国内サプライヤーの回答率は81%(335社)でした。回答があったサプライヤーのうち、外国人労働者を雇用している国内サプライヤーは59%(197社)でした。
調査社数 | 回答社数 | 外国人労働者雇用社数 | 技能実習生雇用社数 |
---|---|---|---|
413社 | 335社(81%) | 197社(59%) | 65社(19%) |
外国人労働者を雇用している197社の回答内容からは顕在化した人権課題は検知されませんでした。
一方で、「連続勤務を含む長時間労働の可能性がある」「避難訓練や安全教育が不十分な可能性がある」といった潜在的な人権課題を特定しました。加えて、技能実習生を雇用しているサプライヤーでは「送り出し機関と監理団体との契約内容や送り出し機関の募集要項を把握していない」など、在留資格による固有の人権課題についても特定しました。
顕在化した人権課題は検知されなかったものの、潜在的な人権課題については、継続的なヒアリングや面談を通じて、サプライヤーとともにリスクの特定と対応方法を協議していきます。
Ⅱ 訪問調査の実施
Iのアンケート調査において検知された国内サプライヤーに関する懸念事項全般の実態を把握するため、技能実習生をはじめとする外国人労働者を雇用しているサプライヤー(資材サプライヤー4社、構内請負会社1社)に対してサステナビリティに関する外部専門機関と共に訪問調査を実施しました。
調査手法
以下の3つの手順により、人権課題の特定を行いました。
- 記録・文書の確認
サプライヤーのご担当者同席の下、サプライヤーが管理する記録・文書を確認。 - 外国人労働者へのインタビュー
直接影響を受けるライツホルダーである外国人労働者に対して20分程度の個人インタビューを実施し、業務内容、労働時間、賃金、住環境、安全衛生、差別・ハラスメントなどの実態を確認。
インタビューは調査対象となる5社で合計12名(フィリピン4名、ベトナム4名、ミャンマー4名)の外国人労働者に実施しました。 - 管理者へのインタビュー
アンケート調査の回答に対する詳細及び外国人労働者インタビューの内容に対する管理実態などを確認。
調査結果
- 外国人労働者へのヒアリングから、労働者と管理者は適切なコミュニケーションが取れており、実習内容だけでなく、日本での生活についても悩み事や困りごとがあれば相談できる体制が取れていることが確認できました。また、技能実習生を雇用している場合には監理団体が間に入ることで、労働者の母国語で相談を受け付ける環境も整っている事が分かりました。
- 一方で、言語対応に不十分な点がある事、寮における避難訓練が実施されていない、室内に貴重品を管理するための設備が整っていないなど、複数の課題を発見しています。
- その他、以下の項目について確認を行いましたが、該当する人権課題は発見されませんでした。
①児童労働が行われていないこと
②労働者に対して、"定期的に"、"満額"、かつ"期日通り"に賃金を払っていること
③労働者から身分証明書を取り上げること、移動の自由が制限されていないこと
④労働者に対して結社の自由および団体交渉の権利を制限していないこと
⑤健康と安全に関する影響を受けた労働者が存在しないこと
⑥差別や不当な労働条件を強いられている女性労働者が存在しないこと
⑦過剰な長時間労働を行っている労働者が存在しないこと
是正措置および今後に向けての取り組み
- これらの特定した課題に対しては、是正の必要性について説明を行うと共に、人権への負の影響の解消・防止・軽減へのアクションとして、訪問調査後、サプライヤーに発見された人権課題の改善提案を行いました。
- 貴重品を保管するための金庫を室内に設置した、寮が一般の賃貸物件の為訓練の実施は難しいが、災害が発生した場合の緊急避難先について地図をつけて周知を行ったなど、複数のサプライヤーより是正を行った事を報告いただいております。
- また、サプライヤーの管理者からも、今回の訪問調査でフィードバックされた点については自分たちではそれが課題だとは気づいていなかった。寮生の避難場所を周知したが、これまでは外国人労働者が寮で地震などの災害に遭遇した場合、どうして良いか分からず危険物も取り扱っている工場に来てしまうリスクもあった事に気づいたといったコメントをいただいており、本取り組みが前向きな是正取り組みに繋がったと考えております。
- 一方で、これらに関する内容は「サプライチェーン行動規範」で周知していましたが、サプライヤーの製造拠点まで浸透できていないことも分かりました。
- 今回の調査結果を受け、訪問調査及びサプライヤー労働者へのインタビューを通じて「サプライチェーン行動規範」の遵守状況を今後も定期的に確認していきます。十分に理解頂けていないお取引様には理解頂けるよう、対話の場を設けます。
JEITAへの参加
京セラではサプライチェーン全体での活動強化を目的に、JEITAのCSR委員会に参加しています。関連するお取引先様や従業員等のステークホルダーの皆様には、JEITAが実施する各種の説明会への参加を奨励し、ESGトレーニングの機会として活用していただいています。このような機会による効果は、毎回の「サプライヤー調査」や「責任ある鉱物調達調査」によって改めて実態を調査・評価することで、定量的に検証しています。
RBAへの加盟
2022年に京セラはResponsible Business Allianceに加盟しました。RBAは、グローバルサプライチェーンの影響を受ける労働者やコミュニティーの権利や福利を支援することを目的に、エレクトロニクスや小売、自動車、玩具などの関連企業により構成されている非営利企業連盟です。京セラは、グローバルビジネスを展開する企業として、RBAが掲げるビジョンとミッションを全面的に支持し、より持続可能なサプライチェーン構築に向けた改善努力を図っていきます。
京セラコンプライアンスホットラインの設置
京セラグループでは、コーポレートガバナンスの向上、法令・コンプライアンス上の問題の早期発見および未然防止を目的に、コンプライアンスホットラインを設置しています。
京セラグループ各社の役員・従業員の各種行為が、「法令・規則」、「京セラグループCSR指針」、「京セラグループ人権方針」、「京セラ株式会社 労働関連行動規範」などに反すると認識された場合は、京セラコンプライアンスホットラインよりお問合せください。