THE NEW VALUE FRONTIER

人権への取り組み

京セラグループでは、各国の法令遵守はもとより、国連の「世界人権宣言」や国際労働機関(ILO)の「基本的人権規約」等の国際基準に則った取り組みを実施しており、人権・労働・環境・腐敗防止についての10原則を定めた国連グローバル・コンパクトの趣旨に賛同し参加しています。また、「京セラグループ人権方針」を制定し、人権尊重の取り組みに努めています。さらに労働組合や職場会などを通じて従業員との意見交換や情報の共有化をはかり、働きがいのある魅力的な職場環境づくりを推進しています。

人権方針

京セラグループは国連「ビジネスと人権に関する指導原則」に則り、企業活動による人権侵害を回避し、また人権に負の影響が生じた場合には是正に向けて適切に対処することによって、人権尊重の責任を果たしていきます。また、「経営理念」を実現するための判断基準「京セラフィロソフィ」にもとづく従業員の行動規範の一つとして、「京セラグループ人権方針」を定めています。
2024年8月には、企業にとっての重要課題である「人権尊重の取り組み」を、強いトップコミットメントを持って推し進めていく姿勢を示すため、取締役会での審議・承認を得て、これまでの取り組みを反映させた形で改定を行い、京セラ株式会社 代表取締役社長が署名しています。

京セラグループ人権方針

京セラグループは、「全従業員の物心両面の幸福を追求すると同時に、人類、社会の進歩発展に貢献すること」を経営理念に掲げ、経営の根幹をなす企業哲学である「京セラフィロソフィ」※1をベースとして、持続可能な社会の創造に向けて企業活動を行っています。我々は企業活動を通じて、地球環境や人々の生活に様々な影響を与えていますが、バリューチェーン全体に関わる全ての人の人権を尊重することは、企業がなすべき最重要の責務であると考えています。社員一人ひとりが京セラフィロソフィに基づき、「人間として何が正しいか」という事を判断基準として行動することで、全ての人の人権が尊重される社会に向けた進歩発展に貢献していきます。

※1「京セラフィロソフィ」とは「人間として何が正しいのか」を判断基準とした京セラグループの経営哲学です。

本方針の位置づけ

「京セラグループ人権方針」(以下、本方針)は、「経営理念」を実現するための判断基準「京セラフィロソフィ」に基づく従業員の行動規範の一つであり、取締役会で審議、承認を得て、京セラ株式会社代表取締役社長が署名します。なお、本方針の「京セラグループ」は、京セラ株式会社と京セラグループ会社を指し、「従業員」には、京セラグループで働くすべての役員・正社員および有期・短時間雇用者、嘱託、契約社員および派遣社員が含まれます。また、「ビジネスパートナー」には、資材サプライヤー、人材派遣会社、構内請負会社等が含まれます。
本方針の作成、改訂に当たっては社外の有識者からも専門的助言を得ています。

本方針の適用範囲

本方針は、京セラグループの全従業員に適用します。また、サプライヤーを含むすべてのビジネスパートナーに対しても、本方針の理解と遵守を求めます。

人権に対する基本的な考え方

京セラグループは国連「ビジネスと人権に関する指導原則」に則り、企業活動による人権侵害を回避し、また人権に負の影響が生じた場合には是正に向けて適切に対処することによって、人権尊重の責任を果たしていきます。「国際人権章典」と「労働における基本的原則及び権利に関するILO宣言」※2に明記された人権を尊重するとともに、「子どもの権利とビジネス原則」に基づいて、子どもの権利を尊重します。また、「OECD責任ある企業行動に関する多国籍企業行動指針」を含む国際規範を支持し、「国連グローバル・コンパクトの10原則」に署名しています。
企業活動を行う国や地域の適用法令を遵守します。ただし、国内法と国際的に認められた人権の原則が異なる場合は、より高い基準に従い、国際的に認められた人権を最大限尊重する方法を追求します。平和的な方法により人権尊重を推進する人権擁護者に対する脅威、脅迫、攻撃を容認せず、またそれに加担しません。

※2 中核的労働基準である「強制労働の禁止」「児童労働の禁止」「雇用及び職業における差別の撤廃」「結社の自由・団体交渉権の承認」「職業上の安全と健康」を含みます。

人権デューディリジェンス

京セラグループは、人権デューディリジェンスを実施し、バリューチェーン上で生じる可能性のある人権への負の影響の特定、防止、軽減に取り組みます。人権デューディリジェンスでは、影響を受けるライツホルダーを含む社内外の意見を積極的に取り入れます。また、バリューチェーン上で人権への負の影響が生じている、あるいはその可能性があると判断した場合には、積極的な対話を通して適切に対応します。

救済措置

京セラグループが人権への負の影響を引き起こしているまたは助長していることが明らかになった場合、あらゆる手段を検討し、是正に取り組みます。また、取引関係を通じて人権への負の影響と結びつくことが明らかになった場合は、ビジネスパートナーとの対話を重ねながら、救済に向けて協力することに努めます。
京セラグループのバリューチェーン上で負の影響が生じた場合、そのすべての解決にむけて対処しますが、同時にすべて対処することができず取組みに優先順位をつける必要がある場合は、人権への影響を再度評価し、時間の猶予が小さい最も深刻な案件から優先的に対処します。

救済へのアクセス

京セラグループは、すべてのステークホルダーが不利益を恐れずに人権に関する懸念を報告できる通報窓口を設置し、公表しています。受け付けた通報は速やかに調査し、当事者と真摯に向き合い、問題解決に取り組みます。また、取り組みから得られた経験を元に、継続的な改善に努めます。
京セラグループは、これらの報告又は通報は、企業活動の透明性を高め、ステークホルダーとの信頼を強化するものだと考えます。そのため、救済を求めるステークホルダーが司法または非司法的な苦情処理メカニズムを利用することを妨げず、司法または非司法的な苦情処理メカニズムとも前向きに協力します。苦情処理メカニズムを利用する条件として他の司法または非司法的な苦情処理メカニズムを通じて申し立てる法的権利の放棄を要求することや、人権に関する懸念について秘密保持条項を要求することもありません。また、京セラグループは誠実に懸念を表明し、又は調査に協力した人に対する報復を容認せず、各国の法令に則り通報者の保護を行います。

周知浸透・教育

京セラグループは本方針の内容は、社内方針や手続きに反映させ、その実現に取り組みます。また、従業員への人権教育を通じて、ビジネスパートナーへは「ガイドライン」を定め遵守いただく事で本方針の理解浸透に取り組みます。

モニタリングと情報開示

京セラグループは、国際的に認められた人権が時代や社会環境により変化することを理解し、継続的な人権デューディリジェンスを実施します。また、是正や軽減、防止への対応をモニタリングするとともに、人権尊重のための取り組みの実効性を評価します。その取り組みの進捗は適時適切に開示します。情報開示にあたっては、影響を受けたライツホルダーが不利益を被らないように留意します。

作成:2020年11月2日
改定:2024年8月1日

京セラ株式会社 代表取締役社長
谷本 秀夫

(別紙)推進体制

人権デューディリジェンスの体制

京セラグループは、人権に関するリスクをコーポレートリスクとして位置付けており、人権デューディリジェンスの結果は、京セラ株式会社代表取締役社長を委員長とするリスクマネジメント委員会において承認されます。人権を含むリスクマネジメント委員会で議論された内容は、取締役会に適宜報告され、監督を受けています。人権デューディリジェンスは京セラ株式会社総務人事本部が事務局となり、サプライチェーン管理を含む関係部門と協働し、社内外の専門的助言を取り入れながら実施します。人権デューディリジェンスの実効性は、人権への影響を受けるライツホルダーからの意見をアンケートやインタビュー等で取り入れたうえで評価します。人権への負の影響の防止や軽減措置、または是正措置については、関係する部門が責任をもって実行し、その進捗をモニタリングします。

救済プロセス

京セラグループは、社内外のステークホルダーが不利益を恐れず人権についての懸念を通報できる複数の通報窓口を設置し、公表することで、救済へのアクセスを提供しています。通報窓口には、「コンプライアンスホットライン」など京セラグループ内の専任組織が受け付ける窓口のほか、外部の専門組織が受け付ける窓口もあります。いずれも匿名で利用でき、また通報者のプライバシー保護に留意し、通報者や協力者が不利益な扱いを受けることがないように努めています。
受け付けた通報は、京セラ株式会社総務人事本部をはじめ関係する部門が連携して調査し、是正措置を検討します。是正措置が必要だと判断された事案は、当事者や有識者と対話を通じて適切な是正措置を講じるとともに、教訓として再発防止に取り組みます。通報事案に応じて所管部署にて是正措置の決定・執行を行っており、人権に関する是正措置の実行に対しては総務人事本部長が責任を担います。

(別紙)京セラグループが対処すべき人権課題(顕著な人権課題)への対応方針

京セラグループは、バリューチェーンで顕在化した人権への負の影響(以下、「顕在化した人権課題」)や、潜在的な人権への負の影響(以下、「潜在的な人権課題」)について、外部機関の協力のもと所在国や業種によりライツホルダー(「従業員(単体)」、「従業員(国内グループ)」、「従業員(海外グループ)」、「サプライヤー」、「派遣社員」、「請負」、「地域住民」、「消費者」)ごとに評価し、社内記録の確認、関係部門及び影響を受けるライツホルダーとして労働組合へのインタビュー、社外の有識者からの助言を得て分析した、影響の深刻度や発生可能性の大きさから「京セラグループが対処すべき人権課題(顕著な人権課題)」として、以下の13課題を特定しました。
京セラグループが人権への負の影響が引き起こすまたは助長していると判明した場合は速やかに是正し、潜在的な人権課題に対しても防止・軽減措置を図ってまいります。国連「ビジネスと人権に関する指導原則」等に則った人権尊重の取り組みを進めるため、顕著な人権課題についての影響を評価し、予防的措置を含めて適切に対処することが重要だと考えています。特に、顕在化した場合に深刻な影響を与えることが懸念される高リスク地域を中心に、各バリューチェーンにおけるライツホルダーごとの人権影響の実態調査を進めてまいります。なお、「労働者」には、京セラグループの従業員に加えて、ビジネスパートナー(資材サプライヤー、人材派遣会社、構内請負会社等)の社員も含みます。
特定した13の人権課題について、負の影響の最小化に努めるための対応方針を定めました。京セラグループの製品・サービスに関係するサプライヤーを含むすべてのビジネスパートナーに対しても、本対応方針の理解・遵守を求めます。なお、本対応方針に賛同が得られないビジネスパートナーとの取引については、「人権侵害の深刻度」と「取引関係を再考した場合の人権への負の影響」を考慮した上で、適切に対応します。
対処すべき人権課題および対応方針については、定期的な人権デューディリジェンスと、見直しを行います。

13 課題への対応方針

強制労働

  • 労働者が自らの雇用契約の内容を正しく理解できるよう、労働者が理解できる言語により作成された雇用契約書を労働者に提供する。
  • 採用に要した手数料、またはその他の手数料を労働者に請求することを禁じている。そのような手数料を労働者が支払ったことが判明した場合は、当該手数料を労働者に返金する。
  • 社員のパスポートや政府発行の本人確認資料等の原本、やその他の貴重品等を会社は保持しない。
  • すべての労働は自発的で、契約通りに通知を行った場合、労働者は違約金や罰を受けることなく仕事を休んだり、雇用関係を終了したりすることができる。

児童労働・若年労働

  • いかなる製造段階においても児童※1を業務に従事させない。

    ※1 児童:「15歳」または、「義務教育を修了する年齢」または「国の雇用最低年齢」の内、いずれか最も高い年齢に満たない者

  • 18歳未満の労働者(若年労働者)を夜勤や時間外労働を含む、危険な作業等※2の身体に負荷のかかる業務に従事させない。

    ※2 危険な作業の例:高所作業、重量物や有害な材料を扱う作業等

労働安全衛生

  • 労働者が業務に関連して、死亡や深刻な疾病/負傷を被っていない。
  • 業務上の安全や産業衛生(健康を含む)に関するリスクアセスメントを実施する。
  • 労働者に対して適切な保護具を提供する。

社会保障を受ける権利

  • 対象となるすべての労働者に対して、法令で義務づけられている社会保険に加入させる。

適正な賃金

  • 労働者に対して適正な生活水準の維持に必要な賃金(生活賃金)を支払う。
  • 賃金は定期的かつ期日通りに満額を労働者に対して支払う。
  • 時間外労働については、労働者に法定以上の適正な割増賃金を支払う。
  • 業務に関連がある物品の購入費用を労働者に負担させない。

適正な労働時間

  • 労働時間は現地法で定められている限度を超えない。
  • 週の労働時間は緊急時や非常時を除き、時間外労働を含めて60時間を超えない。
  • 7日間に1日以上の休日を与える。
  • すべての時間外労働は同意のもとで行われる。

職場における差別

  • 採用時、雇用後の給与、研修、昇進、解雇等の処遇を決める際の基準や要件の中に、「人種、肌の色、年齢、性別、民族、宗教、所属政党、配偶者の有無、妊娠、性的指向、性同一性と性表現、軍役経験の有無、保護された遺伝情報、病歴・身体障害の有無、所属組合に関する情報、妊娠検査や処女検査の結果」を含めない。

結社の自由・団体交渉権

  • 現地法に従い、労働者の意志により結社の自由・団体交渉の権利を尊重する。法的に結社の自由・団体交渉の権利が制限されている状況や場所においても、適法な代替手段を確立し労働者の権利が尊重される方法を追求する。

外国人労働者の権利

  • 仕事に従事するため移住した外国人労働者に対して、外国人労働者が移住元を離れる前に雇用契約書を渡している。
  • 外国人労働者に提供する重要な書類※3は、理解できる言語で提供している。

    ※3 重要な書類:募集要項、雇用契約書、給与明細、就業規則・規程、安全衛生に関するマニュアル、社内/社外の相談窓口等

社会的な差別・プライバシー侵害

  • AIやIoTの活用によるプライバシーの侵害に助長・加担しない。

ハラスメント

  • ハラスメントに関する相談に対して、事実確認調査を実施し、必要に応じて被害者への配慮措置、加害者への処分等を含む適切な対応を行う。

地域コミュニティへの影響(環境・社会)

  • 工場での騒音、悪臭、振動等による悪影響を地域コミュニティに与えない。
  • 化学物質等の流出による河川、地下水、土壌等の汚染で地域コミュニティに悪影響を与えない。

製品の安全性

  • 製品の使用者に対して、製品設計の不良や使用方法の誤りなどによる悪影響を与えない。

以上

人権マネジメント体制

人権方針の実現に向けて、人事部門や資材部門など複数の部門により構成される「人権ワーキングチーム」を活動推進主体として定期的に戦略策定や活動進捗確認を行っています。ワーキングチームの活動については、代表取締役社長が委員長を務めるリスクマネジメント委員会で報告し、委員会で審議した内容については取締役会で監督を行っています。
また、拠点ごとに人事労務に関する管理組織を設けており、人権侵害を発生させないよう日常的な管理オペレーションについての責任を担っています。サプライチェーンに対しては、本社資材本部が同様の管理を行っています。

  リスクマネジメント委員会
開催頻度
具体的に議論された内容
2022年度 2回(4月、10月)
  • 人権尊重及び人権デューディリジェンス取組に関するプロジェクト体制について
  • 人権デューディリジェンス実施に伴う取り組み計画について
2023年度 2回(4月、10月)
  • 前期の人権デューディリジェンスに関する調査結果について
  • 顕著な人権課題の特定結果及び今後の対応方針について

人権労働に関する取り組み

京セラでは労働分野に関する具体的に従業員が遵守すべき内容について、「労働関連行動規範」として定めています。

人権デューディリジェンスプロセス

京セラグループでは、人権に関するワーキングチームが主体となり、人権デューディリジェンスの取り組みを進めておりますが、2025年度までにグループ全体へ体制を拡大し構築することを目指していきます。また、従業員へ向けた取り組みも充実させ、人権への負の影響に対して防止および軽減を図っていきます。

顕著な人権課題の特定

京セラグループ人権方針に基づき、国連「ビジネスと人権に関する指導原則」を用いて、人権デューディリジェンスの枠組みを構築し、運用しています。2022年より「人権ワーキングチーム」はサステナビリティに関する外部専門機関とともに、人権に対する負の影響を特定し、取り組むべき人権課題の優先順位付けを行いました。

1.調査対象地域

京セラグループおよび京セラグループサプライヤーの所在する地域

2.調査対象範囲

京セラグループの各バリューチェーン及びライツホルダーを以下の通り定義しそれぞれ人権課題を調査しました。

【バリューチェーン】

「資源採掘」、「原材料調達・輸送」、「R&D・製造」、「施工・製品使用・サービス」、「製品廃棄」

【ライツホルダー】

「従業員(単体)」、「従業員(国内グループ)」、「従業員(海外グループ)」、「サプライヤー」、「派遣社員」、「請負」、「地域住民」、「消費者」

3.人権課題特定のためのステップ

【ステップ1】カントリーリスク調査

調査対象国の人権への負の影響の大きさを、①人権侵害の状況(深刻度)、②法執行の担保状況(発生可能性)、③人権関連条約批准状況・国内法整備状況(発生可能性)、④人権侵害の発生頻度・傾向(発生可能性)の観点で評価。文献および記事検索を元に評価を実施した。

【ステップ2】インダストリーリスク調査

京セラグループの会社(生産および非生産)が属する業種を特定し、業種ごとに「発生頻度」および「発生傾向」を考慮して、各調査対象業種の発生可能性が高い人権課題を特定。

【ステップ3】京セラグループにおける人権課題の調査

外部専門機関による、京セラの社内記録の確認、関連部門及び影響を受けるライツホルダーとして労働組合へのインタビュー、社外の有識者からの助言を得て、京セラグループの人権課題の有無及び管理状況の調査を実施。

【ステップ4】

ステップ1〜3で特定された人権課題をリスト化し、ステップ3のインタビューの結果も踏まえ、「深刻度」と「発生可能性」のスコアリングを実施。スコアリング結果をもとにワーキングチーム内で追加すべき人権課題やライツホルダーが無いか等の観点で協議し(3回実施)、京セラグループの人権課題を特定。

4.実施結果

上記のステップに基づき、「深刻度」及び「発生可能性」から15の国と地域を高リスク地域と特定し、以下の13項目について顕著な人権課題として特定しました。

No 顕著な人権課題 ライツホルダー
サプライヤー 自社グループ
従業員(国内)
自社グループ
従業員(海外)
派遣/請負 地域住民
消費者
1 強制労働
2 児童労働・若年労働
3 労働安全衛生
4 社会保障を受ける権利
5 適正な賃金
6 適正な労働時間
7 職場における差別
8 結社の自由・団体交渉権
9 外国人労働者の権利
10 社会的な差別
プライバシー侵害
11 ハラスメント
12 地域コミュニティへの影響
(社会・環境)
13 製品の安全性

顕著な人権課題の影響評価

特定された顕著な人権課題が、ライツホルダーの人権に対してどのような影響を実際に与えているか、また将来的に与える可能性があるかを把握・評価するため、グループ会社、サプライヤー、構内請負計131社に対して、顕著な人権課題についての深堀調査を実施しました。

【特定された人権課題と対応について】

アンケート調査の結果から、人権への負の影響に繋がる可能性のある回答が発見されました。そのような回答があったグループ会社やサプライヤーの担当者に対して、現在実態の確認を行っています。
自社グループ会社において、管理上の問題により、今後人権への負の影響を与える可能性が否定できない場合には速やかに是正措置を行います。特に、深刻な人権課題に繋がる可能性があるアンケート回答については各社へ確認し、実態として負の影響は発生していないこと、もしくは負の影響に繋がる可能性があった対応については是正されていることを確認しています。
同様にサプライヤー、構内請負会社に対しても、実態確認を行った上で、人権への負の影響が顕在化している場合には、関係者との積極的な対話を通して課題解決に取り組んでまいります。

なお、以下の顕著な人権課題に対してはすでに対応策を講じており、本調査においても自社グループ内において深刻な負の影響は発見されませんでした。

  • 児童労働
    児童労働を防止するためには、労働者の年齢確認を徹底することが重要であると考えています。京セラでは「入社時に原則として顔写真付きの公的書類(持っていない場合には代替可能な公的書類)による年齢確認を行っています。また、万が一入社後に児童であることが発覚した場合には、教育を受けられるように保護することを手順として定めています。
  • ハラスメント
    ハラスメントを防止のためには、従業員一人ひとりが何がハラスメントに該当するかを正しく理解し、万が一自身が被害にあった時、もしくは被害にあっている人を見かけた時にどのように対応すべきかという事を認識しておくことが大切だと考えています。
    京セラでは毎年人権ハラスメント教育を実施し、従業員の理解促進と相談窓口の周知を努めています。

今後の取り組みについて(モニタリングについて)

今後も人権デューディリジェンスの取り組みを進めていくうえで、顕著な人権課題については定期的に見直しを行っていきます。また、顕著な人権課題に関する実態を確認するためにアンケート調査を継続して行い、回答状況について経年で評価を行う事で是正状況及び各社の対策が効果的に機能しているかモニタリングを行ってまいります。

RBAへの加盟について

2022年に京セラはResponsible Business Alliance(以下RBA)に加盟しました。これに伴い、労働・倫理の項目において、人権を尊重するための管理体制とマネジメントシステムについてRBAの定めた基準に従って第三者機関によるVAP監査を受審しています。RBA行動規範に従い、京セラでは以下の管理について手順を定めて、管理を実施しています。

  • 児童労働を防止するため、採用時には公的機関の発行した書類(原則として顔写真付き)によって、年齢を確認しています。万が一、児童※1が就労している事が判明した場合は、直ちに採用を取り消し、必要な教育を受けられるよう保護者あるいは行政機関へ連絡し保護することを手順として定めています。

    ※1 児童:「15歳」または、「義務教育を修了する年齢」または「国の雇用最低年齢」の内、いずれか最も高い年齢に満たない

  • 妊娠中の女性に対しては、妊娠に関する本人の申し出により、軽易な作業へ転換するとともに、検診など必要な時間を確保することを定めています。また、時間外労働及び深夜労働にも従事させません。
  • 自社内において、「RBA行動規範」及び「京セラ労働関連行動規範」に反する取扱いが行われていないか、年に1回セルフアセスメントシートによって自主チェックを行い、不適合が発見された場合には是正するための手順を定めています。

救済へのアクセス

社員相談室(内部通報制度)の設置

京セラグループでは、従業員からのさまざまな疑問や相談、人権、労働、安全衛生、環境、公正取引などに関する法令や社内規定などに違反する行為もしくは、違反する恐れのある行為について、その従業員が不利益を被る危険を懸念することなく伝えることができる通報制度として、社員相談室を設けています。通報は、電話、郵便e-mailいずれかの方法により複数の言語で受付を行っており、匿名での通報が可能です。相談内容については、関連部門の協力により調査・確認を行い、是正措置や再発防止策を実施しています。京セラでは、2023年度に229件の相談があり、全件について対応を行いました。

コンプライアンスホットラインの設置

京セラグループ各社の役員・従業員の各種行為が、「法令・規則」、「京セラグループCSR指針」、「京セラグループ人権方針」、「京セラ株式会社 労働関連行動規範」などに反すると認識された場合に、従業員だけではなく誰でも利用できる通報窓口としてコンプライアンスホットラインを設置しています。
通報は、郵便又はe-mailいずれかの方法で複数の言語で受付を行っており、匿名での通報が可能です。
この窓口では、従業員だけではなく、サプライヤーの従業員や、地域住民の方々からも人権を含むコンプライアンス上の苦情や懸念を通報することが可能です。

【申し立てへの対応について】

上記相談窓口へ通報をいただいた場合、主管部門へ情報共有を行い、調査を行います。調査結果に対して検証を行い、是正が必要であると判断した場合には是正措置及び再発防止措置を講じます。調査に当たっては通報者が明らかな場合には、まずは通報者に話を聞き、通報者の意向を確認したうえで対応を行い、調査結果についてもフィードバックを行います。
通報者のプライバシーを保護し、不利益な取り扱いとならないよう最大限の配慮を行うと共に、通報者への報復を禁止し、通報者が報復の脅威を感じた場合には、調査を実施している主管部門にて受け付け対応を行います。
これまでに人権に関する負の影響の信頼できる情報に基づいて訴訟を起こしたもしくは起こそうとした者や、その代理人弁護士に対して報復措置を起こしたことはありません。

人権尊重の取り組み

人権教育

京セラでは、人権に関する取り組みの重要性や人権方針について、制度や仕組みを作るだけではなく、従業員が理解することが重要だと考えており、以下の教育を実施しています。また、ハラスメント防止ハンドブックを社内イントラネットで公開するなど、ハラスメント・差別の防止策を推進しています。

【人権ハラスメント教育】

京セラで働く全従業員を対象として、eラーニングを使用した人権尊重の重要性、守るべき人権(ILO中核労働基準に準拠)及びハラスメント防止のための教育を実施しています。また、万が一人権侵害の被害にあった場合、もしくはこうした行為を見かけた場合には、社員相談室などの救済措置へアクセスするように周知しております。(受講率 95.3%)

【管理者教育】

京セラグループでは、人権尊重の取組みを推進するため、京セラ資材本部がグループ会社の資材部門と連携して、資材関連部門の幹部、管理職に対して、企業の人権尊重の取組みに関する教育を継続的に行っています。2023年度の教育活動実施状況は以下の通りです。研修テーマは、強制労働の禁止、児童労働の禁止、雇用及び職業における差別の撤廃、結社の自由・団体交渉権の自由に示される労働における基本的権利を尊重することなど、ILO中核的労働基準を含んでおります。

研修 内容 実施概要
資材幹部研修 企業の人権尊重の取組みについて 対象:京セラ及びグループ会社資材幹部
参加者数:42名
資材管理職向け人権勉強会 企業の人権尊重の取組みについて 対象:京セラグループ会社資材管理職
参加者数:28名
人権担当者向け勉強会 「ビジネスと人権に関する指導原則」
人権尊重の取り組み
対象:京セラグループ会社人権担当部部門管理職
参加者数: 48名
研修資料
研修資料
ハラスメント防止ハンドブック
ハラスメント防止ハンドブック

ステークホルダーエンゲージメント

京セラグループでは重要なステークホルダーである、地域住民との双方向でのコミュニケーションを一層活発化させることを目的として、定期的にサステナビリティ報告会を開催しています。報告会では、工場が立地する地域の住民、サプライヤー、行政、近隣企業など、様々な方をお招きし、人権を含むサステナビリティの取り組みに関する意見交換を行っております。本報告会において、京セラグループ人権方針を含む京セラの人権尊重の取り組みについても説明を行い、理解を求めると共に、いただいた意見を人権尊重の取り組みに反映させていきます。

強制労働の禁止

京セラグループでは、「京セラグループ人権方針」の中で、奴隷や人身売買を含めたすべての強制労働、児童労働を禁止しています。サプライチェーンにおいても、「京セラグループ サプライチェーン行動規範」の遵守を求めています。

結社の自由

京セラでは、従業員同士の信頼関係や心の結びつきを大切にしてきました。会社と従業員の関係においても、一般的に言われる労使協調という考えを超え、考え方の軸を同じとする「労使同軸」を基本としています(正社員組合加入割合:97.5%)。こうした関係を維持・醸成していくためにも、各種行事を通じて一体となった取り組みを行っています。また、欧州、米国、中国など海外においても、各国の労働法に従い、十分な労使協議による適切な労使関係を継続しており、また、今後も会社の持続的な発展に向けて、労使同軸を基調とした労使関係を継続し、職場の問題解決に取り組んでいきます。