THE NEW VALUE FRONTIER

人権への取り組み

京セラグループでは、各国の法令遵守はもとより、国連の「世界人権宣言」や国際労働機関(ILO)の「基本的人権規約」等の国際基準に則った取り組みを実施しており、人権・労働・環境・腐敗防止についての10原則を定めた国連グローバル・コンパクトの趣旨に賛同し参加しています。また、「京セラグループ人権方針」を制定し、人権尊重の取り組みに努めています。さらに労働組合や職場会などを通じて従業員との意見交換や情報の共有化をはかり、働きがいのある魅力的な職場環境づくりを推進しています。

人権方針

京セラグループは国連「ビジネスと人権に関する指導原則」に則り、企業活動による人権侵害を回避し、また人権に負の影響が生じた場合には是正に向けて適切に対処することによって、人権尊重の責任を果たしていきます。また、「経営理念」を実現するための判断基準「京セラフィロソフィ」にもとづく従業員の行動規範の一つとして、「京セラグループ人権方針」を定めています。
2024年8月には、企業にとっての重要課題である「人権尊重の取り組み」を、強いトップコミットメントを持って推し進めていく姿勢を示すため、取締役会での審議・承認を得て、これまでの取り組みを反映させた形で改定を行い、京セラ株式会社 代表取締役社長が署名しています。

京セラグループ人権方針

京セラグループは、「全従業員の物心両面の幸福を追求すると同時に、人類、社会の進歩発展に貢献すること」を経営理念に掲げ、経営の根幹をなす企業哲学である「京セラフィロソフィ」※1をベースとして、持続可能な社会の創造に向けて企業活動を行っています。我々は企業活動を通じて、地球環境や人々の生活に様々な影響を与えていますが、バリューチェーン全体に関わる全ての人の人権を尊重することは、企業がなすべき最重要の責務であると考えています。社員一人ひとりが京セラフィロソフィに基づき、「人間として何が正しいか」という事を判断基準として行動することで、全ての人の人権が尊重される社会に向けた進歩発展に貢献していきます。

※1「京セラフィロソフィ」とは「人間として何が正しいのか」を判断基準とした京セラグループの経営哲学です。

本方針の位置づけ

「京セラグループ人権方針」(以下、本方針)は、「経営理念」を実現するための判断基準「京セラフィロソフィ」に基づく従業員の行動規範の一つであり、取締役会で審議、承認を得て、京セラ株式会社代表取締役社長が署名します。なお、本方針の「京セラグループ」は、京セラ株式会社と京セラグループ会社を指し、「従業員」には、京セラグループで働くすべての役員・正社員および有期・短時間雇用者、嘱託、契約社員および派遣社員が含まれます。また、「ビジネスパートナー」には、資材サプライヤー、人材派遣会社、構内請負会社等が含まれます。
本方針の作成、改訂に当たっては社外の有識者からも専門的助言を得ています。

本方針の適用範囲

本方針は、京セラグループの全従業員に適用します。また、サプライヤーを含むすべてのビジネスパートナーに対しても、本方針の理解と遵守を求めます。

人権に対する基本的な考え方

京セラグループは国連「ビジネスと人権に関する指導原則」に則り、企業活動による人権侵害を回避し、また人権に負の影響が生じた場合には是正に向けて適切に対処することによって、人権尊重の責任を果たしていきます。「国際人権章典」と「労働における基本的原則及び権利に関するILO宣言」※2に明記された人権を尊重するとともに、「子どもの権利とビジネス原則」に基づいて、子どもの権利を尊重します。また、「OECD責任ある企業行動に関する多国籍企業行動指針」を含む国際規範を支持し、「国連グローバル・コンパクトの10原則」に署名しています。
企業活動を行う国や地域の適用法令を遵守します。ただし、国内法と国際的に認められた人権の原則が異なる場合は、より高い基準に従い、国際的に認められた人権を最大限尊重する方法を追求します。平和的な方法により人権尊重を推進する人権擁護者に対する脅威、脅迫、攻撃を容認せず、またそれに加担しません。

※2 中核的労働基準である「強制労働の禁止」「児童労働の禁止」「雇用及び職業における差別の撤廃」「結社の自由・団体交渉権の承認」「職業上の安全と健康」を含みます。

人権デューディリジェンス

京セラグループは、人権デューディリジェンスを実施し、バリューチェーン上で生じる可能性のある人権への負の影響の特定、防止、軽減に取り組みます。人権デューディリジェンスでは、影響を受けるライツホルダーを含む社内外の意見を積極的に取り入れます。また、バリューチェーン上で人権への負の影響が生じている、あるいはその可能性があると判断した場合には、積極的な対話を通して適切に対応します。

救済措置

京セラグループが人権への負の影響を引き起こしているまたは助長していることが明らかになった場合、あらゆる手段を検討し、是正に取り組みます。また、取引関係を通じて人権への負の影響と結びつくことが明らかになった場合は、ビジネスパートナーとの対話を重ねながら、救済に向けて協力することに努めます。
京セラグループのバリューチェーン上で負の影響が生じた場合、そのすべての解決にむけて対処しますが、同時にすべて対処することができず取組みに優先順位をつける必要がある場合は、人権への影響を再度評価し、時間の猶予が小さい最も深刻な案件から優先的に対処します。

救済へのアクセス

京セラグループは、すべてのステークホルダーが不利益を恐れずに人権に関する懸念を報告できる通報窓口を設置し、公表しています。受け付けた通報は速やかに調査し、当事者と真摯に向き合い、問題解決に取り組みます。また、取り組みから得られた経験を元に、継続的な改善に努めます。
京セラグループは、これらの報告又は通報は、企業活動の透明性を高め、ステークホルダーとの信頼を強化するものだと考えます。そのため、救済を求めるステークホルダーが司法または非司法的な苦情処理メカニズムを利用することを妨げず、司法または非司法的な苦情処理メカニズムとも前向きに協力します。苦情処理メカニズムを利用する条件として他の司法または非司法的な苦情処理メカニズムを通じて申し立てる法的権利の放棄を要求することや、人権に関する懸念について秘密保持条項を要求することもありません。また、京セラグループは誠実に懸念を表明し、又は調査に協力した人に対する報復を容認せず、各国の法令に則り通報者の保護を行います。

周知浸透・教育

京セラグループは本方針の内容は、社内方針や手続きに反映させ、その実現に取り組みます。また、従業員への人権教育を通じて、ビジネスパートナーへは「ガイドライン」を定め遵守いただく事で本方針の理解浸透に取り組みます。

モニタリングと情報開示

京セラグループは、国際的に認められた人権が時代や社会環境により変化することを理解し、継続的な人権デューディリジェンスを実施します。また、是正や軽減、防止への対応をモニタリングするとともに、人権尊重のための取り組みの実効性を評価します。その取り組みの進捗は適時適切に開示します。情報開示にあたっては、影響を受けたライツホルダーが不利益を被らないように留意します。

作成:2020年11月2日
改定:2024年8月1日

京セラ株式会社 代表取締役社長
谷本 秀夫

(別紙)推進体制

人権デューディリジェンスの体制

京セラグループは、人権に関するリスクをコーポレートリスクとして位置付けており、人権デューディリジェンスの結果は、京セラ株式会社代表取締役社長を委員長とするリスクマネジメント委員会において承認されます。人権を含むリスクマネジメント委員会で議論された内容は、取締役会に適宜報告され、監督を受けています。人権デューディリジェンスは京セラ株式会社総務人事本部が事務局となり、サプライチェーン管理を含む関係部門と協働し、社内外の専門的助言を取り入れながら実施します。人権デューディリジェンスの実効性は、人権への影響を受けるライツホルダーからの意見をアンケートやインタビュー等で取り入れたうえで評価します。人権への負の影響の防止や軽減措置、または是正措置については、関係する部門が責任をもって実行し、その進捗をモニタリングします。

救済プロセス

京セラグループは、社内外のステークホルダーが不利益を恐れず人権についての懸念を通報できる複数の通報窓口を設置し、公表することで、救済へのアクセスを提供しています。通報窓口には、「コンプライアンスホットライン」など京セラグループ内の専任組織が受け付ける窓口のほか、外部の専門組織が受け付ける窓口もあります。いずれも匿名で利用でき、また通報者のプライバシー保護に留意し、通報者や協力者が不利益な扱いを受けることがないように努めています。
受け付けた通報は、京セラ株式会社総務人事本部をはじめ関係する部門が連携して調査し、是正措置を検討します。是正措置が必要だと判断された事案は、当事者や有識者と対話を通じて適切な是正措置を講じるとともに、教訓として再発防止に取り組みます。通報事案に応じて所管部署にて是正措置の決定・執行を行っており、人権に関する是正措置の実行に対しては総務人事本部長が責任を担います。

(別紙)京セラグループが対処すべき人権課題(顕著な人権課題)への対応方針

京セラグループは、バリューチェーンで顕在化した人権への負の影響(以下、「顕在化した人権課題」)や、潜在的な人権への負の影響(以下、「潜在的な人権課題」)について、外部機関の協力のもと所在国や業種によりライツホルダー(「従業員(単体)」、「従業員(国内グループ)」、「従業員(海外グループ)」、「サプライヤー」、「派遣社員」、「請負」、「地域住民」、「消費者」)ごとに評価し、社内記録の確認、関係部門及び影響を受けるライツホルダーとして労働組合へのインタビュー、社外の有識者からの助言を得て分析した、影響の深刻度や発生可能性の大きさから「京セラグループが対処すべき人権課題(顕著な人権課題)」として、以下の13課題を特定しました。
京セラグループが人権への負の影響が引き起こすまたは助長していると判明した場合は速やかに是正し、潜在的な人権課題に対しても防止・軽減措置を図ってまいります。国連「ビジネスと人権に関する指導原則」等に則った人権尊重の取り組みを進めるため、顕著な人権課題についての影響を評価し、予防的措置を含めて適切に対処することが重要だと考えています。特に、顕在化した場合に深刻な影響を与えることが懸念される高リスク地域を中心に、各バリューチェーンにおけるライツホルダーごとの人権影響の実態調査を進めてまいります。なお、「労働者」には、京セラグループの従業員に加えて、ビジネスパートナー(資材サプライヤー、人材派遣会社、構内請負会社等)の社員も含みます。
特定した13の人権課題について、負の影響の最小化に努めるための対応方針を定めました。京セラグループの製品・サービスに関係するサプライヤーを含むすべてのビジネスパートナーに対しても、本対応方針の理解・遵守を求めます。なお、本対応方針に賛同が得られないビジネスパートナーとの取引については、「人権侵害の深刻度」と「取引関係を再考した場合の人権への負の影響」を考慮した上で、適切に対応します。
対処すべき人権課題および対応方針については、定期的な人権デューディリジェンスと、見直しを行います。

13 課題への対応方針

強制労働

  • 労働者が自らの雇用契約の内容を正しく理解できるよう、労働者が理解できる言語により作成された雇用契約書を労働者に提供する。
  • 採用に要した手数料、またはその他の手数料を労働者に請求することを禁じている。そのような手数料を労働者が支払ったことが判明した場合は、当該手数料を労働者に返金する。
  • 社員のパスポートや政府発行の本人確認資料等の原本、やその他の貴重品等を会社は保持しない。
  • すべての労働は自発的で、契約通りに通知を行った場合、労働者は違約金や罰を受けることなく仕事を休んだり、雇用関係を終了したりすることができる。

児童労働・若年労働

  • いかなる製造段階においても児童※1を業務に従事させない。

    ※1 児童:「15歳」または、「義務教育を修了する年齢」または「国の雇用最低年齢」の内、いずれか最も高い年齢に満たない者

  • 18歳未満の労働者(若年労働者)を夜勤や時間外労働を含む、危険な作業等※2の身体に負荷のかかる業務に従事させない。

    ※2 危険な作業の例:高所作業、重量物や有害な材料を扱う作業等

労働安全衛生

  • 労働者が業務に関連して、死亡や深刻な疾病/負傷を被っていない。
  • 業務上の安全や産業衛生(健康を含む)に関するリスクアセスメントを実施する。
  • 労働者に対して適切な保護具を提供する。

社会保障を受ける権利

  • 対象となるすべての労働者に対して、法令で義務づけられている社会保険に加入させる。

適正な賃金

  • 労働者に対して適正な生活水準の維持に必要な賃金(生活賃金)を支払う。
  • 賃金は定期的かつ期日通りに満額を労働者に対して支払う。
  • 時間外労働については、労働者に法定以上の適正な割増賃金を支払う。
  • 業務に関連がある物品の購入費用を労働者に負担させない。

適正な労働時間

  • 労働時間は現地法で定められている限度を超えない。
  • 週の労働時間は緊急時や非常時を除き、時間外労働を含めて60時間を超えない。
  • 7日間に1日以上の休日を与える。
  • すべての時間外労働は同意のもとで行われる。

職場における差別

  • 採用時、雇用後の給与、研修、昇進、解雇等の処遇を決める際の基準や要件の中に、「人種、肌の色、年齢、性別、民族、宗教、所属政党、配偶者の有無、妊娠、性的指向、性同一性と性表現、軍役経験の有無、保護された遺伝情報、病歴・身体障害の有無、所属組合に関する情報、妊娠検査や処女検査の結果」を含めない。

結社の自由・団体交渉権

  • 現地法に従い、労働者の意志により結社の自由・団体交渉の権利を尊重する。法的に結社の自由・団体交渉の権利が制限されている状況や場所においても、適法な代替手段を確立し労働者の権利が尊重される方法を追求する。

外国人労働者の権利

  • 仕事に従事するため移住した外国人労働者に対して、外国人労働者が移住元を離れる前に雇用契約書を渡している。
  • 外国人労働者に提供する重要な書類※3は、理解できる言語で提供している。

    ※3 重要な書類:募集要項、雇用契約書、給与明細、就業規則・規程、安全衛生に関するマニュアル、社内/社外の相談窓口等

社会的な差別・プライバシー侵害

  • AIやIoTの活用によるプライバシーの侵害に助長・加担しない。

ハラスメント

  • ハラスメントに関する相談に対して、事実確認調査を実施し、必要に応じて被害者への配慮措置、加害者への処分等を含む適切な対応を行う。

地域コミュニティへの影響(環境・社会)

  • 工場での騒音、悪臭、振動等による悪影響を地域コミュニティに与えない。
  • 化学物質等の流出による河川、地下水、土壌等の汚染で地域コミュニティに悪影響を与えない。

製品の安全性

  • 製品の使用者に対して、製品設計の不良や使用方法の誤りなどによる悪影響を与えない。

以上

人権マネジメント体制

京セラグループでは、「リスクマネジメント委員会」を定期的に開催し、リスクマネジメント方針、コーポレートリスク並びにリスクオーナーの決定を行うとともに、対応策の進捗状況のレビューを実施しています。人権に関するリスクは、コーポレートリスクとして選定し、リスクマネジメント委員会で議論を行っています。

人権労働に関する取り組み

京セラでは、従業員の人権・労働に関する意識の向上を目的に、毎年5月を「モラル月間」と定め、職場で遵守すべき事項の朝礼発表や責任者向けの研修を実施しています。さらに、「人権の尊重」「法の遵守」「環境・社会への貢献」「職場での心構え」に関する取り組み姿勢をまとめた「京セラ行動指針」を社内Webで全社員に公開し、内容を周知しています。加えて、労働関連法令、社内規程、組合との労働協約にもとづき、差別行為などの法令違反がないか、賃金の支払いや労働時間などが適切に管理されているかなど、人事部門で自主チェックを行うとともに、監査部門による監査を定期的に実施し、遵守の徹底をはかっています。また、労働分野に関する具体的な内容を、「労働関連行動規範」として定めています。

京セラ株式会社 労働関連行動規範

目的

京セラでは、創業当初より、「全従業員の物心両面の幸福を追求すると同時に、人類、社会の進歩発展に貢献すること」を経営理念に掲げ、「京セラフィロソフィ」をベースに経営を行っており、京セラグループの経営の根幹となっています。「京セラフィロソフィ」の日々の実践により、ステークホルダーとの相互信頼の構築、京セラグループの持続的な発展をはかるとともに、社会の健全な発展に貢献していきます。

そこで、企業行動の規範となるべき「京セラグループCSR指針」を定め、持続可能な社会の創造へ向けて行動していくこととしており、労働分野について、より具体的な内容を「京セラ株式会社 労働関連行動規範」として定めるものです。

適用範囲

この行動規範は、京セラ株式会社、ならびに、すべての役員と従業員に適用します。

労働関連行動規範

京セラ株式会社は労働者の人権を支持し、国際社会から理解されるよう、尊厳と敬意をもって彼らに接することに取り組みます。これは、臨時社員、移民労働者、学生、契約社員、直接雇用者、およびその他の就労形態の労働者を含む、すべての労働者に適用されます。

労働基準は以下のとおりです。

  • 雇用の自由選択
    強制、拘束(債務による拘束を含む)または拘留労働、非自発的または搾取的囚人労働、奴隷または人身売買による労働力を用いてはなりません。これには、労働またはサービスのために脅迫、強制、強要、拉致、または詐欺によって人を移送、隠匿、採用、移動、または受け入れることも含まれます。会社が提供した施設への出入りに不合理な制約を与えたり、施設における労働者の移動の自由に不合理な制約を科したりしてはなりません。雇用プロセスの一環として、労働者が母国を離れる前に、雇用条件の記述を含む母国語での書面による雇用契約書を提供する必要があります。また、現地の適用法を満たし、同等以上の条件を提供するような変更が行われない限り、受け入れ国に到着した時点で雇用契約への代替または変更は許可されないものとします。すべての作業は自発的でなくてはならず、労働者は随時職場を離れる、または雇用を終了する自由があります。雇用者およびエージェントは、政府発行の身分証明書、パスポート、または労働許可書(これらの保持が法律で義務付けている場合を除く)など、従業員の身分証明書または移民申請書を保持したり、またはその他破壊、隠匿、没収したり、もしくは従業員による使用を阻止してはなりません。労働者は、雇用者または代理人の就職斡旋手数料または雇用に関わるその他手数料を支払う必要はないものとします。労働者がこうした手数料を支払ったことが判明した場合は、その手数料は当該労働者に返金されるものとします。
  • 若年労働者
    児童労働は、いかなる製造段階においても使用してはなりません。ここでいう「児童」とは、15歳、または義務教育を修了する年齢、または国の雇用最低年齢の内、いずれか最も高い年齢に満たない者を指します。合法的な職場学習プログラムの使用は、すべての法規制が遵守されている限り、支援されます。18歳未満の労働者(若年労働者)を夜勤や残業を含む、健康や安全が危険にさらされる可能性がある業務に従事させてはなりません。京セラ株式会社は、適用される法規制に従った、学生労働者の記録の適切な維持、教育パートナーの厳格なデュー・ディリジェンス、および学生労働者の権利の保護により、学生労働者の適切な管理を確保するものとします。京セラ株式会社は、適切なサポートとトレーニングをすべての学生労働者に提供するものとします。現地の適用法がない場合、学生労働者、インターン、および見習いの賃金率は、同様または類似の労働を行っている他の新人労働者と少なくとも同じ賃金率でなくてはなりません。強制、拘束(債務による拘束を含む)または拘留労働、非自発的または搾取的囚人労働、奴隷または人身売買による労働力を用いてはなりません。
  • 労働時間
    ビジネス慣行の数々の研究によると、労働者の過労は、生産性の低下、離職の増加、怪我および疾病の増加と明確なつながりがあることがわかっています。労働時間は、現地の適用法で定められている限度を超えてはなりません。さらに、週間労働時間は、緊急時や非常時を除き、残業時間を含めて週60時間を超えてはなりません。従業員に7日間に1日以上の休日を与えなくてはなりません。
  • 賃金および福利厚生
    労働者に支払われる報酬は、最低賃金、残業、および法的に義務付けられている福利厚生に関連する法律を含め、すべての適用される賃金に関する法律に準拠していなければなりません。現地の適用法を遵守して、残業に関して通常の時給より高い賃率で労働者に支払われなければなりません。懲戒処分としての賃金からの控除は、認められないものとします。各支払期間に、労働者へ、実施した業務に対する正確な報酬を確認するための十分な情報を含む、理解可能な給与明細書を適切な時期に提供するものとします。臨時、派遣、および外部委託の労働者の使用はすべて、現地法の制限を受けます。
  • 人道的待遇
    労働者に対するセクシャルハラスメント、性的虐待、体罰、精神的もしくは肉体的な抑圧、または言葉による虐待などの不快で、非人道的な待遇があってはならず、またかかる待遇の恐れがあってはなりません。これらの要件に対応した懲戒方針および手続きが明確に定義され、労働者に伝えられなければなりません。
  • 差別の排除
    京セラ株式会社は、ハラスメントおよび非合法な差別のない職場づくりに尽力する必要があります。京セラ株式会社は、賃金、昇進、報酬、およびトレーニングの利用などの雇用実務において、人種、肌の色、年齢、性別、性的指向、性同一性と性表現、民族または国籍、障害の有無、妊娠、宗教、所属政党、組合員であるかどうか、軍役経験の有無、保護された遺伝情報、または結婚歴に基づく差別を行ってはなりません。労働者が宗教上の慣習を行えるよう、適度な範囲で便宜を図るものとします。なお、宗教上の慣習に関する労働者からの要望は、総務・労務部門で受け付け、対応について検討の上、実施することとします。さらに、労働者または雇用見込みの労働者に、差別的に使用される可能性がある医療検査または身体検査を受けさせてはなりません。
  • 結社の自由
    現地法に従い、京セラ株式会社は、団体交渉を行い、また平和的集会に参加するために、労働組合に加入するすべての労働者の権利を尊重するものとします。労働者および/または彼らの代表者は、差別、報復、脅迫、またはハラスメントを恐れることなく、労働条件および経営慣行に関する意見および懸念について、経営陣と率直に意思疎通を図り、共有できるものとします。

人権デュー・ディリジェンスプロセス

京セラグループでは、人権リスク低減に向けた取り組みを進めるため、2025年度までにグループ全体での人権デュー・ディリジェンスの実施体制の構築を目指していきます。また、従業員へ向けた取り組みも充実させ、人権リスク防止および軽減を図っていきます。

顕著な人権課題の調査

京セラグループ人権方針において、「人権デュー・ディリジェンスの実施」を宣言しています。人権方針を遵守するため、国連「ビジネスと人権に関する指導原則」を用いて、人権デュー・ディリジェンスの枠組みを構築し、運用しています。2022年にはサステナビリティに関する外部専門機関とともに、人権デュー・ディリジェンスを推進するためのワーキンググループを立ち上げ、人権に対する負の影響を特定し、取り組むべき人権課題の優先順位付けを行いました。

1.調査対象地域

京セラグループおよび京セラグループサプライヤーの所在する地域

2.調査対象範囲

京セラグループのバリューチェーン及びライツホルダーを以下の通り定義しそれぞれ人権課題を調査しました。

【バリューチェーン】

「資源採掘」、「原材料調達・輸送」、「R&D・製造」、「施工・製品使用・サービス」、「製品廃棄」

【ライツホルダー】

「従業員(単体)」、「従業員(国内グループ)」、「従業員(海外グループ)」、「サプライヤー」、「派遣社員」、「請負」、「地域住民」、「消費者」

3.人権課題特定のためのステップ

【ステップ1】カントリーリスク調査

調査対象国の人権リスクの大きさを、①人権侵害の状況(深刻度)、②法執行の担保状況(発生可能性)、③人権関連条約批准状況・国内法整備状況(発生可能性)、④人権侵害の発生頻度・傾向(発生可能性)にて文献および記事検索により評価を実施。

【ステップ2】インダストリーリスク調査

京セラグループの会社(生産および非生産)が属する業種を特定し、業種ごとに「発生頻度」および「発生傾向」を考慮して、各調査対象業種の発生可能性が高い人権課題を特定。

【ステップ3】京セラグループにおける人権課題の調査

外部専門機関による、京セラの社内記録の確認及び関連部門へのインタビュー及び過去20年間にわたり京セラグループに関する人権関連の記事検索により、京セラグループの人権課題の有無及び管理状況の調査を実施。

【ステップ4】人権課題の優先順位付け

ステップ1~3で特定された人権課題を「人権課題リスト」に追加し、ステップ3のインタビューの結果から「深刻度」と「発生可能性」についてスコアリングを実施。スコアリングされた「人権課題リスト」をもとにワーキンググループ内で追加すべき人権課題やライツホルダーが無いか、除外すべき(管理出来ている)人権課題は無いかという観点で協議し(3回実施)、京セラグループの人権課題を特定。

4.実施結果

調査の結果より顕著な人権課題の発生可能性について検討を行い、15の国と地域を高リスク地域と特定し、13項目を顕著な人権課題として特定しました。

特定された顕著な人権課題

  • 強制労働
  • 児童労働・若年者労働
  • 労働安全衛生
  • 社会保障を受ける権利
  • 適正な賃金
  • 適正な労働時間
  • 職場における差別
  • 結社の自由・団体交渉権
  • 国内移住労働者・外国人労働者の権利
  • 社会的な差別・プライバシーの権利
  • ハラスメント
  • 地域コミュニティへの影響(環境・社会)
  • 製品の安全性

実態把握調査

外国人労働者に関するアンケート調査

  • 日本国内主要グループ会社、サプライヤー(資材購入、人材、構内請負)、物流サプライヤーに対し、外国人労働者の雇用実態調査を実施しています。

サプライチェーン調査

  • お取引先様に対しサステナビリティ活動への取り組み評価を行っています。評価には人権項目が含まれており、人権尊重への取り組みや人権リスクなどを確認しています。

調査結果

サプライヤーについては、現状で人権に関する指摘事項は見られませんでした。人権カテゴリーのスコアが60%以下のサプライヤーをハイリスクと判定しています。

項目 対象範囲(過去3年分)
京セラの1次サプライヤー 80%(金額ベース)
5.6%(社数ベース)

人権リスクの軽減と救済

人権課題対策

特定された顕著な人権課題については、国連「ビジネスと人権に関する指導原則」に従い、全て顕在化の可否を特定し、顕在化していることが判明した場合には速やかに救済・是正措置の対応を図ります。また、潜在的な人権課題に対しても軽減・防止措置を図ってまいります。そのために、まずは特定された顕著な人権課題に対する評価を実施し、人権課題の実態確認を行うことで、顕在化の有無や潜在的な人権課題の顕在化の予防、防止を図っていくことが必要だと考えています。特に、顕在化した場合に深刻性が高くなると考えられる高リスク地域を中心に、各バリューチェーンにおけるライツホルダーごとに実態確認の実施を計画しています。

強制労働の禁止

京セラグループでは、「京セラグループ人権方針」の中で、奴隷や人身売買を含めたすべての強制労働、児童労働を禁止しています。サプライチェーンにおいても、「京セラグループ サプライチェーンにおける責任ある企業行動ガイドライン」の遵守を求めています。

ハラスメント・差別などの人権侵害の防止

京セラでは、2011年より毎年5月を「モラル月間」とし、全社員を対象にハラスメント・差別の禁止教育を実施するとともに、ハラスメント防止ハンドブックを社内イントラネットで公開するなど、ハラスメント・差別の防止策を推進しています。加えて、責任者を対象に、知識学習や事例検討、ディスカッションを含めた研修を実施し、ハラスメントや差別が起こらない職場環境づくりに努めています。万一、ハラスメントや差別などの人権侵害が発生した場合に備え、匿名でも利用可能な社員相談窓口に加え、2021年度より第三者相談窓口を設置し、プライバシーに配慮した形で、しかるべき対応をとる体制を整えています。

ハラスメント防止に関する2023年度の対応実績

実施内容 軽減計画立案数 軽減対策実施数
ハラスメント研修(全従業員向け研修、責任者向け研修) 2件 2件
研修資料
研修資料
ハラスメント防止ハンドブック
ハラスメント防止ハンドブック

結社の自由

京セラでは、従業員同士の信頼関係や心の結びつきを大切にしてきました。会社と従業員の関係においても、一般的に言われる労使協調という考えを超え、考え方の軸を同じとする「労使同軸」を基本としています(正社員組合加入割合:97.5%)。こうした関係を維持・醸成していくためにも、運動会や夏祭りをはじめ、各種行事で一体となった取り組みを行っています。また、欧州、米国、中国など海外においても、各国の労働法に従い、十分な労使協議による適切な労使関係を継続しており、また、今後も会社の持続的な発展に向けて、労使同軸を基調とした労使関係を継続し、職場の問題解決に取り組んでいきます。