THE NEW VALUE FRONTIER

人権への取り組み

京セラグループでは、各国の法令遵守はもとより、国連の「世界人権宣言」や国際労働機関(ILO)の「基本的人権規約」等の国際基準に則った取り組みを実施しており、人権・労働・環境・腐敗防止についての10原則を定めた国連グローバル・コンパクトの趣旨に賛同し参加しています。また、「京セラグループ人権方針」を制定し、強制労働や児童労働、性別・年齢・思想信条・国籍・身体的特徴などによる差別的行為を禁止しているほか、職場内におけるパワーハラスメントやセクシュアルハラスメントの防止に努めています。さらに労働組合や職場会などを通じて従業員との意見交換や情報の共有化をはかり、働きがいのある魅力的な職場環境づくりを推進しています。

人権方針

京セラグループ人権方針

京セラグループは、「全従業員の物心両面の幸福を追求すると同時に、人類、社会の進歩発展に貢献すること」を経営理念に掲げ、持続可能な社会の創造に向けた企業活動を行っています。経営理念の実現には、バリューチェーン全体での人権尊重の取り組みが重要であり、すべてのステークホルダーの人権が尊重されることが不可欠であると認識しています。

そのため、京セラグループは、「世界人権宣言」、「労働における基本的原則及び権利に関するILO宣言」、国連「ビジネスと人権に関する指導原則」、および「国連グローバル・コンパクトの10原則」を支持し、ここに「京セラグループ人権方針」を定めます。

適用範囲

本方針は、京セラグループのあらゆる事業活動を含んだバリューチェーン全体を適用範囲とし、ビジネスパートナーやサプライヤーに対しても人権の尊重を求めます。

重要と考える人権項目

京セラグループは、以下の人権項目が特に重要であると考え、取り組んでまいります。

  • 強制労働の禁止:
    労働は全て自発的であり、強制、拘束、または拘留労働、非自発的、または搾取的囚人労働、奴隷または人身売買による労働力を用いません。
  • 児童労働の禁止、若年労働者の就労制限:
    15歳以下の児童に労働はさせません。18歳未満の労働者には健康や安全が脅かされる労働には従事させません。
  • 適切な労働条件の確保:
    労働時間は、現地の適用法で定められている限度を超えません。賃金は最低賃金以上を支払い、法律などに定められた福利厚生を提供します。
  • ハラスメントの禁止:
    労働者に対するセクシャルハラスメント、性的虐待、体罰、精神的もしくは肉体的な抑圧、または言葉による虐待など、各種ハラスメントをはじめとする過酷で非人道的な扱いを行いません。
  • 差別の禁止:
    人種、肌の色、年齢、性別、性的指向、性同一性と性表現、民族または国籍、障がいの有無、妊娠、宗教、所属政党、組合員、軍役経験の有無、遺伝情報、結婚歴や法令で定めるものなど、不当な差別的処遇は行いません。また、差別的に使用される医療検査、身体検査を行いません。
  • 結社の自由と団体交渉権の尊重:
    各国の法令や労働慣行を踏まえ、自由に結社する権利を尊重し、活動を行う労働者の権利も尊重します。

人権デュー・ディリジェンスの実施

  • 本方針を実現するため、経営層による監督責任の下、人権尊重の取り組みを進めます。
  • 人権方針を遵守するため、国連「ビジネスと人権に関する指導原則」を用いて、人権デュー・ディリジェンスの枠組みを構築し、運用します。
  • 人権に対する負の影響を特定・評価し、特定された負の影響について、原因の排除、軽減、救済または加担を回避します。
  • 人権への負の影響が顕在化した場合、適切な手続きを通じて、救済・是正に取り組みます。
  • 本方針に基づく取り組み状況を、継続的に公表します。

2020年11月2日
京セラ株式会社 代表取締役社長
谷本 秀夫

人権マネジメント体制

京セラグループでは、「リスクマネジメント委員会」を定期的に開催し、リスクマネジメント方針、コーポレートリスク並びにリスクオーナーの決定を行うとともに、対応策の進捗状況のレビューを実施しています。人権に関するリスクは、コーポレートリスクとして選定し、リスクマネジメント委員会で議論を行っています。

人権労働に関する取り組み

京セラでは、従業員の人権・労働に関する意識の向上を目的に、毎年5月を「モラル月間」と定め、職場で遵守すべき事項の朝礼発表や責任者向けの研修を実施しています。さらに、「人権の尊重」「法の遵守」「環境・社会への貢献」「職場での心構え」に関する取り組み姿勢をまとめた「京セラ行動指針」を社内Webで全社員に公開し、内容を周知しています。加えて、労働関連法令、社内規程、組合との労働協約にもとづき、差別行為などの法令違反がないか、賃金の支払いや労働時間などが適切に管理されているかなど、人事部門で自主チェックを行うとともに、監査部門による監査を定期的に実施し、遵守の徹底をはかっています。また、労働分野に関する具体的な内容を、「労働関連行動規範」として定めています。

京セラ株式会社 労働関連行動規範

目的

京セラでは、創業当初より、「全従業員の物心両面の幸福を追求すると同時に、人類、社会の進歩発展に貢献すること」を経営理念に掲げ、「京セラフィロソフィ」をベースに経営を行っており、京セラグループの経営の根幹となっています。「京セラフィロソフィ」の日々の実践により、ステークホルダーとの相互信頼の構築、京セラグループの持続的な発展をはかるとともに、社会の健全な発展に貢献していきます。

そこで、企業行動の規範となるべき「京セラグループCSR指針」を定め、持続可能な社会の創造へ向けて行動していくこととしており、労働分野について、より具体的な内容を「京セラ株式会社 労働関連行動規範」として定めるものです。

適用範囲

この行動規範は、京セラ株式会社、ならびに、すべての役員と従業員に適用します。

労働関連行動規範

京セラ株式会社は労働者の人権を支持し、国際社会から理解されるよう、尊厳と敬意をもって彼らに接することに取り組みます。これは、臨時社員、移民労働者、学生、契約社員、直接雇用者、およびその他の就労形態の労働者を含む、すべての労働者に適用されます。

労働基準は以下のとおりです。

  • 雇用の自由選択
    強制、拘束(債務による拘束を含む)または拘留労働、非自発的または搾取的囚人労働、奴隷または人身売買による労働力を用いてはなりません。これには、労働またはサービスのために脅迫、強制、強要、拉致、または詐欺によって人を移送、隠匿、採用、移動、または受け入れることも含まれます。会社が提供した施設への出入りに不合理な制約を与えたり、施設における労働者の移動の自由に不合理な制約を科したりしてはなりません。雇用プロセスの一環として、労働者が母国を離れる前に、雇用条件の記述を含む母国語での書面による雇用契約書を提供する必要があります。また、現地の適用法を満たし、同等以上の条件を提供するような変更が行われない限り、受け入れ国に到着した時点で雇用契約への代替または変更は許可されないものとします。すべての作業は自発的でなくてはならず、労働者は随時職場を離れる、または雇用を終了する自由があります。雇用者およびエージェントは、政府発行の身分証明書、パスポート、または労働許可書(これらの保持が法律で義務付けている場合を除く)など、従業員の身分証明書または移民申請書を保持したり、またはその他破壊、隠匿、没収したり、もしくは従業員による使用を阻止してはなりません。労働者は、雇用者または代理人の就職斡旋手数料または雇用に関わるその他手数料を支払う必要はないものとします。労働者がこうした手数料を支払ったことが判明した場合は、その手数料は当該労働者に返金されるものとします。
  • 若年労働者
    児童労働は、いかなる製造段階においても使用してはなりません。ここでいう「児童」とは、15歳、または義務教育を修了する年齢、または国の雇用最低年齢の内、いずれか最も高い年齢に満たない者を指します。合法的な職場学習プログラムの使用は、すべての法規制が遵守されている限り、支援されます。18歳未満の労働者(若年労働者)を夜勤や残業を含む、健康や安全が危険にさらされる可能性がある業務に従事させてはなりません。京セラ株式会社は、適用される法規制に従った、学生労働者の記録の適切な維持、教育パートナーの厳格なデュー・ディリジェンス、および学生労働者の権利の保護により、学生労働者の適切な管理を確保するものとします。京セラ株式会社は、適切なサポートとトレーニングをすべての学生労働者に提供するものとします。現地の適用法がない場合、学生労働者、インターン、および見習いの賃金率は、同様または類似の労働を行っている他の新人労働者と少なくとも同じ賃金率でなくてはなりません。強制、拘束(債務による拘束を含む)または拘留労働、非自発的または搾取的囚人労働、奴隷または人身売買による労働力を用いてはなりません。
  • 労働時間
    ビジネス慣行の数々の研究によると、労働者の過労は、生産性の低下、離職の増加、怪我および疾病の増加と明確なつながりがあることがわかっています。労働時間は、現地の適用法で定められている限度を超えてはなりません。さらに、週間労働時間は、緊急時や非常時を除き、残業時間を含めて週60時間を超えてはなりません。従業員に7日間に1日以上の休日を与えなくてはなりません。
  • 賃金および福利厚生
    労働者に支払われる報酬は、最低賃金、残業、および法的に義務付けられている福利厚生に関連する法律を含め、すべての適用される賃金に関する法律に準拠していなければなりません。現地の適用法を遵守して、残業に関して通常の時給より高い賃率で労働者に支払われなければなりません。懲戒処分としての賃金からの控除は、認められないものとします。各支払期間に、労働者へ、実施した業務に対する正確な報酬を確認するための十分な情報を含む、理解可能な給与明細書を適切な時期に提供するものとします。臨時、派遣、および外部委託の労働者の使用はすべて、現地法の制限を受けます。
  • 人道的待遇
    労働者に対するセクシャルハラスメント、性的虐待、体罰、精神的もしくは肉体的な抑圧、または言葉による虐待などの不快で、非人道的な待遇があってはならず、またかかる待遇の恐れがあってはなりません。これらの要件に対応した懲戒方針および手続きが明確に定義され、労働者に伝えられなければなりません。
  • 差別の排除
    京セラ株式会社は、ハラスメントおよび非合法な差別のない職場づくりに尽力する必要があります。京セラ株式会社は、賃金、昇進、報酬、およびトレーニングの利用などの雇用実務において、人種、肌の色、年齢、性別、性的指向、性同一性と性表現、民族または国籍、障害の有無、妊娠、宗教、所属政党、組合員であるかどうか、軍役経験の有無、保護された遺伝情報、または結婚歴に基づく差別を行ってはなりません。労働者が宗教上の慣習を行えるよう、適度な範囲で便宜を図るものとします。なお、宗教上の慣習に関する労働者からの要望は、総務・労務部門で受け付け、対応について検討の上、実施することとします。さらに、労働者または雇用見込みの労働者に、差別的に使用される可能性がある医療検査または身体検査を受けさせてはなりません。
  • 結社の自由
    現地法に従い、京セラ株式会社は、団体交渉を行い、また平和的集会に参加するために、労働組合に加入するすべての労働者の権利を尊重するものとします。労働者および/または彼らの代表者は、差別、報復、脅迫、またはハラスメントを恐れることなく、労働条件および経営慣行に関する意見および懸念について、経営陣と率直に意思疎通を図り、共有できるものとします。

人権デュー・ディリジェンスプロセス

京セラグループでは、人権リスク低減に向けた取り組みを進めるため、2025年度までにグループ全体での人権デュー・ディリジェンスの実施体制の構築を目指していきます。また、従業員へ向けた取り組みも充実させ、人権リスク防止および軽減を図っていきます。

顕著な人権課題の調査

京セラグループ人権方針において、「人権デュー・ディリジェンスの実施」を宣言しています。人権方針を遵守するため、国連「ビジネスと人権に関する指導原則」を用いて、人権デュー・ディリジェンスの枠組みを構築し、運用しています。2022年にはサステナビリティに関する外部専門機関とともに、人権デュー・ディリジェンスを推進するためのワーキンググループを立ち上げ、人権に対する負の影響を特定し、取り組むべき人権課題の優先順位付けを行いました。

1.調査対象地域

京セラグループおよび京セラグループサプライヤーの所在する地域

2.調査対象範囲

京セラグループのバリューチェーン及びライツホルダーを以下の通り定義しそれぞれ人権課題を調査しました。

【バリューチェーン】

「資源採掘」、「原材料調達・輸送」、「R&D・製造」、「施工・製品使用・サービス」、「製品廃棄」

【ライツホルダー】

「従業員(単体)」、「従業員(国内グループ)」、「従業員(海外グループ)」、「サプライヤー」、「派遣社員」、「請負」、「地域住民」、「消費者」

3.人権課題特定のためのステップ

【ステップ1】カントリーリスク調査

調査対象国の人権リスクの大きさを、①人権侵害の状況(深刻度)、②法執行の担保状況(発生可能性)、③人権関連条約批准状況・国内法整備状況(発生可能性)、④人権侵害の発生頻度・傾向(発生可能性)にて文献および記事検索により評価を実施。

【ステップ2】インダストリーリスク調査

京セラグループの会社(生産および非生産)が属する業種を特定し、業種ごとに「発生頻度」および「発生傾向」を考慮して、各調査対象業種の発生可能性が高い人権課題を特定。

【ステップ3】京セラグループにおける人権課題の調査

外部専門機関による、京セラの社内記録の確認及び関連部門へのインタビュー及び過去20年間にわたり京セラグループに関する人権関連の記事検索により、京セラグループの人権課題の有無及び管理状況の調査を実施。

【ステップ4】人権課題の優先順位付け

ステップ1~3で特定された人権課題を「人権課題リスト」に追加し、ステップ3のインタビューの結果から「深刻度」と「発生可能性」についてスコアリングを実施。スコアリングされた「人権課題リスト」をもとにワーキンググループ内で追加すべき人権課題やライツホルダーが無いか、除外すべき(管理出来ている)人権課題は無いかという観点で協議し(3回実施)、京セラグループの人権課題を特定。

4.実施結果

調査の結果より顕著な人権課題の発生可能性について検討を行い、15の国と地域を高リスク地域と特定し、13項目を顕著な人権課題として特定しました。

特定された顕著な人権課題

  • 強制労働
  • 児童労働・若年者労働
  • 労働安全衛生
  • 社会保障を受ける権利
  • 適正な賃金
  • 適正な労働時間
  • 職場における差別
  • 結社の自由・団体交渉権
  • 国内移住労働者・外国人労働者の権利
  • 社会的な差別・プライバシーの権利
  • ハラスメント
  • 地域コミュニティへの影響(環境・社会)
  • 製品の安全性

実態把握調査

外国人労働者に関するアンケート調査

  • 日本国内主要グループ会社、サプライヤー(資材購入、人材、構内請負)、物流サプライヤーに対し、外国人労働者の雇用実態調査を実施しています。

サプライチェーン調査

  • お取引先様に対しサステナビリティ活動への取り組み評価を行っています。評価には人権項目が含まれており、人権尊重への取り組みや人権リスクなどを確認しています。

調査結果

サプライヤーについては、現状で人権に関する指摘事項は見られませんでした。人権カテゴリーのスコアが60%以下のサプライヤーをハイリスクと判定しています。

項目 対象範囲(過去3年分)
京セラの1次サプライヤー 80%(金額ベース)
5.6%(社数ベース)

人権リスクの軽減と救済

人権課題対策

特定された顕著な人権課題については、国連「ビジネスと人権に関する指導原則」に従い、全て顕在化の可否を特定し、顕在化していることが判明した場合には速やかに救済・是正措置の対応を図ります。また、潜在的な人権課題に対しても軽減・防止措置を図ってまいります。そのために、まずは特定された顕著な人権課題に対する評価を実施し、人権課題の実態確認を行うことで、顕在化の有無や潜在的な人権課題の顕在化の予防、防止を図っていくことが必要だと考えています。特に、顕在化した場合に深刻性が高くなると考えられる高リスク地域を中心に、各バリューチェーンにおけるライツホルダーごとに実態確認の実施を計画しています。

強制労働の禁止

京セラグループでは、「京セラグループ人権方針」の中で、奴隷や人身売買を含めたすべての強制労働、児童労働を禁止しています。サプライチェーンにおいても、「京セラグループ サプライチェーンにおける責任ある企業行動ガイドライン」の遵守を求めています。

ハラスメント・差別などの人権侵害の防止

京セラでは、2011年より毎年5月を「モラル月間」とし、全社員を対象にハラスメント・差別の禁止教育を実施するとともに、ハラスメント防止ハンドブックを社内イントラネットで公開するなど、ハラスメント・差別の防止策を推進しています。加えて、責任者を対象に、知識学習や事例検討、ディスカッションを含めた研修を実施し、ハラスメントや差別が起こらない職場環境づくりに努めています。万一、ハラスメントや差別などの人権侵害が発生した場合に備え、匿名でも利用可能な社員相談窓口に加え、2021年度より第三者相談窓口を設置し、プライバシーに配慮した形で、しかるべき対応をとる体制を整えています。

ハラスメント防止に関する2022年度の対応実績

実施内容 軽減計画立案数 軽減対策実施数
ハラスメント研修(全従業員向け研修、責任者向け研修) 2件 2件
研修資料
研修資料
ハラスメント防止ハンドブック
ハラスメント防止ハンドブック

結社の自由

京セラでは、従業員同士の信頼関係や心の結びつきを大切にしてきました。会社と従業員の関係においても、一般的に言われる労使協調という考えを超え、考え方の軸を同じとする「労使同軸」を基本としています(組合加入割合:95.3%)。こうした関係を維持・醸成していくためにも、運動会や夏祭りをはじめ、各種行事で一体となった取り組みを行っています。また、欧州、米国、中国など海外においても、各国の労働法に従い、十分な労使協議による適切な労使関係を継続しており、また、今後も会社の持続的な発展に向けて、労使同軸を基調とした労使関係を継続し、職場の問題解決に取り組んでいきます。