


PROJECT STORY 04
最先端技術と新工法で
世界初の小型・高容量
MLCCを開発
OUTLINE
今や日々の生活に欠かせない存在となったスマートフォン。最新の端末1台※には1000個ほどの積層セラミックコンデンサ(MLCC)が搭載されている。 こうしたデジタルデバイスは年々高性能化が進み、必要な電力量も増加。一方で、端末のサイズを維持もしくは小型化するためには搭載できるMLCCの数にも制限があるため、市場ではより小さく、より高容量のMLCCが求められている。 2023年、京セラ国分工場コンデンサ事業部では、最先端の要素技術と新工法開発によりこれまで「できるわけない」と思われていたJIS0603形10μF品の開発に成功。2008年のJIS1005形以来15年ぶりとなる小型・高容量MLCCを世界に先駆けて製品化した。
※2025年3月記事掲載当時
MOVIE
MEMBER PROFILE

岡﨑

永草

妹尾

高橋
※この記事は2025年3月当時の内容です
JIS0603形10μF品の開発に取り組んだ4人の若手エンジニア。
プロジェクトリーダー、品質改善、製品解析、生産技術
託されたミッションとどう向き合い、壁を乗り越えてきたのか。
それぞれの視点を通して紹介する。
ENGINEER'S VOICE.01 - PROJECT LEADER
ワクワクする社会やドキドキする世界
新たな価値の創出に貢献したい
このプロジェクトのミッションを教えてください。
コンデンサの3部門(開発・生産技術・製造)だけでなく、他部門とも連携して世の中にないものを作ることゼロから価値を生み出すことがミッションでした。プロジェクトリーダーとして「最先端製品を世界初でリリースする、不可能を可能にする」という思いをメンバーと共有し、ベクトルを合わせることに注力しました。
プロジェクトの中で困難に感じた部分とブレイクスルーポイントを教えてください。
コンデンサの製造工程は技術要素が多いことに加え、新工法の開発も同時並行で進めていたため、工程の一つひとつで常に課題が発生している状況でした。刻々と迫るサンプル出荷の期限に追われ窮地に立たされていた中、メンバー一人ひとりの技術力と思考力を結集し、乗り越えることができました。
プロジェクトを通して自身の成長を感じた部分は?
若いメンバーが多いため、メンバーのモチベーションを下げないよう、周囲の厳しい声は先頭に立って受ける。課題から逃げないことを心掛けていました。そうして自分たちが作った製品を「世界初」でリリースできたことは技術者冥利(みょうり)に尽きます。また、お客様、営業、他事業部の方との関わりを通して、視野の広がりも実感できました。
プロジェクトを通して京セラの強みを感じた部分は?
お客様と接する中で京セラの部門間の連携をお褒めいただいたことがありました。より良いものを作るために一致団結して知恵を出し合い、若手が失敗したときには部署を越えてフォローしてくれる雰囲気。こうした強い仲間意識や相手を尊重し合える関係こそが京セラの強みだと感じています。
今後チャレンジしたいことや夢を教えてください。
私たちが開発するMLCCが 、受動部品であっても、デバイスを変え、デバイスがシステムを変え、ワクワクする社会やドキドキする世界での新たな価値の創出に貢献できる、と強く感じています。今後も高品質、高特性な最先端の製品開発にチャレンジし、業界をけん引していきたいです。


ENGINEER'S VOICE.02 - MEMBER
「できるわけない」から始まったプロジェクト
課題解決への粘り強さと積極性が成功のカギ
このプロジェクトにおける役割を教えてください。
プロジェクトの基幹となる新工法の開発担当として、製品の品質改善に取り組みました。不良が発生しない条件を探るため、生産技術のエンジニアと連携しながら設備条件や材料組成を少しずつ探り、新工法の立ち上げに携わりました。こうした地道な調整によって、性能の高さだけでなく、粗さがみられた製品外観を既存の量産製品以上に改善できたことが印象に残っています。
プロジェクトの中で困難に感じた部分とブレイクスルーポイントを教えてください。
開発途中で複数の不良が同時に発生した際、パラメーターを調整し尽くしても解決する方法が見つからないときは諦めそうになりました。こうしたとき「個人の力には限界がある」と自覚し、一人で抱え込まないことを心掛けています。今回のプロジェクトでも、この原点に立ち返り、周囲の人にアドバイスを求めました。設備と材料のパラメーター一つひとつを見直し、不良改善の可能性をとことん突き詰めることで複数の不具合を同時に改善することができました。
プロジェクトを通して自身の成長を感じた部分は?
新工法は立ち上げ段階で多くの課題を抱えていたため、一つひとつを解決していく過程は困難であると同時に面白く、モチベーションを高く維持することができました。パラメーターを分析するためには丁寧にデータを取得し、蓄積することが必要です。このプロジェクトで得た知見は今後のエンジニア人生においても、重要な財産になると感じています。
プロジェクトを通して京セラの強みを感じた部分は?
積極的な人材が集まっていることだと思います。このプロジェクト自体「できるわけない」と感じていたほど技術的に難しい開発でしたが、携わった4人が時には周りの人のアドバイスを受けながら、それぞれの課題に粘り強く、積極的に向き合ったからこそ成功させられたのだと思います。
今後チャレンジしたいことや夢を教えてください。
今回のプロジェクトを通して、仕事の進め方から業界最先端品の状況までさまざまなことを学ぶことができました。最先端の技術を用いて最先端の製品開発に携われることが、京セラのコンデンサ事業部で働く醍醐味(だいごみ)です。今回開発した工法を活用して、今後も業界最先端の製品を開発し続けたいと考えています。


ENGINEER'S VOICE.03 - MEMBER
他社に先駆けてのリリースが
モチベーションアップにつながった
このプロジェクトにおける役割を教えてください。
製品解析担当として、試作品の特性測定や、走査電子顕微鏡(SEM)などを用いた構造確認、不良解析に取り組みました。出来栄えをいち早く評価し、結果を各セクションにいち早くフィードバックすることで次の試作に反映させることがミッションでした。
プロジェクトの中で困難に感じた部分とブレイクスルーポイントを教えてください。
今回のプロジェクトの特徴の一つは、新工法による製品開発である点です。既存の工法ではできていた解析が新工法ではうまくいかず、不良解析は困難を極めました。また、不良の原因が工法によるものなのか、それ以外の要因なのかを切り分ける解析手法を一から確立していくことにも時間を要しました。メンバー以外の方からも手法や条件のアドバイスをいただき、粘り強くチャレンジし続けることで最終的には不良の複数の原因を突き止めることができ、、改善につなげることができました。
プロジェクトを通して自身の成長を感じた部分は?
分析装置のセミナーに参加し、最新の解析手法や考え方を学ぶことができたのは自分自身の成長につながったと感じています。コンデンサの小型化、大容量化は日々他社との競争にさらされています。こうした状況の中で、新工法を立ち上げ、他社に先駆けて10μF品をリリースできたことはモチベーションのアップにもつながりました。
プロジェクトを通して京セラの強みを感じた部分は?
新工法の立ち上げは、過去にも挑戦したものの必要な技術の壁にはね返されてきたものでした。今回も同時並行的に問題が発生する状況でしたが、チーム一丸はもちろんのこと、他の事業部の協力もあって開発を成功させることができました。一部署だけでは難しくても他部署の協力によって達成できる、そうした連携や交流が京セラの強みだと思います。
今後チャレンジしたいことや夢を教えてください。
コンデンサ業界の中で、京セラはまだまだ伸びる余地のあるポジションにいます。10μF品で得た達成感を忘れず、今後も多品種で他社に先駆けた開発に取り組み、いつの日かシェア率トップを取れるよう品質向上に努めたいと考えています。


ENGINEER'S VOICE.04
新規プロセスの完全自動化に
大きな達成感と責任感が芽生えた
このプロジェクトにおける役割を教えてください。
製品開発のための新規プロセスの生産性改善を担当しました。例えばタクトタイム※の短縮や、新規設備の増産といった設備に関わる業務です。入社以来、原理検証から手掛けてきた新規プロセスが完全に自動化されることによって、大きな達成感を得るとともに、プロセスに対する責任感も芽生えました。
※タクトタイム:1つの製品や部品を製造するために必要な時間のこと
プロジェクトの中で困難に感じた部分とブレイクスルーポイントを教えてください。
全く新しい工法なので、ゼロから新しい設備を作ったことです。新規プロセスであるため未知の部分が多く、一朝一夕で解決することはできません。一つの課題を解決するとトレードオフで別の箇所で不具合が発生するということの繰り返しでした。他部署のさまざまな分野の方々と議論を重ね、仮説・検証を繰り返すことで一つ一つ解決していきました。
プロジェクトを通して心掛けていたことは?
プロジェクトの中では、生産性向上を目指しつつも、安全性、高品質を守ることを心掛けていました。また、コンデンサの製造プロセスは多岐にわたるため、広い視野を持って総合的に考えることも意識していました。
プロジェクトを通して京セラの強みを感じた部分は?
チャレンジ精神を持った社員が多いこと。機械化は無理だと感じた工程もさまざまな人の知恵を集めることで自動化できました。一人の力ではできないことも、チームで動けばできるようになる。困難な課題に対して、部署を横断した協力体制で解決につなげられることが強みだと感じます。
今後チャレンジしたいことや夢を教えてください。
仕事をする上では、常にチャレンジし続けることを意識しています。新規プロセスの増産、品種拡大に取り組みたいと思います。また、原理検証から自動化まで携わった経験を生かし、さまざまな工程の自動化にも挑戦したいです。


日本企業が世界シェアの上位を占めるコンデンサは、日本の伝統的な“ものづくり”を体現する製品と言える。全世界で急速に発展するエレクトロニクス産業。中でも電気自動車、通信、AIなどの分野でコンデンサの需要は急速に拡大し、その性能と技術の進歩が多くの電子機器の性能を決定する重要な役割を果たしている。
これまでも、スマートフォン向け製品の品質改善や電子機器の小型化に貢献してきた京セラ。製品自体はわずか0.6mm×0.3mmと極小でも、30代の若手エンジニアが開発に成功したインパクトの大きさは計り知れない。